カーボンニュートラルエネルギーとして,バイオマス資源の利用が注目されています.特に,山口県は,未利用竹の賦存量が多いものの,そのカロリーは石炭の半分程度であるため,積極利用に至っていないのが現状です.本研究では,竹に高カロリーの廃プラを混ぜることで固体燃料生成の研究を行っています.
竹資源のエネルギー利用が進まない理由の一つとして,燃焼灰の融点が低いことが上げられます.この低融点物質は,クリンカーとよばれる灰塊を生成させ,燃焼トラブルの原因になるほか,熱交換器の付着によって熱効率を低減させることが知られています.本研究では,竹以外のバイオマスを混焼させることで灰融点の上昇を目指しています.
バイオマス資源がエネルギー資源として普及するにつれ,生成される燃焼灰も増加傾向をたどり,その有効利用方法が検討されつつあります.廃プラスチックはカロリーが高いという特徴を持つものの,ポリ塩化ビニルなどの塩化物を含むため,燃焼によってダイオキシンの発生原因になるほか,配管を腐食させる原因にもなります.本研究では,燃焼灰+廃プラによって,脱塩された高カロリー燃料の生成を目指しています.
半導体や切削工具の表面改質において,気体原料から固体膜を生成させる化学気相蒸着法による薄膜生成が注目されております.本研究では,電気炉を用いた薄膜生成実験を実施し,その生成メカニズムについて,化学分析,物質移動モデルによる反応速度の決定および熱流体を考慮した数値シミュレーションを実施しています.
水素は燃やしてもCO₂を出さないクリーンなエネルギーですが、燃焼時に「燃焼振動」という強い振動が発生し、部品にダメージを与える可能性があります。この問題を解決するため、燃焼振動がどのように発生するのかを実験やシミュレーションで調査し、予測モデルを構築しています。実験では、水素を燃料とした燃焼器を用い、圧力変動や火炎の挙動を精密に測定します。さらに、シミュレーション解析を活用して、燃焼の様子を再現し、振動が発生する条件を特定します。安全で安定した水素エネルギーの利用を目指して、未来のクリーンなエネルギー技術の発展に貢献します。
日本機械学会研究ストーリー「燃焼特性にこだわって振動解析をしてみる」 (PDF)
病院は災害時でも電気や水が必要不可欠な施設です。しかし、大地震や台風で停電が起こると、医療機器が使えなくなり、患者さんの命に関わることもあります。そこで、病院のエネルギーを確保し、停電時でも業務を継続できる方法を研究しています。停電時のエネルギー利用状況をデータ科学や人工知能によって予測し、非常用発電機や蓄電池を効率的に使う方法を探ります。この研究は、地域の病院のご協力のもと行い、実測されたデータをもとに行っています。この研究が進めば、病院だけでなく、災害時に避難所となる学校や公共施設のエネルギー管理にも応用が可能です。
オペレーションズリサーチ学会誌特集記事「災害拠点病院を対象とした災害時事業継続性向上のための分散型電源導入量の最適化」 (PDF)
発電所や工場では、多くの配管が複雑に組み合わさり、効率よく配置することが重要です。しかし、人の手で設計すると時間がかかり、経験や勘に頼る部分も多くなります。そこで、AIを活用した「多目的最適化」によって、最適な配管ルートを自動で設計する技術を開発しています。例えば、「配管の長さを短くする」「地震に耐える」など、さまざまな条件を同時に考慮し、最も優れた配管レイアウトを提案することが可能です。この研究が進めば、プラントの設計がより速く、効率的になり、安全性の向上やコスト削減にもつながることが期待されます。
自動車のエンジンには、「ターボチャージャー」と呼ばれる装置が搭載されることがあります。これは、排気ガスのエネルギーを利用してエンジンに送り込む空気を圧縮し、より効率的に燃料を燃やすことでエンジンのパワーを向上させる技術です。しかし、ターボチャージャーの内部では摩擦や熱によるエネルギー損失(機械損失)が発生し、性能に影響を及ぼします。そこで、ターボチャージャーの軸および軸受周辺で発生する機械損失をより正確に予測するモデルを構築しています。この研究により、より効率的なターボチャージャーの設計が可能となり、燃費向上やエンジンの性能向上につながります。 次世代のクルマの開発に貢献する最先端の研究です。