学会発表には大きく分けてポスター発表と、口頭発表の2種類があります。ポスター発表とは、読んで字の如く、研究内容を1枚のポスターにまとめ、それを使って1人から数人のオーディエンスに向けて発表するものです。学生や若手研究者が初めて学会発表する場合には、口頭発表よりポスター発表のほうが多いかもしれません。ここでは、その準備の方法を説明します。
ポスター発表とは、プレゼンテーションの種類の一種です。自分の研究をポスターにまとめ、少数の聴衆に発表するものです。大学生や大学院生、あるいはその分野の駆け出し研究者であれば、おそらく他のタイプのプレゼンテーションではなくポスターセッションで発表する機会が多いと思われます。
ポスター発表場所は教室や会議室とは限りません、廊下やホールなど様々な場所で行われる可能性があります。パネルやボードに自分のポスターを張り出します。また、ポスターは学会やイベント期間中には張り出されたままになります。その中で指定された時間に自分のポスターの前に待機して説明を行います。
自分の発表時間では、近づいて来る人に話しかけたり、ポスター内容を説明したり、質問に答えたりします。大勢の聴衆の前での発表と違って、あまり緊張せずに研究について話したり、情報交換を行ったりすることができます。
ポスター発表
口頭発表
ワークショップ
シンポジウム/パネルディスカッション
ポスター発表と他のプレゼンテーションの違いは、オーディエンスの人数が少ないことが一番の特徴です。一度にポスターの前に集まった1名~数名がオーディエンスです。そのためコミュニケーションが双方向になり、口頭発表よりもフレンドリーな雰囲気になります。また、ポスターそのものに情報を的確かつ簡潔に盛り込むことが求められるため、準備が他の発表より若干異なります。以下の3つの段階があると考えてください。
準備は以下の3つの段階を経ます。
内容決定とアウトライン、要旨作成:
まずポスター発表する内容を絞り込みます。アウトラインを決めてポスターにする材料を集めます。口頭発表と同じ要領でストーリーを考えて、パワーポイントを作成しておきます。口頭発表と同様に、発表申し込みをする際に必要な、アブストラクトを作成します。発表する学会の規程に沿って作成します。
ポスターデザイン作成、印刷:
応募する学会指定の大きさと体裁に沿って1枚のポスターを作成します。A0が最も大きく、A1が次のサイズです。横向きか縦長かも注意します。パワーポイントで設定ができますので、それに沿って作成をします。大型プリンターで印刷するか、あるいは外部の印刷サービスに発注します。
話す原稿作成(必要な場合):
目の前に資料としてのポスターが貼られていますが、ポスターに全ての情報が網羅されているわけではありません。準備段階で、話す原稿やメモを作成して、それを使用した発表練習を行います。
ポスターをボード(通常は指定されたもの)に貼り、ポスターのそばに立ちます。オーディエンスが近づいてきたらポスターを使って研究内容を説明します。ノートパソコンや配布資料など、ポスター以外のものを補助的に使うこともできます。
ポスターは、一定期間貼りっぱなしになっていてコアタイムには発表者が説明を行うことになっている場合が多いのです。そのため、発表者がいなくても内容がある程度伝わるポスターにする必要があります。ポスターデザインの決定はポスター発表の中で最も重要な要素の一つです。読みやすさ、明確さ、理解しやすさを考慮する必要があります。ポスター作成には最低限パワーポイントがあれば作成できますが、Adobe Illustrator、Apple Pages、Microsoft PublisherなどのDTP(デスクトップ・パブリッシング)ソフトウェアを使用するとさらに見栄えが良いポスターを作成できます。この章の最後に実際に使われたポスターを参考例として表示しています。下記のポイントを確認してみましょう。
テキスト
サイズ:タイトル>セクション名>本文>サブテキスト/キャプション
テキスト量は最小に
サイズはできるだけ最大に
セクション分け/ゾーニング
セクションの分類
理解のための一貫したレイアウト
上から下へ
中央から周辺へ
カラー
色が多い=わかりやすいとは限らない
意味のある色の使い方
画像/図/表
データをより理解しやすくするために、画像、図、表などの視覚情報を使用する
背景画像は、テキストと重なって見にくくならないよう注意する
