図のように本校の授業は4つの学習から成り立っています。それぞれの授業実践は以下を参照してください。
算数の各単元のおわりや、授業で扱った問題が早く終わったときに、算数の知識・技能を身につけさせるために、反復しました。
国語の書くの単元や、学習の基盤となる児童の書く力やノートをとる力の育成を意図するときに、紙とICTを共存させるために、ノートに書いたものを共有しました。
ルーブリック
本時の課題は「大名行列はなぜ行われるようになったのか」でした。しかし、塾などで事前に学習している児童と初めて学習する児童では、もっている既有知識が異なります。そこで、活用やプロジェクト、探究などで活用しているルーブリックを活用しました。
具体的には、全ての児童に達成してほしいラインを「A:大名行列について調べまとめる【事実】」としました。さらに思考を深めるラインを「S:(Aをクリアした上で)なぜ大名行列が行われるようになったか考える【考察】」としました。この設定には社会の見方・考え方を意識しました。前時までの復習にも丁寧に時間をかけ、ここまでで授業開始から10分が経ってました。
社会科の資料の読み取り
本時では大きく3段階の資料提示と読み取りを行いました。1)導入で大名行列のの絵図からの読み取り、2)教科書の資料及び文章からの読み取り、3)指導者用デジタル教科書による動画及びグラフの読み取りの3段階です。
資料の読み取りでは、教員は時間と資料を明示し、児童は資料を読み取りわかったことをノートにメモしました。
その後、教員が黒板に児童ともに資料から読み取った内容を共有し、既有知識における児童の個人差に配慮しながら、ほとんどの児童がルーブリックでいう全員に達成してほしいラインのAに達するようにしました。ここまでで授業の時間は残り15分ありました。
共有をもとにした話し合い
資料の読み取りと教員主導で資料から読み取った情報の共有と整理をすることで、社会の見方・考え方や資料読み取りの練習をしつつ、児童のベースラインを揃えました。
ここからは児童一人ひとりが情報をもとに考えます。ある程度知識の土台を全員がもっています。塾などで事前に学習している児童も「知っている」ではなく「考えなければ」Sには達成できません。
児童たちは資料から読み取った情報をもとに個人で考え(5分)、互いの考えを共有(5分)します。全員が教科書からある程度の知識を得ているので活発な議論が起こりました。「大名行列はなぜ行われるようになったのか」について真剣に話し合いました。
ルーブリックで振り返り
真剣に話し合い、その結果を共有しました。謀反を起こさないように藩の資金源を減らすといった塾などで塾などで事前に学習した児童からの典型的な正答はもちろん出ましたが、それに加えて「大人数で来ることで藩で謀反の計画を準備する人がいないようにさせる」「大名が今だれなのかを確認する」など資料から読み取れた情報をもとにした考察も出ました。
何より「おさえるべき知識」をおさえた上で、事前の既有知識にかかわらず児童たちは対等に考え、共有することができました。
オクリンクプラスを振り返りには「どうして大名行列を行ったのか友達の意見や考えてみてわかった」といったベースラインが揃って話し合ったからこそわかったという記述がありました。
様々な容器を用意
本単元は特別支援学校小学部学習指導要領の第3段階C「測定」に基づいて設定されています。大切にすることは「身の回りにあるものの量」を測定したり、比較したり、大小関係や相等関係を表現する力を身に付けることです。
特に「身の回りのものの量」を測定するに当たり、児童の身の回りの容器をたくさん用意しました。そして、その容器の容量を計測する目安として赤のシールや1dLごとに目盛に緑のシールを貼りました。児童が主体的に「計測」できるように漏斗やスポイト、計量カップなどを用意して場を設定しました。また、机も水を扱う机とタブレットを操作する机を分けることで、視覚的にも構造化された場を設定することを試みました。
体験から量感を養う
児童はどんどん進んで自分で計測したい「身の回りのもの」としての様々な容器の容量を計量カップを使います。
計量カップの目盛をしっかり見ながら、何回注いだのかマグネットで回数をチェックします。このマグネットの工夫は児童のワーキングメモリーに配慮した特別支援教育らしい指導の工夫です。また、児童の実態に合わせて水にも色をつけた工夫もします。さらに、水をこぼさずに注ぐ作業自体も算数としての学びとは異なりますが、彼ら彼女らにとっては本質的な学びとなります。どのくらいの量なのか、「重さを感じながら」、何回注いだのかを「見ながら」、量感を養っています。
