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こんにちは!元不登校男子の母・オヤタケです。
この「先生のページ」は、受け持ちの不登校生徒への対応に悩む学校の先生方を応援する目的で作りました。
不登校になる生徒が年々増え続ける中、コロナ禍によってオンライン授業などの新しい取り組みも始まり、丁寧に対応したくても他の業務に追われて余裕がない、という先生もいらっしゃるかもしれません。
このページでは不登校に関する基本情報の他、不登校経験者の声や学校での対応のヒントとなるような書籍やウェブサイトの紹介、不登校生徒の進学先として選ばれることの多い通信制高校等の情報をご紹介しています。新しいページのため情報量はまだ少ないですが、これから少しずつ増やしていきますのでぜひご覧ください!
すでにご存じの先生も多いかと思いますが、少子化の中で子どもの数は減少傾向なのに、不登校生徒数は増え続けています。
しかし、これは「完全不登校」(病気、経済的理由を除く年間30日間欠席)の人数であり、日本財団が行った調査では、保健室登校などの「不登校傾向」の生徒数は中学校だけで推計33万人以上としています。また、同じ調査で「小学生当時に不登校傾向だった」と答えた中学生の割合は、中学校での不登校傾向の割合よりも高いという結果も示されています。
全体としては、小中学生の不登校生徒数に不登校傾向の生徒数を推計値も含めて計算すると、不登校や不登校傾向の生徒は、近い将来、小中高合わせて100万人に近づく可能性すらあります。文部科学省も「不登校児童生徒数が8年連続で増加,約55%の不登校児童生徒が90日以上欠席しているなど,憂慮すべき状況」としています。(文部科学省『令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要』より)
学校の先生にとって、登校しない子どもたちの声は届きにくいこともあるかと思います。「甘えている」「なまけたいだけ」「過保護」「学校に来てしまえばなんとかなるのに」…といったお考えの先生もいらっしゃるかもしれません。
不登校の子ども達は誰かを困らせたくてやっているわけではなく、自分の心、大げさな言い方ですが命を守るために必死であり、その親の多くもまた、我が子を守ろうと懸命です。私もある時、「学校中にモンスターペアレントと思われても構わない。我が子の人生は親の私が守るしか無い」と悲壮な覚悟で学校との面談に臨んだことがあります。それほどまで、一人の子どもを理解し支える姿勢が家庭と学校で乖離してしまうのが、不登校問題の解決の難しさの一つだと考えます。
不登校の子ども達が家でどんな生活をし、どんな願いを持っているのか、登校はしていても辛い思いを抱えたまま教室にいる子たちの葛藤、そうした子どもたちを日々見守る保護者の苦悩や家族が抱える課題を、私達の知りうる限りではありますが、ここでご紹介したいと思います。
近年、不登校に関する法律や制度の変更が続いています。
不登校児の「休養の必要性」を記した教育機会確保法(2017年)に続き、2019年10月に出された文部科学省の新しい通知では、それまでの学校復帰のみを目標としていた方針を、「「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく,児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて,社会的に自立することを目指す必要がある」と変更されました。
文科省の方針変更は、学校復帰が生徒のためだと信じてきた先生方にとっては大きな方向転換であり、「今までの話は何だったんだ」と納得がいかなかったり、学校に来ない生徒をどのように支援してよいのか迷う先生もいらっしゃるかもしれません。しかし、私の経験や周りの話を聞く限りでは、不登校児の体調や心情に配慮し、登校や学習を無理強いしない対応にするだけでも、多くの親子はかなり精神的に楽になるだろうと感じます。そうした対応の先に、笑みの間ミッションにもある「生徒、保護者、先生がリスペクトしあえるやさしい対話」が生まれてくれればと願っています。
(これらの法律については、下記「1.不登校の基本情報」に掲載しております。)
不登校の原因は様々あり、しかも多岐にわたることが多いと言われています。毎年行われる文科省の調査では、不登校の原因について学校を対象とした調査が毎年行われています。その調査では、大きな原因の一つとして、まず「家庭に係る状況」(37.6%、H30)、次いで「いじめを除く友人関係をめぐる問題」(27.8%、同)と、学校や教職員とは別の原因が大きいとする結果が出続けています。
一方、「教職員との関係をめぐる問題」は3.1%、「いじめ」はわずか0.6%となっています。しかし近年、文科省以外のやり方で行われた自治体や民間の調査によって、生徒と教職員の関係が不登校と深く関わっていることを示す結果も出てきています。
長野県が行った調査(2019年)によると、不登校の原因として最も多く挙げられたのは「担任との関係」(27.4%, 小中高1対象)でした。これは文科省の調査結果から大きく乖離しています。また、2019年に行われたNHKによるLINE調査の結果も「担任との関係」と答えた人が23%と、長野県の調査と近い数字です。これほど結果が違うのは、文科省の調査対象が学校であるのに対し、長野県とNHKの調査は不登校当事者の声を直接反映させているからだとする指摘が専門家から出ています。
こうした中、2020年度中に文部科学省は「不登校経験のある生徒とその保護者」を対象とした調査を実施しました。内容を見ると、
こうした数字を見て「学校は終わってる」「教師失格」と勧善懲悪で考える前に、なぜ教職員との関係に子どもたちが深く悩み不登校に至るのか、大規模かつ詳細な調査が必要だと思います。
(上記の調査については、下記「1.不登校の基本的情報」に掲載されています。)
私は保護者の一人に過ぎないので、先生方に具体的なアドバイスはできませんが、一つの例としてお話しできるエピソードがあります。
息子のコタケが小学生の頃、完全不登校に近い状態のまま迎えた新年度に、ある若い先生(星野先生・仮名)が息子のクラス担任になりました。星野先生は息子に登校するよう求めることはせず、息子が教室で感じる不安について電話で相談にのってくれたり、たまに学校に行った時には忙しい中でも必ず時間を作って、保健室で息子の気持ちを丁寧に聞いてくれる先生でした。また、息子がクラスメートから心無い言葉をかけられて落ち込んでいると、その日のうちに解決するよう対応し、「なにかあったら先生が助けてくれる」という安心感を息子の心にもたらしました。さらにクラスメートのお子さんたちが休みがちな息子を温かく受け入れられるよう細かい配慮もしてくださいました。
また、学年主任の先生と共に、「コタケくんに会ったら声かけをしてあげてください」と他の先生方に協力を求めるなど、教室以外の場所でも心を砕いてくださっていたそうです。こうした星野先生と周囲の先生方の理解と支えを受けて、息子はその年度の2学期から3学期にかけて、ほぼ毎日教室で過ごし、明るさを取り戻すことができました。
ちなみにその翌年度は先生が変わり、対応も大きく変わってしまいました。苦手な子とグループを組まされたり、誰かの言葉や態度に傷ついたことを伝えても「相手の子はやっていないと言っています」と受け止めてもらえず、次第に完全不登校の状態に戻ってしまいました。その状態は卒業まで続きました。
星野先生の思いやりのある姿勢はクラスメートのお子さんの中にも生まれ、息子は卒業するまで様々な場面で多くのクラスメートから親切に接してもらい、助けられたり、励まされたりしました。こうした思い出は、どんな薬よりも長く、強く、息子の心を癒やしてくれています。
この一年間の経験は息子の自信にもつながり、教室で学ぶ意欲を取り戻させました。次の学年で再び不登校になりましたが、星野先生との一年間の経験は、その後の辛い日々の中でも息子が自分を信じる力となりました。親としても大いに支えられたことに、今もとても感謝しています。
・統計調査
◎「令和元年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」 文部科学省
◎「増える不登校 27人に1人の現状直視を」2019/12/2 西日本新聞
◎ 「不登校傾向にある子どもの実態調査」日本財団
不登校に関する最近の調査報告。不登校児が16万人(小中)に増えたことや、不登校傾向の生徒が33万人以上(中学のみ)いるという内容が掲載されています。
・不登校の原因調査(文科省、長野県、NHK)
◎長野県 第2回不登校児童生徒への支援の在り方懇談会 参考資料
◎「不登校、その先を考えてほしい」NHK 2019年8月 *不登校に関するLINE調査に関する記事
◎「不登校調査は学校介さず…来年度数百人聞き取り」読売新聞 2019年8月19日
・不登校に関する記事
◎『小中不登校18万人 過去最多、7年連続増―文科省・問題行動調査』 時事ドットコムニュース 2020年10月22日 NEW!
