刃物の研ぎ方を簡単に紹介します。
砥石は研いでいるうちにすり減って凹形になっていきます。できるだけ凹形になるのを遅らせるよう端の方を使う意識を持ちますが、やはり歪みが出てきます。形が歪んだ砥石は都度平らに修正することが上手く研ぐためには必須です。どれくらいの平面度が必要かはケースバイケース。砥石を横から見て明らかに歪んでいるのが分かればまぁアウトでしょう。
おすすめは研ぎ終わる度の修正をルーティーンにすること。結果的にこまめに修正した方が労力は少なくて済みますし、いつでも良い研ぎができるコンディションが整っているので良いです。
砥石の上を滑らせて研いでいく訳ですが、砥石に対する刃物の角度がビシッと動かないことが大事。角度が一定に保てないと刃先が砥石に当たったり当たらなかったりしてうまく刃が付きません。最初のうちは向こう側に動かすと角度が立ち、手前側に動かすと角度が寝るように角度がずれてしまいがち。なので、それを打ち消すように制御してやりましょう。
研磨力を高めたい時は砥糞を洗い流しながら研ぐと良いですが、引っ掛かりやすかったり研ぎ傷が付きやすいデメリットがあります。
きめ細かい刃を付けたい時は砥糞を洗い流さずに研ぐと良いです。
カエリが出ていない部分は刃が付いていません。カエリは刃先を指の腹で撫でて確認します。くれぐれも指が切れる撫で方をしないように。刃元から切っ先までカエリが途切れなく出るまで研ぐこと。ちゃんとカエリが出たら、反対側の刃をごく軽く研いでカエリを取ったら完成です。
使っている時によくまな板に当たる箇所が切れなくなるからといってその箇所ばかり研いでいると元のラインが崩れてしまう、というのがありがちな失敗パターンです。刃元から切っ先に至るラインを維持するためには、既にカエリがしっかり出ている箇所も研ぎ込む必要もあります。
番手は#200~400程度。欠けや歪みを修正する時に使います。
番手は#1000前後。通常はこの砥石から研ぎ始めます。
番手は#6000程度。最初は持っていなくても大丈夫ですが、より良い切れ味と刃持ちの良さを求めるなら欲しいところ。
砥石を修正する方法はいくつかありますが、まず定番なのが修正砥石。
コンクリートブロックなどに水と金剛砂(研磨剤)を撒き、砥石を擦り付ける方法もあります。
アトマなどの電着ダイヤモンド砥石もおすすめです。
手前右からダイヤの荒砥(#400 & #1000)、中仕上げ砥石(#1000)、仕上げ砥石(#6000)
砥石は研いでいるうちにすり減って面が歪んでいきます。歪みが大きくなってくると、上手く研げなくなってしまうので、時々歪みをチェックして面直しをしてやる必要があります。
面直しに使う道具は手ごろなものだとコンクリートブロックと金剛砂です。濡らしたコンクリートブロックに金剛砂を撒き、そこに濡らした砥石をこすりつけることで砥石が削れて平らになります。
ものさしを当てて砥石の歪みをチェック
コンクリートブロックで砥石の面直し
中仕上げなどの水砥石は泡が出なくなるまで水に浸けておきます。(質や大きさで時間は変わる)
ダイヤモンド砥石や仕上げ砥石など、砥石の種類によって表面を水で濡らすだけで良いものもあります。
泡が出ていたらまだです
牛刀、三徳包丁のような両刃は幅1~2mm程度の切れ刃を研ぐものがほとんどです。
切れ刃を研ぐ際のポイントは角度を一定にすること。慣れないうちはゆっくり慎重にストロークさせましょう。
柄を持つ手で砥石に当てる角度を決め、反対の手の指で刃先近くを押さえて前後に動かします。
両刃なので、表裏同じように切れ刃を研ぎます。
刃先に白く見える細いラインが切れ刃。ここを角度一定で研ぎます。
柄を持つ手で砥石に当てる角度を決め、反対の手の指で刃先近くを押さえて前後に動かします。
表は基本的にベタ研ぎです。
表の刃をベタっと砥石に当てますが、幅が広い切れ刃の中でも刃先を研ぎたいので刃先の方が強く砥石に当たるよう左手の指で刃先近くを押さえます。ベタっと当てたなりに研ぐとなかなか刃が付きませんし、鋼材が柔らかい地金が早く削れてだんだんと刃の角度が鋭角になっていってしまいます。
片刃の裏は凹んでいて(裏スキ)、刃先と背だけが当たるようになっています。裏はカエリを取るためだけに砥石に当てます。カエリが出た後に1~2回滑らせたら終了です。
裏を研ぎ過ぎると裏スキが無くなって研ぎにくく、切れにくい刃になってしまうので要注意。
片刃の柳刃。ベタ研ぎなので刃先に小刃は見えません。
片刃の裏はカエリを取るためだけにごく軽く研ぎます
出刃包丁や鉈は片刃ですが、ベタ研ぎすると刃が鋭角過ぎてガツンと使うとすぐに欠けてしまいます。
刃先の強度を出すために刃先に鈍角の二段刃を付け、角になったところを丸めることで蛤刃になります。
蛤刃の出刃。刃先が蛤の貝殻のようにカーブして鈍角の刃を付けています。
欠けを修正する際は荒砥石を使います。砥石に対して80度くらいに立てて一気に欠けを削り取ります。
欠けた部分だけを削ると刃の形が歪んでしまうため、全体のバランスを考えて形を整えます。つまり、欠けていない部分も削ることになります。
形の修正ができたら刃の角度に戻して刃を付け直します。あとは通常の研ぎで仕上げます。
欠け修正前
欠け修正後
剪定鋏はスティック状もしくはプレート状の砥石を当てて表側の小刃を研ぎます。
全体に均一にカエリが出たら砥粒を洗い流してから噛み合わせることでカエリが取れて研ぎ上がり。
この部分(表の小刃)だけを研ぎます