福井医科大学学歌の35年の軌跡とその奇跡 白翁会代表理事  本多德行(医 1 期生)

伊藤柏翠作詞、古関裕而作曲の福井医科大学学歌は 1985 年 4 月入学の6期生の入学式に初めてお披露目されました。1期生の自分は 1986年 3 月の卒業式に初めて歌ったのかもしれません。それにもかかわらず、自分はこの学歌が好きですし愛着があります。それは卒業して福井医科大学同窓会を設立して以来この学歌を歌い継いでいるからです。

学歌は福井の豊かな自然や医学の歴史が3番からなる歌詞に歌いあげられており、笠原白翁のように深く学び多くの命を救う医師になれと訴えています。医師を志す若者を鼓舞する伊藤柏翠先生の歌詞は広大な九頭竜川河川敷に存立する福井医科大学キャンパスでの学生時代を思い起します。

2003 年 10 月に旧福井大学との統合により福井医科大学同窓会は福井大学医学部同窓会白翁会に改名となりますが、白翁会の命名は、もちろんこの学歌の歌詞に由来しています。そして、同時期に福井医科大学の学章・学歌を同窓会白翁会が引き継ぐことを第 8 回同窓会総会で承認されています。白翁会の東日本支部会・西日本支部会では会の終わりにこの学歌が歌われており、白翁会会長として支部会に出席している自分は毎年学歌斉唱する機会が増え、学生時代のキャンパス生活に対するノスタルジックな想いに耽るひと時を過ごしています。

今回、開学 40 周年記念誌の編集に際して、医学部事務局で古関裕而氏直筆の学歌の楽譜や依頼者への手紙、そして東京立正佼成合唱団によるオーケストラ伴奏のデモテープや関連資料が見つかりました。35 年目の新発見であり奇跡でもあります。この学歌は古関裕而氏晩年の作品であり、古関裕而記念館の研究員によると、直筆の楽譜や手紙は大変貴重なものらしいです。す。そして、NHKの朝ドラ「エール」の主人公の古関裕而氏が脚光を浴びている今、この学歌も注目される事になりました。この話題性からNHK福井局の取材があり、白翁会理事会での雑談や福井大学学長の上田孝典先生のインタビューが放映されました(2020 年 7 月 2 日)。

伊藤柏翠作詞、古関裕而作曲として大学の体育館に掲げられていたこの福井医科大学学歌ですが、すごい!メジャーな方々が何故、一地方医科大学の学歌を作って下さったのか学生時代から疑問に思っていました。今回見つかった資料から初代の第一内科学教授・故中村徹先生が専門の痛風の「痛風友の会」の会員の方を通じて直接古関裕而氏に依頼されたことが判明しました。福井医科大学の創生期に初代の教授がご尽力されていたことがわかり、感謝の念を禁じえません。そして、故中村徹先生の愛弟子で後継教授でもある上田孝典学長がこの学歌に対する熱い思いをインタビューで語られているのを見て、この学歌の 35 年の軌跡とその奇跡に感謝と感動を覚えました。

この学歌を福井大学医学部同窓会白翁会の会歌として末永く大切に歌い継いでいこうと思います。