◎『社説[コロナと不登校]急増に「危機感」もっと』 沖縄タイムス 2021年7月12日NEW!
◎文部科学省通知 2019年11月 「再登校のみではなく、社会での自立を目指す」
文部科学省が2019年11月に出した通知について。学校の不登校対応で長年堅持されてきた「学校復帰」を目指す方針から、再登校のみではなく、「社会での自立を目指す」へと方針が変更されました。
【文部科学省の通知からの抜粋】
「…1 不登校児童生徒への支援に対する基本的な考え方
(1)支援の視点
不登校児童生徒への支援は,「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく,児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて,社会的に自立することを目指す必要があること。また,児童生徒によっては,不登校の時期が休養や自分を見つめ直す等の積極的な意味を持つことがある一方で,学業の遅れや進路選択上の不利益や社会的自立へのリスクが存在することに留意すること。…」
(全文はこちら)
◎教育機会確保法
お子さんが「学校に行けない」となった時に、必要に応じて休ませる、という考えが広がっています。そうした「休養の必要性」は下記の教育機会確保法と呼ばれる法律によって認められています。なお、この法律は検討段階から賛否両論があります。
「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律の公布について(通知)」文部科学省
通知文に、「児童生徒の意思を十分に尊重して支援が行われるよう配慮すること,不登校というだけで問題行動であると受け取られないよう配慮すること,例えばいじめから身を守るために一定期間休むことを認めるなど児童生徒の状況に応じた支援を行うことなどの附帯決議が付されています」と記されています。
文部科学省は2021年の秋に2つの不登校に関する調査結果を公表しました。
一つは毎年学校・教育委員会を対象に実施されている「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(以下、学校対象調査)、もう一つは当事者を対象とした調査「令和2年度不登校児童生徒の実態調査」(以下、当事者対象調査)です。
この2つの調査結果を比較したものが左のグラフです。(学校対象調査は小中学校の平均値を使っています。)
学校対象調査ではいじめや先生との関係が原因とする回答は1%前後と極めて少ないのに対し、当事者対象調査では「学校に行きづらくなった理由」という質問に対し、「いじめ(いやがらせやいじめがあった)」と回答したのは小学生で23.0%、中学生で16.2%、「先生のこと(先生と合わなかった、先生が怖かった、体罰があったなど)」と回答したのが小学生27.0%、中学生25.3%となっています。文科省がこれまで毎年行ってきた学校対象調査の結果を踏まえて、各自治体が不登校支援策を検討したり、研究者が分析の土台としてきたことを考えると、実態を適切に把握できないままこれらの調査結果が学校や社会に与えた影響は小さくないと私は考えます。
さらに、学校対象調査では不登校の原因を生徒の「無気力」とする回答が5割近くに上り、全回答項目で最多となっています。当事者対象調査の回答に「無気力」が含まれていないため単純な比較や分析は難しいですが、この結果によって一部の学校や教員が不登校の理由について、「本人の心の問題」と捉えて対応している可能性も考えられます。
ただ、今回公表された当事者対象調査は対象者が絞られており、さらに回答率も10%前後と低かったことから、今回の調査結果で不登校の全体像がわかったとは言い切れないと私は思います。「調査期間中(約1ヶ月間)に学校または教育支援センターに登校・通所しアンケート用紙を受け取った生徒」しか回答できない条件設定が、何の影響もないとは考えにくいとも思います。調査実施期間中に登校も通所もできなかった完全不登校状態の子ども達の声は反映されていないため、調査結果に偏りが生まれてしまっている可能性もあります。あらゆる状況の不登校生徒やその保護者の声が集まるような調査分析が望まれます。
なお、文部科学省は令和4年度概算要求の「いじめ対策・不登校支援等総合推進事業」(要求・要望額104億円)の中に、「いじめ・不登校等の未然防止に向けた魅力ある学校づくりに関する調査研究」(365百万)を盛り込み、その一つとして「…不登校の未然防止等に向けた校内型適応指導教室、スクリーニング、経済的支援の在り方等の調査研究」を掲げています。
引用・参考資料
「令和4年度概算要求のポイント」 文部科学省HP
「不登校児童生徒の実態把握に関する調査報告書」 不登校に関する調査研究協力者会議(第1回)配付資料 文部科学省HP
学校でのいじめをテーマとした様々な情報や実態を紹介するウェブサイト・書籍をご紹介しています。
◎「いじめと君」朝日新聞
朝日新聞DIGITALが「いじめと君」というトピックで、不登校を支援する医師やいじめ被害経験のあるタレント、ジャーナリストなど、様々な立場の人たちから寄せられたいじめに悩んでいるお子さん向けのメッセージを掲載しています。不登校やいじめ経験のある方も執筆されていて、不登校の生徒の気持ちを理解する助けになるかもしれません。
この特集は本にもなっています。
◎『完全版 いじめられている君へ いじめている君へ いじめを見ている君へ』朝日新聞社編 朝日新聞出版 2012年
◎「STOP自殺 #しんどい君へ」 読売新聞
上記の朝日新聞と同様に、現在テレビなどで活躍されている方で、子どもの頃にいじめ被害にあった方々のインタビューです。子どもへのメッセージだけではなく、被害者としての実体験が詳しく語られているものもあります。いじめを受けた経験のあるお笑い芸人ジャングルポケット・斎藤さんのインタビューが大きな反響を呼びました。斎藤さんはいじめられている子の質問に答えるコーナーもあります。
◎『斎藤環さんに聞く「治癒できる『いじめ後遺症』」』2012年12月21日 朝日新聞
いじめによる心の傷からの回復に関する専門家のインタビュー記事です。筑波大学の斎藤環教授は引きこもりの支援を積極的に取り組まれていて、一般向けにも多くの著書を出されています。不登校にもとても詳しい先生です。このインタビューでは、学校を卒業していじめられなくなっても、心に負った傷が後遺症のように被害者の人生に及ぼしうる深刻な影響について語られています。いじめによる深いトラウマに対して、卒業後は学校からも教育委員会からもサポートがなく、被害者は自身の心の痛みに一人で向き合わざるを得なくなります。学校がいじめの加害者に毅然と対応し、どれだけ被害者を丁寧にケアできるかは、卒業後の被害者の長い人生にとって大変重要です。一人で孤独に心の傷に向き合うしかない被害者の実情もぜひ知っていただきたいです。
