A氏が経験したハラスメントとその二次加害の具体的な事例
図①:2017年7月29日~ A氏の証言に基づく「申立書A」の相関図
京都市立芸術大学は京都市西京区から京都市下京区へ学舎を移転するにあたり、長期的な移転事業を実施してきた。京都市立芸術大学職員A氏は、2017年7月にその移転事業の主要施設である元小学校での勤務中、職員B氏から「人の家に来たら挨拶するのが、普通だ!」「お前にはどう思われててもいいし何を言ってもいい!」といった怒鳴り声を浴びせられた。B氏は、1時間以上にわたり、A氏の仕事が自分の職域と重なることに対する不満を大声で述べ、その後もB氏は自身の勤務日以外にも職場に現れ、A氏の他に職員がいない状況でA氏を追い回した(図①)。
図②:2017年8月初旬~ A氏の証言に基づく「申立書B」の相関図
事件発生後、A氏が直属の上司に報告した結果、B氏が所属する当時の総務広報課課長(以下X氏)は、A氏へ直接「これはハラスメントではないから大学では対応することではない」「あなたが個人的に裁判を起こせばよいのでは」と二次加害的な返答を行った。(図②)
その後、A氏の勤務日の調整が行われるもヒアリングや根本的な対策が行われることはなく、2018年度にはA氏がプロジェクトから外れることになった。しかし、2019年度に再度、A氏に対してB氏と同じ勤務場所への配属が通知されたため、A氏はB氏との出勤日が重ならないように大学へ調整を求めるも、その要求は拒否された。
このような京都市立芸術大学の対応の不備による二次加害が続き、A氏は問題が未解決のまま勤務を続けることを余儀なくされ、精神的な不調に襲われるようになった。A氏は当該施設およびその近隣への接近にすら恐怖を覚え、大学での勤務もままならない状況におかれている。だがA氏は、京都市立芸術大学のキャンパス・ハラスメント防止のためのガイドラインが明記する通り、教職員及び学生等が、大学において学業、教育、研究及び業務における平等かつ平穏な環境を享受する権利を侵害されることはハラスメント行為であり、許されるものでは無いという言葉が組織的に機能し、京都市立芸術大学に関わる全ての個人の尊厳が守られる場であることを願い、2021年2月19日に京都市立芸術大学キャンパス・ハラスメント防止対策委員会へ、B氏から受けた被害に対して「キャンパス・ハラスメント申立書A」、ハラスメント対応にあたった責任者であるX氏らによる二次加害に対して「キャンパス・ハラスメント申立書B」を提出した。
その後1年6ヶ月が経過した時点で、大学から結果の通知がなかったため、A氏は学長にハラスメントの解決を求めて嘆願書を提出。学長からは「ハラスメント防止対策委員会に対し、早期に調査を終え報告をおこなうように伝えた」との返答があったものの、結局キャンパス・ハラスメント防止対策委員会からの途中報告がないまま更に5ヶ月が経過。
申立てから約2年後となる2023年2月8日に、大学からA氏に対して結論が通知された。キャンパス・ハラスメント防止対策委員会が結論を通知するまでに約2年が経過したにもかかわらず、調査内容や根拠の提示はなく、「ハラスメントとは認定できない」という結論のみを示すものだった。
申立てから3年以上が経過した現在も、大学はA氏への説明責任を果たしていない。A氏はこの問題自体と、不透明な調査、本件に対する長期的な大学の無反応により精神的苦痛を受け続け、フラッシュバックに苦しんでいる。「ハラスメント再発防止 有志の会」の関西在住者とA氏は2024年に京都地域合同労働組合である「きょうとユニオン」へ加盟し、団体交渉による問題解決を目指して活動を続けている。
※「申立書A」での被申立人はウェブサイトにおける職員B氏に相当します
※「申立書B」での被申立人はウェブサイトにおけるX氏に相当します
【メディア掲載】
猪谷千香「同僚から「言葉づかいがなってない」「生意気なやつ」と罵倒 、京都市立芸大の職員を襲った恐怖のハラスメント」『弁護士ドットコム』2022年11月27日(https://www.bengo4.com/c_18/n_15305/)
【参考】
厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html)