この体験を通して量感を養うこと、そしてそれを一人ひとりに合わせていくことが特別支援学級ならではの指導の工夫になります。
ICTで量感を視覚化
体験で水の量感を育成しています。しかし、算数では多い少ないという大小関係だけではなく、これを数字と結びつけて捉えていくことが求められます。ここで大切なことに「予想をして確かめること」「数字と量を結びつけること」などがあります。そこで、本時ではICTで水を入れた容器の容量を写真として記録したり、その記録したものを数字で残したりすることをしました。
このようにマグネットの位置や水面、水の量と自分の体験を同時に記録することができ、ICTで量感を視覚的に記録することができます。
習得したかをドリルで習得
本時は生活単元学習ではなく、算数としての学びでした。ヒントカードや児童の実態によって水に色が付いていたり、マグネットで計量カップを使った回数を視覚化したり、特別支援教育らしい細やかな工夫がありました。
これらは算数としての学びであり、単元として計測と単位の学習を習得することが目的です。そこで、授業の最後に児童の実態によって、難易度の異なる課題に取り組ませ、習得ができたかどうかを確認しました。その際の問題も視覚的にわかりやすい図を含めた問題から、単位換算の問題などを含めてどの児童もその児童の中での習得ができるように工夫をしました。楽しく経験をしつつ、算数としておさえるべき内容を習得させることを目指した授業実践でした。
課題の確認
児童は教員から単元のはじめに提示された課題を把握しました。そして、その課題を解決するために単元内で計画的に取り組みました。
ポイントは短い時間で児童に課題の把握を促すことです。
体の動きを高める運動
本単元は「体の動きを高める運動であったため,単元の目標を達成するために、教員は課題の把握のさせ方や場の設定を工夫しました。
ポイントは児童の活動の時間を十分に確保することです。
動画を撮影し対話
ICTとして動画を活用して、課題の解決のために、友達と話し合いました。自分や友達の考えを活かして、修正しながら課題解決を目指しました。
ポイントは児童が協働的に教え合う場を設定することです。
学習の振り返りを蓄積
課題解決に対しての自分の取り組みを児童が動画とともに振り返り、次の課題設定や次時への見通し、計画を考えました。そして、この振り返りや動画をICTを活用して学習ログとして蓄積しました。
動画を活用したセルフモニタリングを通して、自分の跳び方をよりよいものにできるように改善しました。
かけ算を活用してチョコレートの数を求めました。複数ある解き方(作戦)をグループで共有してよりよい解き方を追求しました。
データから観点を創る
本単元は国語の「読む」で、教科書の民話『三年とうげ』と各児童の選んだ民話を同時に読み進めていく「並行読書」に取り組みました。
この「並行読書」で大切になることが観点の設定です。国語「読む」の単元では、「読む」の観点を国語科として児童の実態に即して定める必要があります。
そこで、児童の考えを児童の学習データから分類して、「読む」の観点を創りました。このようにすることで、「読む」において児童の実態に即した国語科として適切な観点を設定することができました。
読む箇所も個別最適化に
本単元は、「民話の面白さ」を創り出す文章表現を「読む」単元です。文章に対して「面白い」と思う感情は一人ひとりによって異なります。ここで大切になってくるのは、「面白い」と思った箇所は一人ひとり異なるけれど、「読む」の観点は共通であることです。
つまり、読み方の観点は共通ですが、読む箇所は個別最適化されているということです。読む箇所が児童が自身の興味・関心に合わせて選択することで主体的に学ぶ意欲につながるのではないかと考えています。
創った観点で「読む」
先述したように児童の学習データから創った観点で「読む」ことで学習を進めていきました。ここでは、この観点で学びを進められるように、3分割されたデジタルワークシート(オクリンク)を作成しました。1)どこから引用したのか(引用箇所)、2)どの観点から面白いと思ったか(観点)、3)面白いと思った理由(「読む」の根拠)に3分割されています。
このようなデジタルワークシートで「読む」の学習と「面白さのヒミツ」をつなげることを試みました。
対話から修正・加筆
