Hikosaka-Katayama T, Okabe K, Mishima A, Matsuura A, Arimoto K, Shinohara M, Hikosaka A. Zoological Science 41:351-362 (2024)
彦坂 暁, 彦坂-片山 智恵. 植物科学の最前線 (BSJ-Review) 13(A) 31-41 (2022)
無腸類の共生研究に関する日本語のレビューです。2021年に植物学会のシンポジウムで話をさせていただいた縁で執筆させていただきました。当研究室での新しいデータも少し紹介しています。
彦坂 暁, 彦坂-片山 智恵. 比較内分泌学47:44–48 (2021)
生物学の研究者向けに、ナイカイムチョウウズムシを用いた生物学実験について解説しました。
Hikosaka-Katayama T, Watanuki N, Niiho S, Hikosaka A. Zoological Science 37:314–9 (2020)
ナイカイムチョウウズムシが実験動物として広く用いられるためには、安定的に材料の採集ができることが必要です。ナイカイムチョウウズムシは従来、岡山県と広島県のいくつかの海岸で採集できることが知られていましたが、その分布範囲等は不明でした。そこで私たちは水産無脊椎動物研究所から研究助成金をいただき、瀬戸内海沿岸でナイカイムチョウウズムシのフィールド調査を行いました。その結果、本種は瀬戸内海に広く分布することが明らかになりました。(具体的な生息地についてはナイカイムチョウウズムシのページに乗せています。)
各地で採集したナイカイムチョウウズムシを実験に使うにあたって、もしかれらが地域ごとに異なる遺伝的分化を遂げていたとすると、実験を行う際に採集地を意識しないといけないことになります。そこで私たちはその可能性を調べるために、各地で採集した個体について、ミトコンドリアのCOI遺伝子の部分配列を決定し、地域差があるかを調べました。その結果、複数のハプロタイプが存在することが分かり、かつ、それらは特定の地域に限定して分布することなく、いずれも広い範囲に分布していることが明らかになりました。このことは、瀬戸内海各地のナイカイムチョウウズムシの間には十分な遺伝的な交流があることを示しています。つまり、どの生息地で採集した個体も、同じように実験に使えるということになります。
彦坂-片山 智恵, 彦坂 暁. うみうし通信 107:8–9 (2020)
ナイカイムチョウウズムシについて、一般の読者向けに解説しました。
Arimoto A, Hikosaka-Katayama T, Hikosaka A, Tagawa K, Inoue T, Ueki T, Yoshida M, Kanda M, Shoguchi E, Hisata K, Satoh N. GigaScience 8:1919–8 (2019)
OISTのマリンゲノミクスユニット、広島大学向島臨海実験所との共同研究で、ナイカイムチョウウズムシのゲノム解析を行いました。その報告論文です。
Hikosaka A and Konishi S. Zoological Letters 4:17 (2018)
ツメガエルのMITE型トランスポゾンT2ファミリーの中には非常に長い期間にわたって転移活性を維持しているサブファミリーがあります。T2ファミリーは非自律型のトランスポゾンであり、転移活性はゲノム内の他の自律型トランスポゾンの転移酵素を利用していると考えられます。その候補がKolobokというスーパーファミリーに属するトランスポゾンです。この論文はSession et al. (2016)で明らかにされたアフリカツメガエルのサブゲノム構造に基づき、アフリカツメガエルとネッタイツメガエルのゲノムからKolobokの転移酵素を探索し、その分子進化を調べた論文です。多くのKolobokスーパーファミリーに属する転移酵素がツメガエルによって何度も独立に「家畜化」されているらしい事、一方で最近になって増幅/転移したと見られる「元気な」自律型のトランスポゾンもあることを示しました。これらがアフリカツメガエルとネッタイツメガエルという遠く離れた系統で保存されていることから、これらの転移酵素遺伝子はツメガエルに何らかの利益をもたらしているために自然選択によって保存されてきたと考えられます。これらの結果に基づき、スペキュレーションではありますが、Kolobok転移酵素がT2-MITEを転移させ続ける事によってツメガエルに何らかの利益をもたらしてきた可能性を提起しました。初めの着想から形になるまで、結局8年近くかかってしまいましたが、そのおかげで(?)アフリカツメガエルのゲノム情報を利用できたため、より良い形で論文にできたように思います。
Session AM, Uno Y, Kwon T, Hikosaka A, et al. (74名中8番目), Nature 538:336–343 (2016)
アフリカツメガエルのゲノム解析論文です。異種間交雑により全ゲノム重複を起こしたアフリカツメガエルのゲノムについて、トランスポゾンを指標にして各染色体がどちらの祖先に由来したかを判別するという部分を担当しました。詳しくは私たちの研究のページをご覧下さい。
Hikosaka-Katayama T, Hikosaka A. Bulletin of Graduate School of Integrated Arts and Sciences, Hiroshima University I 10:17–23 (2015).