大型のポスターはA0を最大として、以下のサイズがあります。いずれも大型カラープリンターで印刷します。
A0サイズ(縦841×横1189mm)
A1サイズ(縦594×横841mm)
A2サイズ(縦420×横594mm)
推奨フォントサイズ
フォントの大きさと種類は見やすいものを選びます。
タイトル 60-72 pts
見出し 36-48 pts
本文 26-30pts
参考文献、キャプション 12-14pts
オンラインポスターセッションの場合は、PowerPointで横長のポスターを作成し、PDFに変換します。
こちらは本ウェブサイトの背景研究についての発表の際に実際に使われたポスターです。参考にしてポスター作成を行ってみてください。
1. 説明の練習
少なくとも数回は練習しましょう。ポスターセッションでは原稿を読まないのが理想的です。書いてある情報を全部読みあげる必要はありません。3~5分程度を目安に、全体を説明する練習をしましょう。自分の発表をビデオに撮り、声のトーン、スピード、話し方、イントネーション、ジェスチャー、姿勢などをチェックすることをお勧めします。
ポスターに近づいてきた人には積極的に話しかけましょう。以下のようなフレーズを使って声をかけます。
"Hi, May I present my poster?" ご説明しましょうか。
"Hi, thank you for stopping by. Do you have any questions? " 立ち寄っていただきありがとうございます。何か質問はありますか。
2. 質疑応答の準備
オーディエンスは、スピーチ形式の発表よりも気軽に、ポスターについてコメントを述べたり質問をしてくるでしょう。事前に質問を想定しておいて、それに対する答えを用意しておきましょう。尋ねる人はあなたの分野にあまり詳しくないかもしれません。相手の表情や反応を見ながら、あるいは相手から質問されたら、わかりやすい言葉で説明するよう心がけましょう。
<Sample Questions> Try to answer these questions.
Q1. Hi, nice poster! Could you explain the main purpose of your poster?
A1:
Q2. What were the difficulties that you faced in this study?
A2:
<質問例>以下の質問に答えてみてください。
Q1. こんにちは、素敵なポスターですね! このポスターの目的を教えていただけますか?
A1:
Q2. この研究で苦労したところは何ですか?
A2:
1. リアルタイム配信
Zoomなどを使用してオンラインでリアルタイムで発表を行う形式です。この場合には、ポスター発表と言えども、実際にはパワーポイントを利用した口頭発表と同じであったり、ポスターにまとめたスライドを示しながら説明を加える形式になります。
オンライン発表の良い点は、対面に比べると緊張せずに発表できるという点や、資料が画面共有できるため参加者は自分のディバイスでそれを閲覧できるという点があります。しかし非言語のコミュニケーションがないために、オーディエンスの反応が即時にわかりづらく、WiFi環境や使用するオンライン会議ツールの不具合などの技術的問題が起こる可能性があることが難点です。
2. 発表ビデオの事前作成と提出
オンライン学会、あるいはハイブリッド学会の場合には、ポスター発表を録画したデータを事前に提出することになる場合が多いのです。発表は以下の方法で録画をすることができます。
PPTのスライドショーの記録機能を使う。
何度でも練習して、制限時間内にまとまるようにします。特にキーワードの発音は機械翻訳やワードの読み上げ機能などを利用して正確に、自信を持って発音できるようにしましょう。
Zoomの画面共有機能を使って資料を提示しながら録画する。
これも何度でも練習が可能で、あまり急ぎ過ぎないように注意しながら録画します。Zoomでは録画を確認する際にtranscript が出ますので、それで自分の英語が通じているのか確認が可能です。
スマートフォン/ビデオカメラでプレゼンテーションを録画する。
ポスターを壁などに貼りその前に立って発表を行う様子をビデオ撮影します。ジェスチャーや指示棒などの使用により臨場感を出すことが可能です。