考えや行動へのとらわれがもたらす心理的影響とその認知行動メカニズムに関心があります。なかでも,反すうが抑うつを悪化させる要因を明らかにするために,注意の範囲などの認知的情報処理や,潜在的回避行動といった接近―回避次元などの観点から研究を進めています。近年は,反復的な否定的思考や精神病理の階層的次元モデルに関する研究も行っています。
心理学研究や臨床実践では,心理尺度や患者報告式アウトカム尺度を用いて症状を把握・評価することが多くあります。一方で,類似した概念を測定する尺度が乱立していることや,信頼性・妥当性などの測定特性の質が十分でないことが問題となっています。これらをふまえ,心理尺度や患者報告式アウトカム尺度の質の評価や,そのためのツールの整備を行っています。
東日本大震災と原子力発電所の事故により,福島県では今なお深刻な影響が続いています。その中で,被災地住民のメンタルヘルスに関する研究および心理社会的支援(遠隔支援やアウトリーチ)を行っています。近年では,新型コロナウイルス感染症の心理的影響に関する研究や,クラスターが発生した医療・介護施設の職員を対象とした支援も行ってきました。
日本では,うつ病による休職やそれに伴う経済的損失が大きな社会問題となっています。そこで,勤労者の抑うつやプレゼンティーイズム(出勤はしているものの健康問題で労働遂行能力が低下している状態)に関連する要因について研究しています。また,これまでにはうつ病による休職者を対象とした集団認知行動療法も行ってきました。