"I came to the conclusion that selection was the principle of change from the study of domesticated productions; and then, reading Malthus, I saw at once how to apply this principal." — Charles Darwin

少しずつ充実させていきます。伝えたいことは、「遺伝育種学という学問があるんですよ」ということです。案外、知られていないのではないでしょうか?


人類は長い長い時間をかけて、野生集団から経済的に有用な表現型を示す系統(品種)を作り上げてきました。それはきっと思い付きのようなものから始まったことかと思われます。オオカミをイヌへと変えていった過程では、人懐っこい個体に面白半分に餌付けして、その中で、人が食べるものを上手く消化できる個体が残ってイヌの祖先となったんだと思われます。イネだってウシだってブタだってコイだって、状況は似たり寄ったりだったことでしょう。これらの品種は人の手による選択=「人工進化」によって生まれてきたと考えられます。


現代のわれわれは、人類の悠久の歴史の中で生まれてきたこれらの品種に対し、さらに人工進化を加え、生産性をもっと向上させることで食糧問題の解決につなげようとしています。しかし、これまでと同じような方法(優れた表現型を示す個体を選んで交配する)で選抜することで、本当に食糧問題を解決できるのでしょうか?われわれの未来には、これから何百年、何千年もかけて選抜できるほどの時間的猶予があるのでしょうか?もっと状況は差し迫っていると考えるのが、妥当ではないでしょうか。


そこで、迅速な選抜育種法の開発が進められています。農畜産業、養殖業といった分野を問わず、です。具体的にはゲノム情報を利用した選抜育種法です。


ここからさきは時間があるときに。選抜育種は「遺伝育種学(量的遺伝学)」という学問体系のもと高度に近代化され、効率化されています。選抜育種は、勘や経験だけではなく、量的遺伝学的背景にもとづき、計画的に実行しなければほとんどの場合は失敗に終わってしまうようです。




写真提供:木元良太