「読む」を充実させる言語活動として、友達との対話を取り入れました。学習活動としてはデジタルワークシートに記入した内容を、3人1組の班で発表・共有をしました。児童たちは自分たちの学習データから設定された観点の中でたくさんの「面白さのヒミツ」を読み取ることができました。さらに、友達との対話から得られた「読む」の内容をオレンジ色の字で修正・加筆をして再度提出をさせて、この言語活動の変容を見取りました。しかしながら、発表でのアドバイスの観点を「読む」で設定していなかった課題が残りました。今後の授業で改善していこうと思います。
探究+計画+振り返り
本校では、プログラミング教育について研究と実践をして大切なことに気が付きました。プログラミングのための授業はしないこと、各教科等の目標を達成するためにプログラミングを手段として活用すること、プログラミングに限らずICTを各教科等に取り入れるためには、育成する資質・能力をSTEAM教育:Science(科学)・Technology(技術)・Engineering(工学)・Arts(アート,リベラルアーツ)・Mathmatics(数学)の視点で教科横断的に捉え直すことが必要であることです。
さらに、自己調整ができる資質・能力が求められていることや時間には制限があることから、学習の見通しをもって計画を立てる「学習計画」と、学習後に学習計画と照らし合わせて本時がうまくいったかどうかを振り返り次時へ向けて修正する「振り返り」を探究的な学習の過程に加えました。このサイクルを早く回転させて児童が学習することをソフトウェア開発の言葉を借りて「アジャイル学習」と名づけ、実践と研究を続けています。
ルーブリックとマグネット
すでに述べたように、「アジャイル学習」は探究的な学習に学習計画と振り返りの過程を加えたものですが、見通しが立てることが難しい児童には難易度が高いものでした。
そこで、本校の特別支援学級のあおば学級では、ルーブリックと名前マグネットでこのアジャイル学習の課題を克服させ、児童が主体的に自己を調整しながら学習することに試みました。
具体的には、学習の評価規準と評価基準から構成されるルーブリックをはじめに共有し、児童に自分の現在地を名前マグネットで示させました。これによって、一人ひとりのゴールが異なる特別支援教育において、今より少し先のよいところが一人ひとりの児童に対して明文化されて共有することができました。つまり、ルーブリックと名前マグネットが目標の共有と明確化のための道具として機能しました。
アンケートの整理と共有
児童の課題として「課題を自分ごととして捉えることが難しい」「相手の立場に立つことが難しい」「他者の意見を取り入れることが難しい」などがありました。そこで、「お店屋さんをよりよくするためにアンケートをとる活動をすることで、相手の立場に立った課題を選択し、解決しようとする力が身につくのではないか」と考えました。そこで、総合的な学習の時間でアンケートに着目して、アンケートの収集する技能と相手意識をもつこと意図した本小単元を設定しました。
導入として、中学年が店役、高学年が客役ではじめてお店屋さんごっこをした後に教員が作成したアンケートをお店屋さんに来てくれた高学年の児童にとりました。そして、それを教員が中学年の児童とともに整理して児童に提示しました。中学年の児童は作業中にこのアンケートの結果をたびたび見に行き、自分のアンケートを修正しました。つまり、他者の意見を聞くことが苦手な児童にとって,アンケートの結果を介したやり取りによって,これを受け入れ修正しやすくなると考えられました。
フォームの視覚化で支援
教員は中学年の児童Google フォーム作成し終え始めると、作ったGoogle フォームを友達や先生に回答してもらっていました。教員は回答の概要に記載されているグラフを見るように促し、児童はそれを確認していました。その回答結果のグラフを見て、次のお店やさんまでに準備するものを決めていました。例えば、写真の児童は回答数は少ないですが、オレンジ色の回答が100%です。つまり、この児童が次のお店やさんまでに準備するべきものはオレンジ色の品物の準備になります。
このような児童の行動からGoogle フォームの回答結果がグラフとして視覚的に提示されたことで、相手の意見が分かりやすくなり、次に売るものを決めることができたと予想されます。つまり、 Google フォームを媒介とすることで相手意識をもつことができ、そこから次の課題を設定することができたと考えらました。
なぜ「他者意識」なのか
特別支援教育と聞くと、特別な教育のように聞こえるかもしれません。たしかに児童の実態を把握するアセスメントやそれに対 応する個別の指導計画や個別の教育支援計画など専門性は高いです。しかしながら、専門性が高いのは教育の専門家である 教員はみんな同じ。特別支援教育は特に「子どもたちが社会で生きていく上でどのようにしたらよいか」を考えていくというところに着 目しています。