◎『いじめのある世界に生きる君たちへ ーいじめられっ子だった精神科医の贈る言葉』中井久夫著 中央公論新書 2016年
いじめについてはその構造について語られることが多いですが、この本はいじめられている子の過酷な心理状態を中心に書かれています。いじめられている子の行動を見ただけでは理解できない心のありさまを、わかりやすく丁寧に解説しています。中井氏は、いじめのプロセスを「奴隷にしてしまうプロセス」と述べています。過激な言葉に見えますが、実際にこの本を読んでその残酷さに戦慄を覚えました。この紹介文を書くために改めて目を通そうとしましたが、読んでいて苦しくなり、何度も本を閉じてしまうほどです。
中井氏は本の中で、『この世に、いじめ方を教える塾があるわけではありません。…一部の家庭と学校は、懇切丁寧にいじめを教える学校といえそうです。』と述べています。「学校は小さな社会であり、学習だけではなく社会性も身に着けるところだから、なるべく登校したほうがいい」と言う人がいますが、「いじめは決して許さない」と加害側の生徒に毅然と対応しない大人たちの姿は、子ども達に社会の何を学ばせてしまうのか…想像すると怖くなります。一方、「なぜ加害者は普通に学校に通って友だちとも遊べるのに、被害者の自分は安心して教室に入れないままにされているのか」という被害側の子どもの怒りと苦悩を置き去りにし、被害者が不登校になることで表面的に静かになった教室をどんな空気が支配するのか。いじめがもたらす深刻な問題と大人の責任について、やさしい語り口ながらも私たち大人に強く問いかけてくる内容です。子ども向けに書かれた本ですが、ぜひご一読ください。
◎『こども六法』 山崎総一郎 著 弘文堂
大ヒットしている子どものための法律本。すでに読まれた先生も多いかと思います。
表紙のイラストもほのぼのと可愛くて、説明も子どもに語りかけるようなわかりやすい言葉で書かれています。しかし、そこで扱われている内容の多くはいじめなどの深刻な問題につながっており、真っ先に大人に読んでほしい本でもあります。
全国の多くの学校内で起きている生徒間、教員から生徒に対するいじめ・体罰の多くは、学校の外に一歩出たら犯罪であるにもかかわらず、その解決と被害者の擁護に消極的な学校の対応がまだ見受けられます。繰り返される悲劇を前に、私は大人が「いじめの発見や解決は難しい」と諦めてはいけないと感じています。また、生徒から教員への暴力の問題についても、広く学校内暴力の問題として捉え、改善・解決に向けて学校のみならず、社会が積極的に考えるべき課題だと思います。第七章では「いじめ防止対策推進法」のわかりやすい解説があります。最後の「いじめられているキミへ」「大人向けのあとがき」も必読です。
◎こども六法 公式サイト *第七章と「いじめられているキミへ」が無料公開されています。
◎『健康ライブラリー イラスト版 子どものトラウマがよくわかる本』白川美也子 監修 講談社
この本では子どもが抱えるトラウマについて解説しているだけでなく、支援者側が理解すべきこと、望ましい対応や配慮についてまとめられています。原因別には虐待、DV、いじめ、災害、死別等、また多様な症状についてもわかりやすく解説されています。子どものトラウマは学校では対応できないとお考えの先生もいらっしゃるかも知れませんが、トラウマからの回復には学校の先生方の理解と協力は非常に重要です。学校に望まれる対応や、学校で友達を突き飛ばしてしまった子を巡る問題をトラウマという観点で状況を理解する事例が紹介されています。また、著者の白川氏はコラムの中で「教員の肯定的な態度は、逆境を生きる子どもにとって大きな力になります」と述べています。子どもと日々接する立場にある先生方にもぜひお読みいただきたい本です。
「不登校重大事態に係る調査の指針について(通知)」文部科学省
いじめにより相当期間(おおむね1ヶ月を目安)欠席を余儀なくされているとの疑いが認める時、学校や設置者が調査を行うための指針が文科省から出されています。この調査は加害生徒の処罰というより、いじめ被害により不登校になった児童の学校復帰の支援と再発防止を主な目的としています。しかし、いじめ被害を受けた子が、自分がいじめられた時の様子や原因を先生方の前で詳しく語るのは大変なプレッシャーです。記録を取ろうとして取り調べのようになってしまうと、余計に傷ついてしまうかもしれません。コタケもいじめのエピソードは、養護教諭の方にぽつりぽつりと話すのが精一杯でした。なお、文科省の指針には「聴取にこだわらない」と明記されています。
学校によって不登校生徒の欠席連絡を保護者が毎朝するルールの学校があります。欠席連絡用のインターネットシステムで連絡できるところもあるそうですが、こうした小さな手続きが多くの保護者にとって苦痛となっています。
電話一本がそんなにツライの?と思われるかもしれませんが、保護者の心情としては「我が子が学校に行かないという現実をイヤでも思い知らされる」瞬間です。さらに、朝起きると子どもが学校に行くかどうかを不安を感じながら見極め、「学校は(今日も)お休みします」ということを学校の先生に毎朝連絡するプレッシャーはチリツモで重くなっていきます。これが数日後には終わるとわかっていたらそこまで辛くないかもしれませんが、不登校の場合いつ終わるかわからないですから、学校との朝のやり取りに次第に心が削られて、大きな苦痛を感じてしまう人が少なくありません。また、その時の学校側の対応が厳しいものだと、保護者は精神的にさらに追い詰められ、苦しんでしまうのです。中には学校との関わりを避けるようになる親の方もいます。。
息子の学校では連絡方法を最初の時に学校と相談させていただき、「登校する前に電話する」というルールでスタートしたため、この点の心の負担はかなり軽かったです。学校によってルールは様々だと思いますが、毎朝出欠を連絡、と最初から一択にせず、保護者と相談して決めていけるような柔軟な対応がより多くの学校で行われると、多くの不登校の保護者の負担が軽くなり、親の精神的な疲弊もその分軽くできるのではないかなと思います。
発達障がいについては先生方の方が詳細をご存知かもしれません。ここではわかりやすい当事者の体験談や学校での対応のヒント等が掲載されているウェブサイトをご紹介致します。
◎子ども情報ステーション by ぷるすあるは NPO法人ぷるすあるは
精神しょうがいや発達の特性等に関する様々な情報を発信しているウェブサイト「ぷるすあるは」。その中にある「学校の先生方へ」というページは小学校の先生や養護教諭の方が担当しており、発達に特性がある生徒への接し方や保護者の心情などを、かわいいイラストを使いながら先生ならではの場面を例にあげてわかりやすく解説しています。サイト内には精神疾患や障碍、心の不調、ヤングケアラー、相談や支援につながる情報もあります。サイトのコンセプトは「『子ども情報ステーション』は、精神障がいやこころの不調、発達凸凹[デコボコ]などをかかえた親と、その’子ども’を応援するためのサイト」。読んでいる側が励まされる内容です。
