第3回座談会・講演会企画
田口真樹子氏
2025.03.01
田口真樹子氏
2025.03.01
2025.02.11
2月11日(火・祝)、「世界の食料安全保障を担うFAO~その現状と課題~」をテーマに、東京農工大学で修士課程を修了され、国際連合食糧農業機関(FAO)にて植物生産・貿易の農業専門官として穀物生産システムを担当されている田口真樹子様をお招きし、ご講演いただきました。
今年、創設80周年を迎えるFAO(国連食糧農業機関)は、気候変動による農業への影響に対応するため、持続可能な農業の実現に向けた多角的なアプローチを推進しています。特に、植物生産防疫部では、農薬、病害虫対策、エコシステム、遺伝資源と種子、農村開発の5つの分野に重点を置き、地域レベルでの食糧問題の解決を目指しています。
講演では、FAOの農業専門官である田口様より、穀物生産システムの課題について説明していただきました。アフリカにおける稲作は水資源の不足が深刻であり、さらに水田で発生するメタンの抑制も重要な課題となっています。FAOは研究機関ではなく、政策提言や情報発信を主な役割としており、各国の研究機関と協力しながら、より環境に優しい穀物生産技術の確立に「提言や発信の面から」取り組んでいます。また、FAOは民間企業との連携を強化し、政策に現場の声を反映させることを重視しています。
近年では、ロシアとウクライナの戦争が穀物の生産・流通に深刻な影響を及ぼしており、国際情勢が農業に大きな影響を与えています。FAOは中立的な立場を維持しながらも、こうした国際的な問題に対応し、各国の農業政策に活用できるような情報の提供を行っています。FAOの最大の目的は「飢餓をなくす」ことであり、持続可能な農業と食糧安全保障の実現に向け、地域ごとの課題を理解し、多様な関係者と連携しながら包括的な解決策を追求しています。
ご講演後の座談会の時間では、FAOでのキャリアに関する質問が多く寄せられ、国際機関で働く際に求められるスキルや仕事のやりがいについてお話を伺うことができました。現在ローマ本部に勤務されている田口様は、本部勤務では現場との関わりは限定的であるものの、世界中の職員と意見を交わす機会が多く、刺激的な環境であるとおっしゃっていました。また、開発の仕事をする上で「その背景にどのような目的があるのかを常に考えることが重要である」と強調されていました。
今回の講演を通じて、FAOの取り組みに対する理解が深まるとともに、持続可能な農業と食糧安全保障の実現に向けた課題について多くの示唆を得ることができました。参加者の方からも、「FAOの世界での立ち位置や内部の様子を知ることができた」などの感想が寄せられ、非常に有意義な講演となりました。