Bグループ活動報告
(障害学生支援)
(障害学生支援)
Bグループは、「障害学生支援」を取り扱うグループ研究会です。2024年4月の「改正障害者差別解消法」施行に伴い、私立大学においても合理的配慮の提供が義務化されました。これにより、各大学において、組織的な取り組みや体制整備をソフト・ハード両面で見直し、進めています。また、多様な学生への合理的配慮の提供や支援はより一層重要となっていますので、各大学において取り組むべき課題も浮き彫りになっています。
これらの状況を踏まえて、今年度Bグループでは、テーマを「合理的配慮の義務化による学生支援」とし、全6回のグループ研究会を開催しました。研究会では、毎回、会員が自大学で抱えている課題をテーマとして事例発表し、それに対して各会員が、自大学における実践等を共有する形で意見交換を行いました。大学ごとに支援体制等が異なることは言うまでもありませんが、そういった違いを共有するなかで、自大学の障害学生支援の実践に還元する意識をもって活発な議論が交わされました。
また毎回異なる大学で研究会を開催することにより、キャンパスツアーを通して、バリアフリー設備や支援機器、支援の仕組みを実際に体感し、各大学が持つ取り組みの知見を共有しました。これらの活動を通し、「これからの障害学生支援」について、障害学生支援の新たなアイデアや改善策を見つけることができました。
開催日時:2024年6月14日(金)15:05~16:35
開催場所:立教大学 池袋キャンパス
参加人数:9人
主な議題:グループ研究会の進め方、役割分担の確認、情報交換
活動報告:
自己紹介およびアイスブレイクのほか、年間スケジュール、会場、役割分担を確認のうえ、情報交換のテーマについて、以下のとおり各大学の取り組み状況等を共有しました。
①合理的配慮の各大学の対応や現況について
いずれの大学においても、合理的配慮の義務化に伴い、支援体制を強化していることが確認されました。ただし、障害学生支援を専門とする部署のある大学、学生課や教務課等が兼務する大学と、その体制は大学により異なることが分かりました。
②各大学での学生数に占める障害学生数について
研究会時点での各大学の学生数に占める障害学生数は、平均約1%でした。ただし、支援希望の学生は増加傾向にあるため、今後、増加が見込まれる状況でした。
③障害学生支援に関わる教職員の体制について
担当する職員については、有資格の専門職を配置する、事務職員が兼務する、といったようにそれぞれに異なる体制となっていますが、専門職が不在の大学については、配慮内容や支援体制の構築に時間を要している部分が見られ、人的体制整備について課題としている大学が多くありました。
④その他、各大学の課題について
医療系学部の実習に関することや、合理的配慮の申請から提供までのフローに関すること、教職員の啓発の必要性等が課題としてあげられ、以後の研究会において各大学の取り組みについて共有していくこととなりました。
開催日時:2024年10月25日(金)13:30~16:30
開催場所:共立女子大学・共立女子短期大学 神田一ツ橋キャンパス
参加人数:11人
主な議題:
①合理的配慮の学内共有(内容、方法)について
②学生支援における体制整備
③各大学における情報保障について
活動報告:
1.キャンパスツアー
開催校である共立女子大学神田一ツ橋キャンパスを見学しました。
2.事例発表
以下のテーマに基づいて実施したアンケート結果及び各大学の現状について共有いたしました。
1)合理的配慮の学内共有(内容、方法)について
①「合理的配慮の依頼文」に記載されている学生の個人情報等について
学籍番号、学生氏名、障害名・疾患名と状態、修学上の配慮内容については全大学記載しており、学年、所属についてもほとんどの大学で記載していることを確認しました。その他として、障害者手帳の有無や過去の配慮状況、情報の取り扱い範囲、根拠資料等があがりました。
②「合理的配慮の依頼文」の教員への通知方法について
各大学により異なる状況でしたが、共有ドライブ、メール添付、学内ポータルサイト、手渡しが複数校、その他として、厳封のうえ、教員のレターボックス経由で配付やMicrosoft Share Pointを使用しているケースもありました。