NHKの福祉情報総合サイト「NHKハートネット」内の発達障がいに関するページです。NHKは総合、Eテレの両方で発達障がいについて番組等で情報発信をしています。ハートネットでは発達障がいの他にも知的障害、精神疾患など様々なテーマの情報が掲載されています。また、ページ下の方には発達障がいに関するNHKの他の特集サイトへのリンクもあります。
特集サイトには、発達障がいの子供達の頭の中を想像し理解するのを助ける情報もあります。ただ、不登校に関する記述は、実際には様々な要因・背景がありサイト内の解説に当てはまらないケースもあるのでは、と個人的には思います。
◎カナロコ【ひとすじ】「字が読めないからこそ 恐竜学者・ジャック・ホーナー」 2014年7月21日 神奈川新聞
ディスレクシア(識字障がい:学習障がいの一つ)を持つ恐竜博士ジャック・ホーナー氏のインタビューです。ジュラシックパークの主人公の博士のモデルにもなった人で、学習障がいやディスレクシアを理解する上でもおすすめです。インタビューの中で、ホーナー博士は幼いころに父親から「お前の人生は終わっている」と言われたことを、目に涙を浮かべながら語っています。一方で、博士の母親が支え続けたことで、文字が読めないために様々な壁にぶつかりながらも恐竜の研究者としての道を拓いていきます。学校の中でみんなが当たり前にできることが自分だけできない、字が読めない、書けないことを子どもが自ら認め、大人に伝えるはとても勇気のいることだと思います。ぜひ多くの先生方にこうした子どもたちを支える側に立っていただき、子どもに安心と希望を与えてほしいと願います。ちなみに、ホーナー博士が恐竜の監修をした映画「ジュラシックパーク」の監督スティーブン・スピルバーグもディスレクシアなんですよ。
◎「なぜ女子の発達障害は、大人になるまで発覚しにくいのか」岩波 明(昭和大学医学部精神医学講座主任教授) 2020年6月3日 ダイアモンドオンライン
小さなお子さんの発達障がいの一つとして、ADHDとASDがありますが、これらは男の子に比べて女の子はその傾向が目立ちにくく、大人になってから診断を受けるケースも出てきています。こうした実態の背景について、医学的な話だけではなく、日本の男女の性別役割分担などの視点からも解説されています。
◎「ようやく手に入れた「識字障害」という名の止まり木 勉強がまったくできない落ちこぼれが、落語家になって」婦人公論 2019年11月08日
落語家・柳家花緑さんがご自身の発達障がいのご経験を楽しくユーモラスに語っています。幼い頃は自身を落ちこぼれと捉え、成人して識字障害に気づくまで学校や生活のさまざまな場面で苦労されてきたそうです。落語家になってから、識字障害のお子さんを育てている人に「識字障害では」と言われた時は不快に感じられたのが、その後「はたと立ち止まる気持ちに」なり、ご自身で調べて確信された時、「受け入れたとたん、ものすごく大きな変化が起きました。わずか数年前まで、自分はダメだ、できないんだと思っていたのが、そうではない。識字障がいのせいだったのだとわかった時の安堵感。精神的にものすごくラクになりましたし、恥ずかしさがなくなりました。」というエピソードが印象的です。まだ幼い子が言葉で表現することが難しいディスレクシア当事者の気持ちを知る一助となるお話です。
◎「知ってほしい! 起立性調節障害のこと」 NHKハートネット
朝が苦手で起きられない、立ちくらみがある、頭痛がするなどの症状があり、朝からの登校が困難になって不登校になるお子さんもいます。日本小児心身医学会によると、中高生の約10%が起立性調節障がい(OD)であると推定されています。40人クラスであれば、4人もいることになるのですが、これほど多いのに一般的にはまだあまり知られていません。この疾患を知らない人からは「早起きが苦手なだけ」「気の持ちよう」などと理解されず、お子さんがさらに辛くなってしまうケースもあるため、まずは正しい知識に基づいた周囲の理解が望まれます。これは疾患であり、気合いや根性論では解決しないということが、学校側にもじゅうぶん理解されていないことがまだあるようです。生徒が朝起きれずに遅刻した理由が単なる夜ふかしからの朝寝坊なのか、起立性調節障がいによるものなのかは「遅刻」という事実だけでは判断できないと思います。ぜひこうした疾患が隠れている可能性があることを意識して対応いただければと思います。
◎「こころの病克服体験記 ODになった娘」こころの耳HPより 起立性調節障害(OD)の事例を紹介しています。
◎「小児期発症慢性疾患を有する患者の成人期移行に関する調査報告書」日本小児科学会HPより 「14.日本心身医学会」に「起立性調節障害」(114p)の調査報告があります。
◎『子どものミカタ 不登校・うつ・発達障害 思春期以上、病気未満とのつきあい方』山登敬之 日本評論社 2014年
不登校の相談をしに心療内科などのクリニックを訪れたことがある人もいると思います。この本では医師という立場から、不登校のほか、思春期特有の様々な心の不調について精神科医の山登氏が事例を用いて解説しています。どのお子さんに対しても温かい眼差しを持って書かれていて、思春期の子どもとかかわりがある大人が知っておきたい疾患の知識やアドバイスが書かれています。山登氏が参加した文部科学省による不登校児の「その後」を調べた調査についても触れています。
ヤングケアラーとは「家族にケアを要する⼈がいる場合に、⼤⼈が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情⾯のサポートなどを⾏っている18歳未満の⼦ども」としています。(厚生労働省のホームページより)
ヤングケアラーの子どもたちは、その悩みを他の人に話すことができずに一人で抱え込んでいることもあり、また不登校の子どもたちの中にもヤングケアラーが存在すると言われています。令和2年度の厚生労働省の調査では、中学2年制の5.7%、約17人に一人がヤングケアラーの状態にあることがわかりました。また、高校生でも、全日制の4.1%、定時制の8.5%、通信制では11.0%の生徒が家族の世話をしていると回答しています。
一昔前と違い、ケアが必要な家族のために結果として大きな負担を強いられている子どもたちを支援すべく、国会でも議論されています。親の方も望んでそのような生活状況になっているわけではないのだと思いますが、まずは生活の安定につながる支援に家族が繋がることが、子どもの負担を軽減する第一歩だと思います。登校していない子どもの生活ぶりを把握するのは容易ではないと思いますが、声を届けられない子どもたちの実態についてまず知っていただきたいと思います。