そのため、単元も必要があれば、児童の実態から独自に設定します。例えば、本単元は他者意識の育成と自 立において大切な宿泊学習の学びの共有を目的に設定しました。
今回の研究授業では、前回のあおば中学年の研究授業で提案した「Google フォームの児童による活用」「ルーブリックの 児童による活用で児童の主体的な学びの促進」を踏襲し、それをさらに「児童がつくること」を追加し提案しました。
Googleフォームを媒介に
具体的には、中学年の児童に教員が作成した Google フォームを回答してもらいました。内容はどのようなGoogleスライドがわかりやすいのかです。そして、その回答を高学年の児童に共有しました。
ここでは、ほぼ1 対1になるようにし、共有したのは高学年が担当する児童の回答です。高学年の児童は、この回答から担当する中学年のためのルーブリックを作成してからスラ イドづくりにはいりました。つまり,Google フォームの回答を媒介に中学年の児童と いう相手を意識しようとしていました。しかし,高学年の児童から「これは本人に聞かないとわからない」という声があがりました。
やっぱりインタビュー
他者意識を持ちながら活動することが難しい児童から、「本人に聞きたい!」という声があがったことは意外でした。コミュニケーションをしたいと児童から言ってくれたことは嬉しかったです。そこで、中学年の児童に来てもらい、インタビューをして、さらにルーブリックをより良いものにする授業を行いました。そしてついに本時でアン ケートとインタビューを経て完成したルーブリックをもとに、高学年の児童が中学年 の児童に向けてスライドをつくりはじめました。
インタビューは他者意識なしで行うことは難しいです。しかし、ルーブリックという共通理解を促す媒介があったことで、共通の話題としてルーブリックが機能しました。
もくもく⇔もしもし
スライドづくりとなると、本校ではたくさんの授業が日常的にされています。その中で、4年生の研究授業では,「ワールドカフ ェ」という手法で時間を区切りながら、対話と作成を設定しました。そこで,一部の先生から「まだつくりたい子がいるのでは対話 は自由参加でもいいのでは?」という意見もありました。しかし,今回の研究授業では,意図的に4年生と同様に時間を区切っ て設定することにしました。これは児童の実態として,他者意識がもちにくい場合,他者の意見を取り入れてより良いものにするこ とは難しいからです。さらに,直接アドバイスをされても受け入れることが難しい場合もあります。
そこで本研究授業では,「ルーブリックの達成ができているか」の視点からアドバイスをし合うことにしました。このようにすること で,アドバイスもルーブリックを媒介として伝わるので,他者意識の育成の一歩として機能するのではないかと仮説を立て、取り組みました。
ルーブリックを共有
評価基準と評価規準を合わせたルーブリックを児童と共有して、児童が主体的に目標へ向かうことを促します。理想は児童とルーブリックを作ることですが、低学年では難しいので共有しました。
ポイントは、児童にわかる言葉でルーブリックを作ることです。
2年生が考える
まずは2年生がタブレットのルールや使い方を教えることができるのかテストをしました。同じテストで1年生が満点を取ることができるように、何が正解か共有し2年生がどのように教えるか考えました。
ポイントは、先生が教えることなく、子ども同士の教え合いの場を設定することです。
1年生に教える
2年生が一緒に教え方を考えたグループで、1年生のグループに教えにいきました。教えるときのルールは「1年生のタブレットにはさわらない」「1年生が楽しくタブレットをさわりながら学ぶこと」でした。
ポイントは、先生が教えることなく、子ども同士の教え合いを見守ることです。
3年生になっても
この写真は1年生に教えていた2年生が3年生になった今年度の研究授業のまとめの場面です。「1年生に先生として教えたからには、自分たちがタブレットのルールや使い方を守らないわけにはいかない」としっかりルールを守りながら学習に取り組む姿が見られました。
先生もわからない
本校は2020年度から2022年度まで葛飾区からプログラミング教育推進校に指定され、プログラミング教育を実践・研究してきました。
しかし、研究発表の翌年の2023年度は児童数増加に伴う学級数の増加、研究主任や研究に中核を担っていた教員の異動などでプログラミング教育を実践していた先生たちはいなくなり、6人の新規採用教員を含む10人の教員が赴任しました。
