地球システム・倫理学会の「研究例会」
地球システム・倫理学会の「研究例会」
■日 時:2025年07月26日(土) 16時00分〜18時00分(開場:15時45分)
■会 場:麗澤大学新宿キャンパス(東京・西新宿「新宿アイランドタワー」4階)およびZoom
■講 師:橋 柃 ウィーン比較思想・学際研究協会理事長
■テーマ:何のための哲学か? --- 実践的叡智の学を求めて
■要 旨: IT情報革命を経て既に四半世紀が過ぎ、全世界がデジタルネットワーク化に突入した。生成AIをはじめとする人工知能の進出と、その是非をめぐっての議論は絶えない。自身の生命体無く、自ら感受し思考する〈意識〉をもたないAIは果たして人工〈知能〉たり得るのか。AIには何が可能で何が不可能か。AIに可能たりえず人間にこそ可能な思考と真理真実の認識とは何か。これらが改めて問い直される時期である。
自発的に思考する人間が、自他の思考の内容と形式、その意義を批判的に吟味する。自身の思考と真理真実の関連性を追究する。思考を媒介する言語表現が、真理そのものを形成する体系の一部となり、言語表現の展開が真理の体系そのものとなる。
既存の西洋哲学は、言語そのものを真理の顕れとし、論理の構築によって真理の体系を形成することに主力を注いできた。他方、精緻な論理による真理体系がどのように人生を生きる場に反映され、自身の人生でどう真理を実践し体現するか、という観点は希薄となりがちであった。視座を東洋に転ずると、そこでは対極的な立場が形成されてきたことに気づく。真理を観想し真理と一体化し、真理を自己の心身を通して行ずる立場、自らが真理真実を体現する〈場所〉となる学である。東アジアの大乗仏教思想では〈教・行・証〉三種の体系を一体化し、真実を究明しゆく立場があった。19世紀の西洋哲学中心の立場からは、「神秘主義で論理に非ず、哲学に非ず」とみなされてきた所だが、では哲学とは何のためにあるのか?
〈純粋論理の抽出なしには哲学は成り立たず、東洋の思想に哲学無し〉としたヘーゲルだが、「論理によって抽出された真理」が人生での実践(行)、〈真実体現の場〉につながってこない限り、「教」や「学」のあかし・「証」の立場としては認めない、という路線が東洋の思想哲学では主体だったといえるのではないか。西田は「叡智的世界」で、「対象論理」を主体としてノエマ(思考された真理)の方向に極められた西洋哲学(カント、ヘーゲル、フッサール)への明らかな論考を行う。そこでは、ノエマの究極から、真理真実を認識する本体としての自己、思考し叡智を自覚し、叡智を実践し叡智そのものを体現しゆく〈ノエシス・叡智的自己〉への回帰と、その無窮の深まりが打ち出される。論理により思考を省察し体系化してきた哲学が、真理真実を実践し、叡智体現の場として人生を建設する学へ展開する。実践的叡智の学、actus intellectualisとしてのグローバル世界の哲学のゆくえを論述したい。
■略 歴:橋 柃 (はし ひさき)東京都に生まれる。ウィーン国立音楽大学芸術修士取得後、ウィーン大学に転じ哲学博士。1995年よりウィーン大学哲学科で教職、2003年哲学全域での教授資格(ハビリタツィオン)取得、教授資格博士。2020/21年、ポーランド国立学術院綜合哲学部国際博士課程(GSSR)哲学教授(客員招聘格)。2008年 ウィーン比較思想・学際研究協会KoPhil(地球システム・倫理学会協賛研究機関)設立、同理事長。地球システム・倫理学会常任理事。『グローバル現代の比較思想-実践的叡智の哲学へ』(2023年)春秋社。著書多数。 https://orcid.org/0009-0006-7734-3978; https://ucrisportal.univie.ac.at/en/persons/hisaki-hashi ; https://ufind.univie.ac.at/en/person.html?id=13985
■「研究例会」には、当学会に未加入の方も、来場ないしはオンラインで参加頂けます。当学会に未加入の方が来場して参加される場合は、当日、会場受付にて資料代として1,000円お支払いください。(ただし学生・院生は無料です)
■「研究例会」に先立ち、14時30分から15時30分まで「理事・評議員会」を開催します。「理事・評議員会」は、当学会の理事・評議員のみの参加となります。
■「研究例会」および「理事・評議員会」への出欠を、こちらのフォームで、2025年07月17日(木)までにご回答下さい。07月18日(金)以降に参加を申し込まれる場合は、学会事務局長(犬飼孝夫)宛にメールでご連絡ください。メールアドレス:tinukai@reitaku-u.ac.jp
■オンライン(Zoom)で参加希望の方には、開催前日までにZoomのURLとパスコードをお届けします。前日までにURLとパスコードが届かない場合は、学会事務局長(犬飼孝夫)宛にメールでご連絡下さい。メールアドレス:tinukai@reitaku-u.ac.jp
■来場に際しては感染症防止に十分ご留意下さいますようお願い申し上げます。
更新日:2025年07月04日