ここでは、ヤングケアラーに関する基本情報や、ヤングケアラーに関連する支援情報、当事者の声や専門家の解説が掲載されているウェブサイトをご紹介しています。
◎ヤングケアラーについて こども家庭庁
◎ヤングケアラーについて 厚生労働省 ヤングケアラーに関する基本情報の他、支援情報も掲載されています
◎知ってほしいヤングケアラー NHK首都圏ナビ 当事者の声のほか、専門家の解説もあります。
◎『ヤングケアラーを初めて定義 改正子ども・若者育成支援推進法が成立』福祉新聞、2024年6月
(出典)「ヤングケアラーの実態に関する調査研究について」 令和2年度 子ども・子育て支援推進調査研究事業 厚生労働省
不登校の子どもたちが家でどんな思いで過ごしているのか、学校からはおそらくほとんど見えてこないかと思います。外見的にはじっと静かに過ごしていても、内心では1秒が長く感じるほど苦悩している子もいます。そんな心情を垣間見ることのできるマンガや、不登校生徒やその保護者とのコミュニケーションに役立つウェブサイトをご紹介します。
◎『学校へ行けない僕と9人の先生』 棚園正一 著 双葉社 2015年
このマンガの著者・棚園正一さんは小学校で体罰を受け、それがきっかけで不登校になったそうです。その後マンガ家となられ、当時の経験を細かい心理描写とともに描かれています。当事者の気持ちがとても丁寧に描かれています。学校にいない間に不登校の子がどんな気持ちで生活をしているのか、とてもリアルに描写されています。ぜひお読みください!
棚園さんのインタビュー記事もあります。
◎「不登校という「色眼鏡」をかけない人との時間が、「フツウ」になれない自分が変えたーー棚園正一さんが漫画『学校へ行けない僕と9人の先生』続編を描く理由 」クリスクぷらす
◎「不登校から漫画家に 棚園正一さん「学校へ行けなかった日々は宝物」」産経新聞
◎『《中動態×オープンダイアローグ=欲望形成支援》 第1回 20分でわかる中動態――國分功一郎』2019.10.29 かんかん
「不登校」は先生方にとってどのような印象でしょうか?最近は理解を示してくださる先生も増えてきて嬉しいですが、否定的な考えの先生に苦労した保護者の話もまだ耳にします。不登校が始まった頃のコタケの心境はどうだったかというと、「今日から不登校を始めよう」と決心したわけではなく、コタケ本人は必死に「休んじゃだめだ、登校しなくては」と思っているのですが、思えば思うほど体調が崩れていってしまいました。
この状況を言い換えると、「抗しがたい何かに押し出されるようにしてその状態に身を置かざるを得なくなった」という感じです。「その状態に身を置くことになった=不登校になった」のは本人でも、「身を置かざるを得なかった」のは本人の望みではないわけです。でも先生や親に「学校行ってみない?」と言われると、直接いやだと言いにくかったり、心の奥では「無理」と感じていても、「学校には行かなければいけない…親に心配かけたくないし…進路に影響するかもしれないし…」と思っているのも本心なので「ハイ」と答えてしまいがちです。でも「抗しがたい何か」が解消されていないと、やはり行けないわけです。
私はこのことを理解するのにしばらく時間がかかってしまい、後々深く反省しました。私がこうした不登校児の内面の複雑な葛藤に気づくきっかけとなったのは、「中動態」という古い文法です。能動態「する」でも受動態「される」でもなく、「そのプロセスの中にある」というのが中動態だそうです。この中動態を知った上で不登校を考えた時、「行きたいけど行けない」が何を表現しようとしているのか少しだけわかったように思います。中動態については私もまだごく浅くしか理解できていないので、ご関心のある方はぜひ國分先生の著書『中動態の世界』をご覧ください。
不登校について生徒とフラットに話すつもりが、つい「それなら○○がいいよ」「できれば○○してみてね」「〇〇はできそうかな」など、言葉はやさしげでも中身は指示的な会話になりがちかもしれません。「それは助言であって指示ではない」と考える先生もいらっしゃるかもしれませんが、学校の先生というだけで、どんなにきさくな先生でも生徒から見れば強い権限を持ち、逆らい難い立場にいる人でもあるので、その人からの助言は指示や命令とほぼ同じように感じる子もいます。ここでは子どもの気持ちを尊重するコミュニケーションに関心をお持ちの方への情報をご紹介しています。
◎「対話とコミュニケーション」 BSNキッズプロジェクト「はぐくむコラム」 *BSN新潟放送
新潟大学・豊田光世淳教授による親子の対話について書かれたコラム。子どもとの対話の難しさとその価値についてわかりやすく説明されていて、不登校生徒と先生との対話にも応用できる内容です。豊田先生はコラムの中で「対話では、“当たり前”に固執せずに、“異なる可能性”を模索することが大切 」としています。
最近では、学校が辛くて体調を崩す子どもが増えている中で、「無理して学校に行かなくてもいいんだよ」という言葉が様々な立場の方々から発せられるようになってきていますが、「不登校のその先」の未来が見えず、支援も乏しいことから、「そんなこと言われても…」と多くの不登校生徒やその保護者が不安を抱え続けてしまいます。だからこそ、学校教員の方々も含めて、子どもに関わる大人はその視界不良な「不登校」という課題から逃げずに、生徒と丁寧に対話していくことが必要だと思います。教員の立場で、登校に固執せずに異なる可能性を模索することに怖さや抵抗を感じる方もいるかもしれません。豊田先生は、「対話は、難しく、勇気も必要としますが、気づきや理解を与えてくれるとても大切なコミュニケーション 」とも述べています。笑みの間ミッションにある「相互に尊重しあう関係性の中での対話」の基本的な考えとも通底していると思います。
◎「対談「オープンダイアローグ」に学ぶ 子どもとの対話の持つ可能性」 斎藤環教授(筑波大学)× 高橋暁子(ジャーナリスト)
オープンダイアローグは1980年代にフィンランドで生まれた療法です。もともとは統合失調症の治療に開発されましたが、その可能性の広さから現在は様々な精神疾患の治療に応用されています。この対談の中で斎藤氏は親子間のコミュニケーションにも使えると述べています。内容は親子の対話についてですが、不登校の子とその家族、先生との対話にも多くのヒントを与えてくれます。「対話」と聞くと簡単そうに聞こえますが、子どもを相手に試みると「無理をせずに○○にしておきなさい」とか「○○すればいいかもよ」など、言い方はやさしくても提案をしてしまいがちです。笑みの間でおすすめしている対話は、「対等に尊重しあう」ことを前提としています。「力になりたい」「学校に戻ってきてほしい」という気持ちが強く、ついアドバイスや説得、説教になりがちな先生がいらっしゃいましたら、ぜひ一度お読みいただければと思います。不登校の生徒とのコミュニケーションを「指導する側・される側」に固定しない、対等な人と人としての対話にするヒントが見つかるかもしれません。
