地球システム・倫理学会の「研究例会」
地球システム・倫理学会の「研究例会」
■日 時:2025年02月01日(土)16時00分〜18時00分(開場:15時45分)
■会 場:麗澤大学新宿キャンパス(東京・西新宿「新宿アイランドタワー」4階)およびZoom
■テーマ:文明の装置としての事務
■講 師:河野 憲嗣(こうの けんじ) 名古屋大学ディープテックシリアルイノベーションセンター特任教授
■略 歴:1964年、京都市生まれ。1988年、京都大学経済学部卒業。富士銀行(現みずほ銀行)で14年、ソニーグループで13年勤務。社会人大学院生として2008年に京都大学経営管理大学院修了(MBA)。2011年に京都大学大学院経済学研究科を研究指導認定退学、2012年に博士(経済学)。2015年に京都で創業した町家旅館を譲渡した後、2016年より大分大学経済学部教授。在任中は最低賃金審議会公益委員、国東半島宇佐地域世界農業遺産推進協議会専門家委員などを歴任。2024年9月より名古屋大学ディープテック・シリアルイノベーションセンター特任教授。
研究テーマは決済システム、企業倫理、CSV経営など。主な所属学会は地球システム・倫理学会(理事)、日本語教育未来学会(副会長)、しごと能力研究学会(常任理事)、社会経済システム学会(理事)、IUAES(Commission: Enterprise Anthropology, Deputy chair)など。著書に『チェック・トランケーション研究―決済の経営学による考察』(2013、単著)、『テキスト経営人類学』(2019、共同編者)。決済に関する特許出願4件(うち権利化1件、審査請求中2件)。
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■要 旨: 梅棹忠夫による文明と文化の概念に基づいて、日置弘一郎は株式会社制度や大量生産方式を構成要素とする企業を文明の装置と位置づけ、その役割や意味の歴史的変化や各国間の相違の解明に取り組んだ。また梅棹は「現代は事務の時代であるということさえできるだろう」とも述べている。本発表では日置による企業の理解に依拠しつつ、企業の構成要素としての事務、さらに梅棹が「われわれの社会のすべてのいとなみにおおいかぶさっている」と目した事務が企業を機能させる装置にとどまらず地球システムの課題に貢献しうる可能性について考察する。
銀行では一般に事務工程を設計する専門の部署が設置されている。事務管理部門はお堅い銀行の業務手順を策定する部署であるが、社内では銀行の良心とも言われている。事務屋といえば、創造性に欠けた融通の聞かない人物の描写に感じられるが、確実に作業を進める能力への敬意も読みとれる。伝票を処理する事務仕事よりも1億円を融資する可否判断の方が上位職の仕事とされるが、官公庁において事務次官や事務局長という呼称には実質的トップといった含意が認められる点は興味深い。
事務のイメージは多様であるが、ここでは方針や戦略、計画といった概念よりも人に直接働きかける存在、組織や社会を実際に動かす力としての事務に着目する。かつて絶対的な君主が反逆者を死刑と断じても事務手続の不備により君主の意向に反して刑が執行されなかったケースは、事務が秘める力の存在を推し量る一例である。
地球システムの問題を文化の側面から議論する視座が倫理だとすれば、これを文明の側面からより実践的な議論に向けて事務という視座を提示する。ただし拙速な概念化や体系化を目指すのではなく、非合理的な事象もあるがままに捉える経営人類学的手法で事務の諸相を粛々と観察、記録する取り組みを通じて課題の所在につながる示唆の抽出を試みる。
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■「研究例会」には、当学会に未加入の方も、来場ないしはオンラインで参加頂けます。当学会に未加入の方が来場して参加される場合は、当日、会場受付にて資料代として1,000円お支払いください。(ただし学生・院生は無料です)
■「研究例会」への出欠をこちらのフォームで、2025年01月24日(金)までにご回答下さい。(01月25日(土)以降に参加を申し込まれる場合は、学会事務局長(犬飼孝夫)宛にメールでご連絡ください。)メールアドレス:tinukai@reitaku-u.ac.jp
■オンライン(Zoom)で参加希望の方には、開催前日までにZoomのURLとパスコードをお届けします。前日までにURLとパスコードが届かない場合は、学会事務局長(犬飼孝夫)宛にメールでご連絡下さい。メールアドレス:tinukai@reitaku-u.ac.jp
■来場に際しては感染症防止に十分ご留意下さいますようお願い申し上げます。
■「研究例会」に先立ち、14時30分から15時30分まで「理事・評議員会」を開催します。「理事・評議員会」は、当学会の役員(理事・評議員)のみの参加となります。
更新日:2025年01月06日