クリーチャーに乗っ取られた生態調査船に、顔のないアンドロイドが送り込まれて事態を収める話。アンドロイドは人の細胞などを複製・培養した素材で作られており、各細胞等の機能としては殆ど人間と変わらない。この世界ではアンドロイドの人権は認められていないが、銀河科学政府を中心に慎重に倫理規定が策定されており、明確な線引きをされた関係が築かれている。はず。
ガブリエル・ビシャスは母親との確執が示唆されているが、細かい設定はない。女性の親と女性の子との間の愛憎密接に絡んだ関係性は、軽々しく男が踏み込めない印象がある、というか知る由がないし、そこがメインテーマではなかったからだ。若き天才ゆえの道具主義的というか、過剰な物質主義的というか、心理的に未熟だが妙に達観しようとするおかしな感じを持たせたつもりである。ガブリエルは、アンドロイドという生体に限りなく近い生まれ方をしたアンドロイドに対して、密かに愛情を注いでいたようである。アンドロイドの覚醒・帰還によってそれが顕在化した。AKMを戦意喪失させて倒すとトゥルーエンドに辿り着けるが、その際に表示される髪を下したガブリエルは、母親という存在になったことを強くイメージして描いたものである。下描き段階では雑誌の被写体のような美しく見える微笑みの表情だったのだが、我が子に対してする表情じゃないな、と思い直し、くだけた笑い顔に変更した。アンドロイドの奇宇宙の起源として重要なキャラクターで、今後も出番があることは間違いない。
アンドロイドは、生まれたときから拙作・寂寥のシーソーのラスボスであるL-Lの魂が入っていた。その記憶は殆ど失われておらず、天上の川を流れる間の記憶の保持は天上の花の根が担っていた。その大部分が目覚めたきっかけはアルデバラン級クリーチャーその2のロヒ・カールメとレダ・エルナハンが繋いだ異世界(零宇宙)との扉をくぐったことである。零宇宙は奇宇宙と偶宇宙の時空間がねじれて一体化したもので、宇宙の部分部分ではお互いを破壊したものの、半分は寂寥のシーソー世界の未来の世界であるため、自らの起源の世界に戻ってきたL-Lは、その刺激とアルダ・メイザースの能力で記憶を取り戻すことになる。その後ルイス・メイザースと出会い、宇宙の外側に赴き、死を受け入れられなかった自分自身を打ち倒す。そこで天上の花を起源とする時空間を切り裂く能力「ターミナルビーチ」を獲得し、元の世界へ戻っていく。人物像としては、戦いを好み、退屈を嫌う。彼のテーマは孤独。孤独を描くのは、自身の経験が大いに役に立っている。そもそも寂寥のシーソー時点でも守護者という別人格の分身を生み出しているあたり、家族を欲していた節がある。
異世界・零宇宙で登場したキャラクターは、殆どが兄原案の別作品に登場するキャラクター・組織名を引用している。彼らは世界的脅威・ワールドモンスターと呼ばれ、神の如き能力で人類を幾度となく滅びから救い、そして利用されてきた存在である。彼らの身柄を取り合うことで戦争が起きるほどの能力であり、人間という等身大の身体を持った彼らにその責任はあまりにも重すぎたのである。
★公開日2026/1/12