オープンダイアローグについて、実践の様子を交えてわかりやすく解説しているサイトがあります。
「【特集】変わり始めた精神医療 (3)“オープンダイアローグ”の可能性」 NHKハートネット 2019年6月
◎「医学界新聞プラス[第1回]その人のいないところでその人の話をしない 『オープンダイアローグ 私たちはこうしている』より」森川すいめい 医学書院
オープンダイアローグの書籍をいくつか書かれている森川すいめい氏による、オープンダイアローグに関するとてもわかりやすい解説です。基本的には医療や対人支援の場でのオープンダイアローグに関する話ですが、その中で森川先生は「「支援する/される」という力関係が対話を阻害する」とし、教師と生徒にも言い換えられるとしています。私達親も何気ない会話の中で、子どもに社会や生きるための知恵を「教えてあげる」「伝えてあげる」という上からモノを言う感じになる場面があります。また、子どもにとっては多くのことが初めてであり、大人はそれらを体験済みなので、「まだわかってない」と子どもの発想や失敗に厳しくなってしまうこともあると思います。上下関係が厳しい学校や部活を経験してきた先生であれば、指導する側・される側という垂直な立ち位置が自然で、年下の生徒たちと横並びの対話は居心地が悪いと感じる方もいらっしゃるかもしれません。そんな葛藤をお持ちの先生に、森川先氏は例えを出しながら、どんな姿勢が対話に通じるのか教えてくれています。生徒との垂直な縦関係ではない、新しい対話に関心をお持ちの先生におすすめです。
不登校の生徒と対話する時に、学校にまつわる話は子どもにはしんどいかもしれません。まずは子どもが安心してコミュニケーションできる関係を築きたいという段階では、学校とまったく関係ない、その生徒の好きな話題から入る方が良いかもしれません。生徒の好きなスポーツ、ゲーム、マンガ、アイドルなど、その生徒が好んで話したいことならなんでもいいと思います。これらが良いのは、対話する上で「対等な関係性」を築きやすいからです。「先生が上、生徒は下」という縦関係が弱まって、公園のベンチに並んで座っているような、ちょっと気楽な関係性が作りやすくなります。また、椅子の位置が90度やハの字のようにするだけでも、常に相手の視線を感じる対面式より話しやすく感じる場合もあります。
息子は違うクラスの先生と同じプロ野球チームのファンで、たまに登校して廊下で会うと「昨日勝ったな!」と二人で盛り上がってました。野球の話をする時は、年齢や立場に関係なく「熱いファンどうし」なわけです。今でも「星野先生以外なら、あの先生が担任だったらよかったな」と思い出したりしています。
先生が詳しくなくても、「それってどんなの?先生詳しくないから教えて」というアプローチでも良い場合もあります。生徒によっては不登校中に熱心に取り組んだ結果、その道の達人のような知識豊富な子もいるかもしれません。ただ、その後も自分から調べずにただ聞いているだけだと生徒の方が楽しくなくなったり、だんだん話がマニアックになってついていけなくなった時に、子どもに「わかってない」と見透かされることもあります。私も息子のゲームの話が複雑すぎて途中で目が空を見つめてしまう時があり、「聞いてる?」と怪訝な顔をされたことがあります(汗)
進路に関する情報は先生方のほうが詳細にご存知かと思いますので、不登校の生徒を積極的に受け入れている不登校特例校と通信制高校などの情報を中心にお伝え致します。
不登校の生徒に合わせたカリキュラムを持つ学校。公立、私立合わせて全国でまだ17校しかありません(2021年9月現在)。中学校が多いですが、小学校、高校もあります。また、東京都では不登校特例校の「分教室」という形で小規模な不登校生徒対象の教育施設がいくつかの設置され始めています(2021年9月現在)。
◎「不登校特例校の設置促進に向けた東京都教育委員会の取組について」東京都
◎「特例校(不登校児童生徒を対象とする特別の教育課程を編成して教育を実施する学校)について」 文部科学省 2018年02月23日
・特例校に関するニュース
◎「不登校 居場所を探して】失った自信取り戻す「不登校特例校」」産経新聞 9/14(月)
公立1校と私立1校の不登校特例校の取り組みが紹介されています。
主に自宅で学習し、レポート、スクーリング参加、筆記試験で必要な単位を取得して卒業するスタイルの高校。学校数も生徒数も増えてきており、平成30年の生徒数は186,502 人、同年の高校生全体の約17人に1人が通信制高校に通っていることになります(H30学校基本調査資料より算出)。
通信制高校は通信教育を利用して学ぶ高等学校で、必要な単位をクリアすれば高校卒業資格が得られます。一方、通信制高校生が学習等の様々なサポートを受けられる施設のことをサポート校といいます。サポート校はいわゆる高校ではなく塾や予備校と同じ位置づけのため、ここに通って学んだだけでは高校卒業資格は得られません。通信制高校が各地に小規模なキャンパスを設置していたり、通信制高校とサポート校が提携していたりします。
新入生として入学する生徒も多いですが、常に編入生を受け入れているのも通信制高校の大きな特徴の一つです。編入のタイミングも年に2回程度というところから、随時受け付けている高校もあります。全日制高校に入ったけれど、合わなかったり人間関係につまづいた時の転入先として選ばれることがあります。通信制高校の入試は全日制と異なり、書類や作文、面接などで審査する高校が多いです。だからといって、生徒が勉強嫌いばかりかと言うとそうとは限らず、中には大学レベルの学びを在学中にスタートさせている生徒もいます。
また、全日制高校と違い、様々な背景、年齢の人が集まるのも通信制高校の特色かもしれません。実際、通信制高校に通う息子の周りにも少し年上の人がいますが、他のコースではさらに年齢が高い人もいると聞きます。それぞれに不登校経験など個別の事情を抱えていることが多いですが、特にそれを隠す必要もなく、自然体でいられる雰囲気があるようです。
学校によって校風も授業内容もさまざまで、中には小説やアニメ、プログラミングの授業など、ユニークな取り組みをしているところもあります。キャンパスライフも様々で、私服・メイクOKな学校や、制服があり、着用を義務付けている学校もあります。部活が熱心な高校もありますが、本校以外の多くの小規模キャンパスには体育館や運動場といった施設が十分に無く、私が実際に聞いたところでは、スポーツ系の部活は近くの公共施設を借りて練習しているとのことでした。部活の頻度も通信制高校は比較的少ない傾向があるようですが、中にはeスポーツ系の部活に力を入れている高校もあります。