ナイカイムチョウウズムシの飼育方法について、広島大学総合科学研究科の紀要に書きました。日本の研究者、生物愛好者に向けて書いたので日本語で書いています。
Hikosaka A, Uno Y, Matsuda Y. Cytogenetic and Genome Research 145:230-242 (2015)
ツメガエルのMITE型トランスポゾンT2ファミリーの中に非常に長い期間にわたって転移活性を維持しているサブファミリーがあるのはなぜか、という疑問について考える一環として、T2-MITEsの分布を調べた論文です。名古屋大の松田先生の研究室の宇野さんに美しいトランスポゾンのFISHを出してもらい、これをdryの解析結果と合わせて議論しました。T2ファミリーの各サブファミリーが染色体上でかなり異なる分布をしていることがわかりました。また、とくにT2-Cというサブファミリーは遺伝子の上流領域近傍に挿入される傾向が強く、またT2-Cが挿入された遺伝子間に発現パターンの相関が見られることから、T2-Cが遺伝子発現調節のシスエレメントとして働いている可能性を議論しました。(もちろん、実験的な証明が必要ですが。)
Hikosaka-Katayama T, Koike K, Yamashita H, Hikosaka A, Koike K. Zoological Science, 29(9), 559-567 (2012)
無腸動物(Acoelomorpha)Waminoaの共生微細藻類がいかにして次世代に垂直伝搬するのかを調べた論文です。光学および電子顕微鏡観察により、共生藻は卵母細胞の形成の過程でAccessory Follicle Cellという卵母細胞の周囲の細胞から卵母細胞へ移行することを見いだしました。またWaminoaを宿主であるサンゴとともに実験水槽内で長期間飼育しても、WaminoaのSymbiodiniumは宿主のSymbiodiniumとは明確に異なる系統のものが維持されていることを明らかにしました。いろいろと苦労はしましたが、全共著者の力で形にすることができて、感慨深い論文です。
著者の一人、小池先生が撮ったWaminoaの写真がZoological Science誌の表紙を飾りました。また日本動物学会の論文賞(Zoological Science Award 2013)を授賞しました。日本語の解説記事がこちらにあります。
Hikosaka A, Nishimura K, Hikosaka-Katayama T, Kawahara A. Molecular Genetics and Genomics 285: 219-224 (2011)
2010年の論文(下記)ではバイオインフォマティクス解析によってツメガエルのMITE型トランスポゾンT2ファミリーの中に現在もアクティブな「元気で長生き」なサブファミリーがあるらしいということを報告したわけですが、それを実験的にも示してやろうということで行なった仕事です。アクティブであると示唆されたA1、Cサブファミリーと、もう活性を失っていると示唆されたEサブファミリーについて、トランスポゾンの挿入/欠失の種内多型を調べました。その結果、予想どおり、A1、Cサブファミリーでは高い比率で種内多型が見られたのに対し、Eサブファミリーでは多型は確認されませんでした。ドライとウェットの結果をうまく結びつけることができました。
Hikosaka A & Kawahara A. Molecular Genetics and Genomics, 283(1): 49-62 (2010)
ツメガエルゲノムで大量に増幅しているMITE型トランスポゾンであるT2ファミリーの、ゲノム内でのポピュレーションの全貌を明らかにしたいとい考えて行った研究です。ゲノム情報を使ってMITEを検索・分類するための新しいストラテジー(TS clustering法)を考えて、Rubyでプログラミングし、解析しました。ネッタイツメガエルのT2ファミリーを16のメジャーなサブファミリーに分け、そのうちのいくつかは恐らく現在でも転移活性を保持しているだろう、ということを報告しています。これらのMITEsはアフリカツメガエルにも存在するので、両種が分かれた数千万年前からずっとアクティブに動き続けてきた、きわめて「元気で長生き」なトランスポゾンだと考えられます。この論文は僕にとってははじめての純粋なインフォマティクス(実験なし!)の論文で、アクセプトに至るまでだいぶ苦労しました。はじめの構想から数えると、3年か4年くらいたっているのではないでしょうか。(そういえば、はじめはPerlでプログラミングしていたのでした。)でも何度かリジェクトされたおかげで(?)、内容は初期のバージョンよりもだいぶ良くなったと思っています。
