刃物の切れ味を決める要素は形状、材質、研ぎ、です。この三つが切る対象にマッチしていることが大事です。
切れ味の良い状態が長く続くかどうかを刃持ちが良い、悪い、と表現します。刃持ちが良いのを「長切れする」と言ったりもします。最初は素晴らしい切れ味の刃物でも、刃持ちが悪ければしょっちゅう研がなければならず、あまり良い刃物とは言えません。
研ぎやすさはメンテナンス性です。良い道具はメンテナンス性が良いもの。切れ味と刃持ち、研ぎやすさのバランスが取れているものが良い刃物と言えるでしょう。
刃物の左右どちらかの面が平面で、反対側の面が斜めに刃が付いているものが片刃、左右両方の面に斜めの刃が付いているものが両刃です。和包丁の多くが片刃、洋包丁の多くが両刃になっています。(※三徳包丁は日本で生まれた包丁ですが、洋包丁に分類されます)
片刃は鋭い切れ味が持ち味ですが、両断する際に真っすぐ切れません。両刃は片刃と比べて切れ味には劣りますが、クセのない使いやすさがあります。
片刃と両刃は研ぎ方が全く違います。どちらの方が研ぎやすいかと言うと一長一短。片刃は片刃なりの、両刃は両刃なりの研ぎやすさと難しさがあります。
一段刃は斜めになった刃の面が一面で刃先まで構成されている刃。二段刃は斜めになった刃の面が刃先近くでもう一段階斜めになっている刃です。大体のところで言うと、日本の刃物が一段刃、西洋の刃物が二段刃になっているものが多いです。
日本の刃物に特有の構造として硬い刃金(はがね)と柔らかい地金を貼り合わせたものがあります。鉛筆に例えると芯が刃金、木の軸が地金。硬い刃金を柔らかく粘り強い地金がカバーすることで鋭い切れ味と折れにくさ、研ぎやすさが両立されています。高価な刃金の使用量を抑えてコストを抑える目的もあります。
刃金の材質は切れ味に影響する大事なスペックです。刃持ちや研ぎやすさにも影響します。一般的には硬いほど 切れ味と刃持ちは良くなり、研ぎにくくなります。
刃金の材質は大きく 鋼(はがね)とステンレス に分類できます。
鋼(はがね)は鉄と炭素を主とする合金で、炭素鋼(カーボンスチール)とも呼ばれます。炭素の量が多い方が硬くなって鋭い刃が付きやすくなりますが、同時に脆さが増すので欠けたり折れたりしやすくなります。鋭い切れ味、刃持ちの良さ、研ぎやすさを兼ね備えていますが、錆びやすい欠点があります。日本には古来から続いてきた高性能の刃物鋼、安来鋼(やすきはがね)が広く知られています。
ステンレスは鉄にクロム、またはニッケルとクロムを含んだ合金です。皆さんご存知の通り錆びにくいのが最大の特徴です。大抵のステンレスは鋼と比べて切れ味と刃持ちの良さは劣る傾向ですが、プロ向けの高級ステンレス刃物鋼は鋼と遜色のない切れ味と刃持ちの良さを持つものもあります。ステンレスは研ぎにくいと言われますが、私はそう感じたことは特にありません。普通の砥石で普通に研げると思います。
マイナーな材質でチタンやセラミックがありますが、あまりおすすめはできません。チタンのメリットは軽さと錆びにくさですが、鉄と比べて柔らかいので切れ味はあまり良いとは言えず、刃持ちも良くありません。また研ぎにくいです。セラミックは非常に硬い材質なので鋭い切れ味ですが、脆いため意外と早く細かい欠けが増えて切れなくなっていきます。研ぐ際はダイヤモンド砥石限定ですが、やはり脆いので綺麗な刃を付けるのはなかなか難しいです。