通信制でも対面授業を受けたい人には、週に何日か登校するコースを持っている学校もあります。一見、楽そうに聞こえますが、卒業単位を取得するには毎月のレポート提出(教科書の内容に沿った問題などが載っているプリント。多くは月4〜8枚程度)とスクーリング(登校)、テスト(登校またはネットなど)は必須で、自律的に学習を進める力が求められます。丁寧な指導等によって高校卒業率が高い学校がある一方で、近年、学習指導要領等に基づかない杜撰な指導等を行っている通信制高校が問題になっています。
卒業率や進学率も学校差が大きく、50%に満たない高校もあれば、90%以上が卒業し、進学希望者の7割が進学を実現する学校もあります。また、通信制高校の卒業者の約40%が進学・就職が未定という調査結果もあります。(H29年度文科省調査より算出)また、大手通信制高校が進学先に浪人生の予備校等も含めて計算し、進学率を高く見せようとしたとする報道もあります。(2021年3月31日週刊文春)
☆参考情報☆
(論文)『通信制高校の現状と卒業率に関わる要因の調査分析』大久保智久 政策研究大学院大学 2017年
論文著者の大久保氏自身は執筆当時に通信制高校に勤務しており、通信制高校の歴史や概要、卒業率、通信制高校の実情について詳述、分析されています。
高卒認定試験
高校には通わず、大学入学に必要な資格だけ取ることもできます。女子スキージャンプの高梨沙羅選手は、この資格を半年くらいで取って競技に専念し、その後体育大学に進学しています。
フリースクール・フリースペース
フリースクールの中には、20歳くらいまで通えるところもあります。通信制高校のレポート作成を支援してくれるところもあります。
夜間中学校
中学で不登校のまま卒業し、もう一度中学の学習をやり直したい人には夜間中学という選択肢もあります。夜間中学校については不登校生徒への支援策の一つとして国会で前向きな検討が進んでいます。少しずつ増えてきており、中学校に併設されている夜間学級ではなく専門の校舎を持つ夜間中学校も生まれていますが、まだ全ての都道府県には設置されていません。夜間中学は戦争や仕事などで中学校に通えなかったり、不登校経験などからじゅうぶん学べなかった人のほか、外国籍の人が多く通っている学校もあります。そうした夜間中学の文化祭はとても国際的なのだそうです。給食も出ます。
◎「夜間中学、不登校の受け皿に 香川・三豊に来春開校予定」朝日新聞 2021年8月27日
香川県三豊市の取り組み。「だれ一人置き去りにしない、生徒が主役の多様性を尊重する学校」がキャッチコピーで、不登校特例校の指定を受けることで不登校生徒も通える夜間中学を目指しているそうです。
特修生制度
大学の通信教育課程の中には、中退などで高卒資格を持たない人が大学で学ぶための「特修生」制度を持つところもあります。大学によっては別の名称の場合もあります。また、入学資格は15歳以上など、それぞれの大学で条件が少し違います。特修生として一定の単位を取得すると、その大学の通信教育課程に正規の大学生として入学が可能です。私が調べた限りでは、必要単位を取得して正規の大学入学資格を得ても高校卒業資格とはならない、としています。私も通信制の大学で学んだことがありますが、自宅でマイペースに学べる一方、難しい内容の時は自分でいろいろ調べて理解する努力が必要ですし、映像授業は録画なので少し単調に感じることもあり、モチベーションの維持は自分次第という印象です。年齢層はかなり幅広く、若い方から祖父母世代までが一緒に学んでいます。詳しくは各大学のHPをご参照ください。
☆参考情報☆
「通信制だけど、仲間もできる――15歳から学べる「放送大学」の利点とは?」
子どもが不登校になると、給食費を支払いながら家庭でも子どものランチを用意するため、ランチ代が二重にかかる状態になってしまいます。
完全不登校の状態でも、親は「そのうち行けるようになるかもしれない」とか「登校したい時に給食が出なかったら…」などと考え、止めて良いのか迷うこともあります。息子は週に0〜3回イレギュラーに保健室で給食を食べていたので結局卒業まで払い続けました。
後に調べたところ、学校によっては給食を止めた後も、たまに食べる程度の場合は都度払いにさせてくれたりするようです。ただ、こうした個別配慮はオープンにされていない情報なので、不登校の子の保護者はそうした配慮が受けられるのかわからないまま悩みがちです。
息子は心身が回復し始めてから、体調の良い時に保健室に短時間過ごしたり、保健室で給食だけ食べて帰っていました。こうした小さなステップを経て、少しずつ保健室で安心して過ごせるようになり、保健室という安心空間の中で友達や先生との信頼関係を築いていくことができたと感じています。こうした小さなきっかけにもなる給食を止めるのは、なかなか決断しにくいケースもあるかもしれません。もし、給食費の支払いを一旦止めている不登校の子が「保健室で給食を食べてみようかな」という時は、その日の給食費は後払いOKにするなど、ぜひ給食が食べられるよう後押ししていただきたいな、と思います。
オヤタケのおすすめの本や記事です。子どもの気持ちを理解したり、関わり方を考えるうえで役に立ちました。
『子どもの脳を傷つける親たち』 (NHK出版新書 523) 友田 明美著 2017年
小児精神科医である友田先生はこの本の中で、不適切な養育(マルトリートメント)によって子どもの脳には深い傷を与えてしまうことを科学的なエビデンスをもとに紹介しています。少し知るのが怖いと感じるかもしれませんが、著者の友田氏は、自身もまた不適切な養育に該当することを我が子にしていたことを打ち明け、子育て中の親たちに共感し、寄り添う言葉を添えています。学校の先生にもぜひお読みいただきたい本です。
『子どもの宇宙』河合隼雄著 岩波書店386 1987年
河合隼雄氏は日本の分析心理学の発展に貢献した心理学者で、子どもに関する本も多数書いています。この本の「はじめに」の中で、河合氏は『ひとりひとりの子どもの中に宇宙がある』とし、さらに『私は心理療法という仕事を通じて、…実に多くの子どもたちが、その宇宙を圧殺されるときに発する悲痛な叫びを聞いた。…』と述べています。この「圧殺」をしているのは、親を含めた周囲の大人たちではないでしょうか。不登校についてダイレクトに解説している本ではありませんが、子どもの心を理解するための別な視点を与えてくれます。
『自尊感情を持たせて,きちんと自己主張できる子を育てる アサーショントレーニング40-先生と子どもと親のためのワークブック-』リサ M.シャーブ著 黎明書房 2011年