Hikosaka-Katayama T, Hikosaka A. Bulletin of Graduate School of Integrated Arts and Sciences, Hiroshima University I 5:39–45 (2010)
彦坂-片山智恵らとの共同研究で無腸動物と微細藻類の共生進化についての研究を開始し、まずは飼育するところから、ということでサンゴ寄生性の無腸動物の一種、Waminoaの飼育方法について検討しました。Waminoaは左右相称(三胚葉性)動物には珍しく、卵を通して藻類を親から子へ伝搬(垂直伝搬)するという非常に興味深い生き物です。この生き物を用いて宿主-共生者の共進化を探って行きたいと考えています。
Ukena K, Iwakoshi-Ukena E, Hikosaka A. Endocrinology 149:5254–5261 (2008)
広大総合科学部の同僚の浮穴先生と同研究室の岩越さんとの共著論文です。私はインフォマティクスの部分を少し担当しました。10年ちょっとぶりにホヤの論文に関われたので、嬉しかったです。
Hikosaka A, Kobayashi T, Saito Y, Kawahara A. Molecular Biology and Evolution 24:2648–2656 (2007)
piggyBacスーパーファミリーに属するツメガエルのトランスポゾンTxpBファミリーの進化に関する論文です。TxpBには3つのサブファミリーがあり、うち2つ(Uribo1、Uribo2サブファミリー)は現在も増幅活性を保持しているが、もう1つ(Kobutaサブファミリー)はホストにとって役立つように「家畜化」されていることを示しました。同僚の斎藤先生には培養細胞を使ってUriboの転写活性を調べる部分をお願いしました。おかげさまで分子進化の分野では比較的良い雑誌に掲載してもらえました。
Hikosaka A, Koga A. Genetics Research 89:201–206 (2007)
メダカには脊椎動物では珍しい活性を保ったDNA型トランスポゾン(Tol)があることが知られています。そのうちのTol1がツメガエルでも転移活性を持つことを示唆した論文です。Tolの発見者である古賀先生に声をかけていただいて、共同研究を行いました。
Hikosaka A, Takaya K, Jinno M, Kawahara A. FEBS Lett 581:3013–3018 (2007)
Hikosaka A, Kawahara A. Journal of Molecular Evolution 59:738–746 (2004)
アフリカツメガエルとネッタイツメガエルにおいて、MITE型トランスポゾンであるXmixからそれぞれ独自に大量の単純反復配列が生じてゲノムに拡散していることを示した論文です。これがゲノム進化を促進する一つの機構ではないかと考えています。
Hikosaka A, Yokouchi E, Kawahara A. Journal of Molecular Evolution 51:554–564 (2000)
大学院生の横内恵利子さんが見つけた、ツメガエルで大量に増幅している単純反復配列Xstirが、小さなDNA型トランスポゾンであるMITEの一種T2ファミリーの末端配列をもち、ツメガエル属のゲノム内で増幅・転移していることを示しました。私がトランスポゾンの研究に踏み込むきっかけになった論文です。もともと横内さんは別のテーマ(カエルの変態)の研究をしていましたが、cDNAクローニングの際にたまたま拾ったクローンがこの反復配列を含んでいて、それをきっかけに研究が始まりました。横内さんがもし別のcDNAを拾っていたら、私の研究履歴はまったく違うものになっていたかもしれません。私の人生における幸運の一つ、と思うことにします :-) 。