③配慮開始後の他部署との連携方法について
対面及びメールで情報共有を行っている大学が多く、共有ドライブや学内ポータルサイトを活用している大学もありました。
④情報共有の際、個人情報等の取り扱いで注意している点について
メールのタイトルに(取扱注意)等を付し都度可視化している、手渡しの際必ず受領印をもらっている、メール添付ではなく大学のクラウド上や閲覧権限をつけたドライブのURLを共有する、「学生相談・修学支援における個人情報の取り扱いに関するガイドライン」を制定して運用している等の意見があがりました。
2)学生支援における体制整備
①教職員への障害学生支援に関する理解を深める取り組みについて
教職員向けの啓発活動としては、年1~2回、外部講師を招いての研修会を行っている大学が最も多く、ハンドブックの作成や制度周知のための説明会、動画作成等を行っていることを共有しました。また、学生向けには、ガイダンスでの説明や講義科目として設けている大学もありました。
②障害学生支援コーディネーターの雇用状況について
コーディネーターがいる大学といない大学は半数の割合でした。また、コーディネーターがいる場合も有期雇用または業務委託契約で雇用をしており、応募に際しては、公認心理師・社会福祉士・精神保健福祉士・臨床心理士の資格保有者及び支援経験者を条件として、各大学のHPにて募集をかけている大学が多数でした。
③大学指定書式の診断書について
大学指定書式の診断書のある大学は2大学であり、メリットとしては記載項目の統一により学生による偏りがないこと、デメリットとしては既に診断書を取得している場合、追加取得のため金銭的負担が生じることがあげられました。
④学生支援の更新手続きについて
配慮依頼文書の更新時に診断書を再提出してもらっている大学は半数でした。配慮内容の確認においては、面談を実施する、アンケートの回答により対応する大学がそれぞれ半数程でした。
⑤支援学生の定期的な面談について
定期面談を実施している大学は6割であり、必要な学生に学生の状態に合わせた頻度で行っていることが共有されました。また、面談時間も実施大学全てが1時間以内としており、うち30分未満が6割程でした。
3)各大学における情報保障について
①情報保障を必要とする学生の在籍について
半数の大学が在籍している状況を確認しました。
②ノートテイカーのリソースについて
情報保障を行っている大学のうち、ほとんどの大学のノートテイカーは学生のみで構成されておりましたが、1大学はプロのノートテイカーへ依頼していることから、その体制等について共有しました。
③ノートテイカーの手当てについて
ほとんどの大学が手当てを支給しておりましたが、1大学はクオカード等で対応していることを共有しました。また、手当については、最低賃金に合わせている大学、経験回数に応じて異なる時給単価を設定している大学があり、各大学の状況について確認しました。
④ノートテイカーのキャンセル料について
キャンセル料支給の条件に応じて支払っている大学の状況を共有し、各大学共に今後の運用について意見交換を行いました。
⑤手話通訳士の依頼状況について
手話通訳を依頼している大学は3大学であり、各地域の手話通訳士派遣センター等に依頼している状況を共有しました。
開催日時:2024年11月15日(金)13:30~14:30
開催場所:拓殖大学 文京キャンパス
参加人数:11人
主な議題:
①通学が困難な学生への授業における支援について
②視覚障害者への支援体制(支援機器等)について
③性別違和を持つもしくはそのような診断のついた学生への対応について
④大学における障害者向けの設備について
活動報告:
1.キャンパスツアー
開催校である拓殖大学文京キャンパスを見学しました。
2.事例発表
以下のテーマに基づいて実施したアンケート結果及び各大学の現状について共有いたしました。
1)通学が困難な学生への授業における支援について
①通学が困難な学生への授業形態に関する配慮申請への対応について
通学制の大学であることから、現時点ではオンライン(オンデマンド)授業の対応を実施していない大学が複数ありました。多くの大学は教育の目的等の本質的変更にあたらない範囲で、各教員へ対応を依頼している状況でした。