東京都の公立小学校が避けることのできない教員の入れ替わりの波に飲まれていく中で、教員よりも児童の方がプログラミングに詳しいという状況が生まれました。
児童から教えてもらう
2024年度はプログラミングゼミ(以下,プロゼミ)というビジュアルプログラミング教材の基本的な使い方を、プロゼミに詳しい2年生が1年生に教えることで低学年からのプログラミング教育のハードルを下げることを試みました。目標はルーブリックで示し、目標と評価を児童と共有して進めました。
教員も一緒に教材を作成しながらプログラミングについて少しずつ理解をしていきました。教員が集まって悩むこともありました。それでもうまくいかないこともありました。
そこで、本校ではプログラミングに限らずICT全般について、教員が児童から教えてもらう方法で教員と児童の相互関係の中でICTスキルを身に付けてきました。
ミッションシートで支援
そこで、児童が主体的にかつ教え漏れのないように、「ミッションシート」を活用して2年生が主体的に内容をおさえながら1年生に教えることができるように工夫しました。
児童にICTスキルを含む情報活用能力を身に付けさせる難しさを構成する要素の一つに「児童の情報活用能力におけるの個人差」があります。
そこで、今回は「ミッションシート」を作成しました。プログラミングがあまり得意でない児童は「ミッションシート」を参照しながら取り組むことで、自分たちで課題の解決に取り組むことができます。
教員はじっと見守る
2年生が1年生にプロゼミの使い方を教えていきました。しかし、児童が主体的に学ぶこと、教えることをしているので、教員は「教えたい気持ちをこらえて」じっと見守りました。
正直、うまく教えることができている児童とそうでない児童、プロゼミを理解できている1年生とそうでない1年生がいました。これは今後の課題です。しかし、教員が児童と一緒に学んだ経験、1度全員でプログラミング教材に取り組んだ経験はかけがえのないものになりました。
今では一部の児童は休み時間に教員もわからないほど複雑なプログラムを作成する児童もいます。
「気付き」のために
生活科では「気付き」がキーワードです。児童が様々な経験を通して、様々なことに「気付く」ことから生活科の学びは捉えられています。そこで、本単元ではおもちゃづくりを通して、「気付き」のある学びを目指しました。
この経験をする「場」として、次の3つ設定しました。1)資材場・道具場・作業場・試行場を設定、2)同じ種類のおもちゃをつくる児童を同じグループに設定、3)ICTを活用して異なる種類のおもちゃをつくるグループの児童からのアドバイスを蓄積できる場の設定。
「1から増やす」
「経験を通してと聞くと「0から1」を生み出すことを想像する方が多いのではないでしょうか。しかし、知識基盤社会や情報社会と呼ばれる今日、本当に「0から」生み出されたものはほとんど存在しません。今あるもの同士の掛け合わせや今あるものにアイデアを加えるという形で生み出されています。
そこで、本単元では設計図を含めて既存のおもちゃのアイデアを事前に児童に提示しました。この既存のアイデアに児童は試行錯誤して自分のアイデアや友達のアドバイスから付け加えました。つまり、「1から増やす」ことに取り組みました。
理科や社会へ「根拠」
生活科を学んでいる2年生たち。彼らもあと数ヶ月で3年生になります。3年生になると生活科はなくなり、理科や社会、総合的な学習の時間になります。この生活科と各教科や領域との接続にあたり、本校の児童は「根拠をもとに話す」ということに少し弱さがありました。
そこで、おもちゃづくりでは、「△△だから、〇〇する」と、「直したい部分」と「改善方法」をつなげて考えることで、気付きを明文化するとともに、「根拠をもとに話す」練習をすることにしました。3年生になってからの理科や社会などに生きてくれると嬉しいです。
「やった!気付いた!」
最初に教員から提示されたおもちゃを実際につくってみますが、そんな簡単にはうまくいきません。おもちゃはできても、テニスボールがなかなか掴めません。
そこで「気付き」ました。「割り箸の先に『毛糸』を巻き付けたらうまくいくんじゃないかな」。ダメでした。友達のアドバイスの中に「太い『輪ゴム』が滑らない」というアドバイスがありました。「やった!気付いた!」「輪ゴムって滑り止めになるんだ」「じゃあこれは?」
これは一例です。単元の最後には、ペアのクラスで互いに自分たちが作っていないおもちゃで遊び合います。ここでも何かに「気付いて」くれると嬉しいなと思います。
学年・教科横断と単元設定