コタケ推奨!アメリカのソーシャルワーカーであるシャーブ氏のワークブック。ちょっと難しい漢字にはふりがながふってあるので、子どもでもだいたい読めますが、子ども一人でやらせず大人の方が一緒に取り組む方が理解が深くなると思います。アクティビティは40個あり、「怒りをコントロールしよう」「自分の権利を守ろう」「じょうだんのからかいと、傷つけるからかい」など、子どもがよく遭遇する場面を想定し、「自分ならどうするかな?」「その子はどんな気持ち?」などの問いがあります。正解は無く、子ども自身が自分なりの答えを見つけていくことを促します。コタケは「これはボク一人がやるんじゃなくてみんなとやるべきだ」と考えて星野先生のところにこの本を持参し、「クラスのみんなといっしょにやりたい!」と熱心に頼んだことがありました。その時は実現できなかったのですが、星野先生もとても関心を寄せてくださっていました。
「ひきこもりで変わり者、分身型ロボットで起業」吉藤健太朗さん 日経ビジネス
ロボット開発者の吉藤健太朗さん。分身型ロボットOriHimeが有名で、不登校や病気で学校に来れない子の支援の現場でも使われ始めています(参考記事はこちら)。ご自身も不登校を経験され、その後さまざまな人との出会いを経て、OriHimeをはじめとするロボット開発の道に進まれます。ここまでユニークな人生を誰もが歩めるわけではありませんが、吉藤さんの「我慢弱さ」を否定せず、我慢しなくてもすむ方法を追求することで新しいアイデアを生み出していく話は、「学校が辛いなら新しい技術やアイデアによって、通わなくても学べるようにすればいいのかも。そもそも学ぶ内容を子ども全員がきっちり揃える必要性はどこまであるんだ?」という発想を与えてくれました。まわりと違う道を選んで時間がかかっても、「子どもが明るく健康的に暮らせていれば、自分の好きなことをきっかけに社会に繋がれるかも」と考えることができて、親としてとても励まされたエピソードです。先生方にも、ぜひ不登校の子が元気になってきた時に伸び始める、細い「意欲の蔓」を「そっちはだめだ」「それは授業ではやらない」と切り落とさず、大切に支えていただけたらと願っています。
「イタリア人医師が考える、日本に引きこもりが多い理由。」パントー・フランチェスコさん Torus
日本語ペラペラのフランチェスコさんが考える「アニメの力を借りた治療」という斬新なアイデア。でもとても希望を感じます。アニメやマンガは文学や絵画より「芸術性が低く、価値が低い」と下に見る方もいるかもしれませんが、アニメやマンガは不登校の子たちが一時的でも現実の苦しさから逃れることのできる心の居場所になりうるものです。それはゲームも同じです。コタケも心が辛かった時に、ずっと昔に放送されていたアニメ「名探偵ホームズ」と「トムとジェリー」を繰り返し観ていました。ちなみに「名探偵ホームズ」は登場人物が全員がかわいい”犬”の顔をしていて、悪役モリアーティ教授もぜんぜん怖くないので安心して見られたようです。また、フランチェスコさんは『日本では「〇〇しなければいけない」という大きな物語がとても多く、そこに当てはまらないことを気に病んでいる人が多いように思います。』と述べていて、とても共感しました。「全員が同じような人生を、同じタイミングで送れるはずがない」という言葉にもハッとさせられます。ちょっと考えたら当たり前のことなのに、学校となると同じ時間の使い方をして同じことをするのが当然と思ってしまいがちです。子ども時代にアニメに励まされたというフランチェスコさんは、「アニメの物語を通して、患者と対話し、その人自身の物語を作り直せるようになれたらいい。そして、いつかは、症状に合わせたアニメ作品をつくれるようになったら」と結んでいます。それは不登校の子にもすごく良さそうな気がして、今後の研究に期待せずに入られません。ちなみに、フランチェスコさんの日本での指導教授は、上で紹介したオープンダイアローグの本を書かれている斎藤環教授です。
アインシュタインは『常識とは、18歳までに身につけた偏見の蓄積である』と述べているそうです。私も含めて、大人は自分たちの経験にもとづき、時にそれだけに頼って子育てや教育を考えてしまいがちです。しかし、子どもが成長し、生きていくのは過去ではなくて未来の社会で、その未来では親世代がついているいくつかの職業が無くなっているとも言われています。新型コロナウイルス感染症の流行によって、すでに働き方、学び方、人生観ですらたった1年で急激に変わってきています。学び方も働き方も様変わりした先の未来の社会で求められる人材や能力も、今の大人世代が持つべきと考えているものとは大きく異なる可能性もあります。出口氏は「一人ひとりが違うことは当たり前だ」と小さな頃から教えるイギリスの幼児教育に触れて、日本は先進国の中で最もダイバーシティが必要な国だと述べられています。
学校がつらい子にとって、平日の日中の時間帯は、自宅以外ほんとうに居場所が無いことに気づかされました。家庭でさえも居心地が悪い子にとってはなおさら辛い状況だと思います。鎌倉中央図書館のツイートに感銘を受けるとともに、深く考えさせられました。学校教員やソーシャルワーカー、カウンセラーといった専門職ではなくてもできることはあるのかも、と考えるきっかけとなった、笑みの間の原点の一つです。
いじめ被害や不登校生徒への学校の非情な対応をニュースで知るたびに、「先生との対話など無理かもしれない」と心が折れそうになります。教員の多忙化が深刻さを増していると聞くと、「この問題が解決されない限り、不登校児の対応は後回しになってしまうのかも」と悲観してしまうこともあります。
しかし、それでも私達は希望を持っています。
星野先生や、息子の力になろうと常に寄り添い、時には自ら奔走してくださった養護教諭の先生、「不登校の子には強さがある」と支えてくれたスクールカウンセラーの先生のように、不登校の親子にとって時に戦場のような場となってしまう学校で、力を尽くしてくださる先生や教育関係者の方が、たとえ数は少なくとも全国の現場にいらっしゃるはずだと信じて、このホームページを作りました。
息子が卒業直前に学校の先生方に向けて贈ったメッセージである「こんなつらい思いをするのは、この学校では僕を最後にしてほしい」という切実な言葉が、不登校支援活動を始めた私の背中を押してくれています。
この「笑みの間」が生徒に寄り添おうとする先生方を励まし、新たな視点のヒントを与え、勇気を支える一助となることを、息子共々心から願っています。
そして、応援しています!
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
先生方の参考となるような言葉や情報が一つでも見つかることを心より願っております。
笑みの間メンバー一同