2)視覚障害学生への支援体制(支援機器等)について
①支援事例と支援機器について
以下の事例等を共有しました。
授業内資料や試験問題についての拡大印刷、卓上拡大鏡の使用許可、PC・イヤホンの持参及び使用許可、板書内容の読み上げ、板書にあたり、文字の色ではなく線で強調、点字訳、ノートテイク、テキストデータ化、移動のサポート、レーズライターの貸し出し、試験の別室及び時間延長対応、重要事項の口頭説明、前方座席への変更、授業の録音許可
②支援機器に関する情報入手について
教員、学生からの情報提供により、障害学生支援を担当する部署が中心となり情報収集を行っている大学が多くありました。
③点訳の外部依頼について
点訳については、各大学共通して依頼先に苦慮している状況であったため、外部依頼先についての情報交換を行いました。
3)性別違和を持つもしくはそのような診断のついた学生への対応について
①性別違和を持つ学生もしくはそのような診断についた学生の在籍状況と配慮対応について
学生が在籍している大学は、アンケート回答校のうち半数であり、配慮内容としては、通称名の使用許可、多目的トイレの使用許可、更衣室の用意、宿泊の際の部屋の相談受付、希望性別側のトイレの使用許可、学籍名簿に置行ける性別の変更等を実施していることを共有しました。
②対応部署や配慮までの流れについて
障害学生の合理的配慮の担当部署と同じ大学が半数で、他は検討中の状況でした。また、配慮に至るまでの流れは、障害学生への合理的配慮と同じとしている大学が2校で、その他多くの大学が検討中の状況でした。
③呼称の配慮に関するルール化について
実施している大学は2校で、うち1校は学内規定を整備しており、その内容を共有いたしました。
4)大学における障害者向けの設備について
①キャンパス内の設備に対する満足度調査について
障害のある学生への満足度調査については、必要に応じて不定期に行っている大学が半数でした。各大学において意見を収集するための仕組みを設けている大学は少なく、窓口として、意見箱や授業評価アンケートの設問に加えている大学の事例について共有しました。
②車いすユーザー向けの設備の充実状況について
各大学の所属キャンパスにおいて、ほぼ全ての建物がバリアフリー設計されていると回答した大学は6割でした。設備の状況としては、エレベーターの併設、車いす用スロープの設置、昇降機の設置、トイレの設置等であり、各大学の状況を共有しました。
③視覚障害者向けの設備の充実状況について
各大学の所属キャンパスにおける視覚障害者向けのバリアフリー設計の状況については、対応していない、一部のみ対応している大学が8割を占めました。設置状況としては、点字ブロック、点字案内板の回答はありましたが、ほとんどの大学において十分でないことを確認しました。
④聴覚障害者向けの設備の充実状況について
各大学の所属キャンパスにおける聴覚障害者向けのバリアフリー設計の状況については、ほぼ全ての大学が対応していない状況であることを確認しました。
開催日時:2024年12月18日(水)14:00~18:00
開催場所:
①同志社大学 今出川校地(室町キャンパス)寒梅館
学生支援センタースチューデントダイバーシティ・アクセシビリティ支援室(SDA室)
②京都大学 吉田キャンパス本部構内
教育推進・学生支援部棟学生総合支援機構 障害学生支援部門(DRC)および高等教育アクセシビリティプラットフォーム(HEAP)
参加人数:4人
主な議題:
同志社大学SDA室、京都大学DRCでの合理的配慮及びHEAPにおける活動について
活動報告:
①同志社大学訪問(14:30~16:00)
②京都大学訪問(16:30~18:00)
同志社大学、京都大学及び高等教育アクセシビリティプラットフォームを訪問し、事前にBグループメンバーより受け付けていた質問事項について、各大学担当者よりご説明いただきました。また、キャンパス内施設の見学や意見交換も行いました。
開催日時:2024年12月19日(木)13:30~15:30
開催場所:龍谷大学 深草キャンパス
参加人数:12人(内、非会員校3人)
主な議題:
①保護者が積極的に介入してくるケースの対応
②知的障害、境界知能とされる学生への対応