本単元は2年生の生活科「まちたんけん」と3年生の社会科の「わたしの住むまち」と関連させて単元を設定しました。自分たちが住んでいる地域のことを知り、さらにその魅力を下学年に伝えることを目的とすることで相手意識をもって学習に取り組むことを目指しました。
児童とともに2年生や3年生の学びを振り返りながら問題設定をしました。児童も自分たちがもうすでに知っていること、知らないこと整理しながら自分は葛飾の特にどの内容について調べるか決めました。
そして、グループで特定のテーマに対して、自分で決めたテーマを調べ、自分の担当する箇所をGoogleスライドで共同編集でまとめました。
家庭学習と反転学習
本単元では、相手意識をもってよりよい発表へ児童が主体的・協働的に向かっていくことを試みました。具体的には、児童がまとめたGoogleスライドを発表している姿を撮影しました。そして、その動画をGoogleクラスルームで共有しました。その動画を家庭学習として、友達が発表に使用したスライドに対する「アドバイス」と「良かったところ」をオクリンクで共有しました。
家庭学習で友達からもらった「アドバイス」と「良かったところ」などの協働的な学びから得たものをもとに、児童が自分で本時のめあて(課題)を設定し、主体的に学習に取り組みました。授業で学習したことを家庭学習で行うではなく、家庭学習で学んだことをもとに授業を行う反転学習をしました。
他者参照と課題設定
本単元ではICTを活用してオクリンク上で成果物やアドバイスなどが共有されており、互いに参照できる状態になっている。加えて、対面で直接アドバイスをくれた友達に聞きにいける環境も設定されています。
このような環境で児童は友達からもらったアドバイスをもとに本時のめあて(課題)を設定をしました。単元の大きな方向性はラーニング・マウンテンを活用し示しました。
これによって、児童は友達からもらったアドバイスをもとによりよいスライドにするために本時のめあて(課題)を設定することができました。具体的には、ある児童は「文字を少しへらしたほうがいい」というアドバイスを受け、本時のめあて(課題)を「画像と文字を少し大きくする」とし、アドバイスからスライドの改善に取り組もうとしていました。
個別⇔協働
本時では、個別と協働を往還した学習形態をとりました。具体的には、授業の導入で児童が友達のアドバイから本時のめあて(課題)を設定した後、個別でスライドの修正に取り組みました。これが個別です。その後、写真のように互いにスライドを見せ合いながら発表しアドバイスをし合いました。これが協働です。そして、ここで得られたことから、さらに自分のスライドを個別で修正します。アドバイスの内容が気になったり、友達にチェックしてほしいときは声をかけました。つまり、個別から協働へ、そして協働から個別へ、と往還する学習形態をとりました。
この結果、児童は45分の授業の中で、情報収集と整理・分析、振り返りを何度も繰り返して主体的によりよい発表になるように学習に向かっていました。
学びの計画と振り返り
本単元では、学習計画からルーブリックの作成、振り返りまで各グループの学びの蓄積を各グループと教員で共有したスプレッドシートで見取ります。
授業の導入で各グループで本時のルーブリック(規準と基準)を児童が立て、自分たちで自分たちの学びの方向づけとゴールから、学びの見通しを持つこと目指しています。
自分たちで立てた学習目標のため、主体的に学びに向かう児童の姿が見られています。
主張をもとにデータを見る
本単元のねらいは、「提案内容に合わせて、データを抽出し、活用しながら(スライド等に)表現することができる」ことです。
このときに避けたいことは、主張に合わせてデータを改竄すること、データに流されて主張を変えてしまうことです。
そこで、本単元では、データを見る前に、ある程度自分たちの主張を決め、それを裏付けるようなアンケートを収集しました。さらに、アンケートの結果を見る前に、計画シートを作成し、主張をもとにデータを見て、自分たちの主張(仮説)と照らし合わせながら学びを進めました。
データ+根拠で主張する
本時では、Googleフォームで保護者を対象に収集した結果を分析しました。国語の学習を生かして、はじめ・中・おわりで構造的に話す工夫をしたり、算数の学びを生かして、割合を見やすくするために円グラフを活用するグループ、量を見やすくするために棒グラフを活用するグループ、さらに自由記述をテキストマイニングでどんな記述が多かったか分析するグループがあったりしました。
自分たちの主張をするためにデータをどのように活用するのか、大人でも難しいデータサイエンスに、主体的に学びに向き合っていました。