第5回座談会・講演会企画
大山修一氏
2025.10.21
大山修一氏
2025.10.21
2025.09.12
9月12日(金)、「アフリカと京都から考える都市文明と農業の持続性に必要なこと」をテーマに、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科の大山修一先生にご講演いただきました。先生は猛暑による死亡リスクの上昇や1970年代から化成肥料を投入してもトウモロコシの収量が増加していないザンビアの現状を受け、有機物循環プロジェクトを開始されました。
有機物の定義は①炭素を含む化合物、②動植物の体や排泄物に由来するバイオマス、③石油や石炭、天然ガスまで含めた広義の有機物とその範疇は様々ですが、有機物循環プロジェクトでは②をメインとしつつ、3つ全てを対象としています。
これまで、ニジェール、ジブチ、ザンビアなどのアフリカ諸国に加えて、京都でプロジェクトを進められてきました。特に、ニジェールでは都市の廃棄物を土壌に散布することによる緑化活動が長年続けられています。西アフリカのニジェールにはインゼルベルク(岩盤が侵食されてできる景観)と呼ばれる地形があり、土壌侵食で木の根が見えるようになったり、草が生えているところも高々2、3センチしか土壌がありません。
先生のプロジェクトでは、6センチの厚さでゴミを撒き、その上に1センチの土をまくシンプルな方法をとります。トウジンビエ(主にアフリカや南アジアで栽培される穀物)から始まる植生は家畜の導入によって、その糞から樹木が育ち、6年目には農業と家畜の放牧が両立できるアグロパストラル(農業と牧畜を組み合わせた生活)が形成されます。
「Cleaning the cities and greening the land(都市を綺麗に、土地を緑に)」と名付けられたこのプロジェクトに使われるゴミは都市由来のため、そこに生える植物は人畜ともに食べることができ、アグロパストラルの存在が牧畜民と農耕民の衝突を無くすという利点も見られました。また、ジブチでは都市の下水汚泥を肥料とすることで、雨のない土地でもナツメヤシの収穫に成功しています。
実は、このような有機ゴミの活用は先進国でも行われており、アメリカでは生ゴミ専用のゴミ箱も見られます。現在の日本では家庭ゴミの80%が焼却されており、燃やすのか燃やさないのかがメジャーな分類基準となっていますが、先生はプロジェクトの一環として京都のホテルから出るゴミをコンポスト化していちじくやいちごの生産者に提供する活動も行っています。ただし、都市ゴミを活用する際の注意点として重金属の蓄積に注意が必要であるため、ゴミのトレーサビリティが重要となります。人類の存在を地球の生態系に埋め戻すことを掲げる先生のご研究の中から、アフリカ・京都の事例を通じて都市と農業の物質循環が重要だと学ぶことができました。