③障害学生支援制度の一環としてオンライン受講を認めているか
活動報告:
1.事例発表
以下のテーマに基づいて実施したアンケート結果及び各大学の現状について共有いたしました。
1)保護者が積極的に介入してくるケースの対応
保護者との信頼関係を構築するためにも意見をよく聞くことを大切にしながら、一方で学生本人と一緒に考える場を設定する等、学生本人の意思を重視する姿勢でいることを共有しました。
2)知的障害、境界知能とされる学生への対応
診断がついているが学生に告知されていない、または知的障害グレーゾーンで修学継続が難しい学生への支援や配慮について、意見交換を行いました。
3)障害学生支援制度の一環としてオンライン受講を認めているか
障害学生支援制度の一環として認めている大学は6校、認めていない大学が9校であり、認めている大学の方が少ない状況でした。オンライン受講を許可している大学の判断基準等を共有して、課題となる部分について意見交換を行いました。
開催日時:2024年12月20日(金)10:15~12:30/13:30~15:00
開催場所:龍谷大学 深草キャンパス
参加人数:12人(内、非会員校3人)
主な議題:
①車いす利用学生に対する障害学生支援について
②診断書が提出できない学生への合理的配慮の実施について
③合理的配慮のプロセスについて
活動報告:
1.事例発表
以下のテーマに基づいて実施したアンケート結果及び各大学の現状について共有いたしました。
1)車いす利用学生に対する学生生活上の支援状況について
車いすを利用している学生が在籍している大学は7割であり、うち3大学が国の制度や福祉サービスを利用している状況でした。大学が組織的に学生生活上の支援を行っている実績はなく、各大学とも教職員が個別に対応している状況を確認しました。サポート学生の活用についても体制を検討している段階を共有しました。
2)診断書が提出できない学生への合理的配慮の実施について
①診断書が提出されない状態での合理的配慮の実施について
診断書ではなく、障害者手帳や検査結果、カウンセラーの意見書等で配慮を実施している大学が6割でした。
また、第三次まとめを受け、診断書の提出がされない場合の合理的配慮の実施については、各大学ともに検討しながら対応しており、対応事例について共有いたしました。
3)合理的配慮のプロセスについて
合理的配慮の申請から提供までの業務フローについて、各大学の状況を共有しました。大学における障害学生支援担当部署や組織の持ち方に応じて会議の形態や検討メンバーは様々であり、どの大学も検討を重ねている状況でした。また、合理的配慮の申請から提供までの期間は、1週間~10日とする大学が最も多く、配慮の提供までをスムーズに行うよう各大学共に工夫している点を共有いたしました。
今年度は2024年4月の「改正障害者差別解消法」施行に伴い、私立大学において合理的配慮の提供が義務化されたことを受け、各大学における組織的な取り組みや体制整備について、その状況や課題、各大学での対応例等を情報交換いたしました。
研究会の進行方法は、研究会当日の限られた時間を有効活用するため、事例発表者は事前にレジュメを共有し、そのアンケートに会員が回答し、研究会当日はアンケート内容を踏まえたうえで議論することで、非常に詳細な情報交換を行うことができました。
障害学生支援は、各大学において担当部署が様々であり、大学の文化や組織の持ち方により支援方法が異なりますが、各大学共に改善点が多くある業務であるため、検討を重ねながら対応している状況であり、またこのような研究会で他大学と情報交換や議論をすることで、自大学の学生支援や組織形成に還元できる内容が多くあります。
研究会に参加することは研究会当日の議論のみならず、日々の業務の相談先が増えることにもつながりますので、次年度以降に会員登録を考えていらっしゃる方、実際に障害学生支援の対応に苦慮されている方は是非ご登録いただき、Bグループの研究会に参加してください。
※Bグループで取り扱う内容の特性上、個人情報保護の観点から詳細な議論内容を公表することは控えさせていただきます。
障害の表記について
Bグループ活動報告における「障害/障がい」の表記については、法律上の表記に従い、「障害」に統一しております。