Kawahara A, Hikosaka A, Sasado T, Hirota K. Development Genes and Evolution 206:355–362 (1997)
大学院を卒業して広島大学総合科学部の助手に採用されました。学生時代、広大は理学部には知っている先生方や歳の近い大学院生の友人がいましたが、総合科学部にはほとんど縁がありませんでした(総科出身のU君が京大の発生研の後輩にいたくらい)。一度だけ、福岡だったかの学会の時に広大理学部の友人に誘われて、総科の天野實先生(研究室の先代の教授)のラボメンバーに混ぜてもらって飲んだことがありましたが、縁はそれくらい。採用してもらえたのは運が良かった。佐藤さんの推薦状が良かったという話もあとからちょっと聞いたので、もし本当なら感謝しないといけませんね。それはさておき、広大に来てカエルの変態の研究を始めました。変態は動物に広く見られる現象で、とても面白いのですが、数年間とりくんでみたものの、残念ながらあまり顕著な成果を上げることができませんでした。内分泌とか神経とか免疫のような(もしかしたら発生も?)、複雑な系の解析は(頭が単純なので)自分にはあまり向いていないかなと思い始めた頃です。
Kusakabe T, Hikosaka A, Satoh N. Developmental Biology 169:461–472 (1995)
佐藤研で同期の日下部さんとの共著論文。下の論文と同じく、ホヤの幼生筋肉アクチン遺伝子の発現制御を調べています。ホヤのアクチン遺伝子群が面白いゲノム構造(タンデムリピートやインバーテッドリピート)をしていることを日下部さんが見つけて、それを使って発現機構を調べています。一緒に浅虫臨海実験所に行って、僕が日下部さんにインジェクションを教えて、彼が実験をしたのだと記憶しています。
Hikosaka A, Kusakabe T, Satoh N. Developmental Biology 166:763–769 (1994)
私たちが開発したホヤへの遺伝子導入を用いて、筋肉特異的遺伝子発現制御の分子機構を調べた論文です。具体的には筋肉アクチン遺伝子のプロモータ解析になります。上の日下部さんが第一著者になっている論文と一年違いで同じDev. Biol.誌に載りました。大学院時代の研究の集大成となった論文です。
Hikosaka A, Satoh N, Makabe K. Roux's Archives of Developmental Biology203:104–112 (1993)
ホヤでは筋肉が細胞質決定因子(筋肉デターミナント)の働きにより分化することが知られていましたが、その分子的実体は西田さんら(2001)がmacho-1を発見するまで不明でした。この論文はマボヤとユウレイボヤで筋肉分化の分子機構が保存されているかを調べるために、マボヤ筋肉アクチン遺伝子のプロモーターがユウレイボヤでの筋肉特異的遺伝子発現を制御できるかを調べた論文です。進化発生学的な興味を実験によって検証することに(素朴な形ではありますが)取り組んだ試みです。これをRoux's Archivesという伝統ある雑誌に載せてもらえたのも嬉しいことでした。
Hikosaka A, Kusakabe T, Satoh N, Makabe K. Development Growth & Differentiation 34:627–634 (1992)
大学院時代に在籍した佐藤矩行研究室は、ホヤの分子発生生物学の黎明期に先端的な研究を行っていました。私もその中で、分子発生学的実験には欠かせない個体への遺伝子導入の実験系の開発を行なっていました。修士の学生時代にはなかなか結果が出ずに苦労したのですが、ようやくこの論文でホヤで初の遺伝子導入を報告することができました。先輩の真壁さんには分子生物学の実験指導を、同級の日下部さんには筋肉アクチン遺伝子プロモーターの提供をしていただきました。著者にはのっていませんが、研究室OBの西田さんにはホヤへのインジェクションの指導をしていただきました。おかげさまで初の論文でDGDの表紙にも採用してもらえました。