雇用調整助成金Q&A


1 制度の概要について

Q:雇用調整助成金の主な支給要件を教えて下さい。

A:今回の新型コロナウイルス感染症による特例措置による助成金の主な支給要件は、以下のとおりです。

①新型コロナウイルス感染症の影響により

 都道府県知事による休業要請等の対象になっていなくても、新型コロナウイルスに関連して出勤自粛、売上・生産の低下等があれば足りるため、かなり広く認められます。

②事業活動の縮小を余儀なくされた

 売上高または生産量等について、初回の判定基礎期間(複数の場合にはいずれか)の初日が属する月、その前月、前々月のいずれかが、前年同月比5%以上減少している必要があります(休業の初日が令和2年4月1日より前の場合は、10%以上の減少が要件となります)。前年同月比以外にも、前々年同月比、過去1年間の適当な1ヶ月と比較することも可能です。

③労使協定に基づき

 雇用調整の実施について労使間で事前に協定し、その決定に沿って雇用調整を行う必要があります。過半数労働組合または労働者の過半数の代表者と書面により労使協定を締結する必要があります。

④その雇用する対象労働者の

 対象はすべての労働者です。雇用保険被保険者以外でも対象となります。

⑤雇用の維持を図るために雇用調整(休業)を実施する

 所定労働日の全1日にわたるもの、または一定のまとまりで行われる1時間以上の短時間休業が対象です。また、労働基準法第26条の休業手当(平均賃金の6割以上)を支払っていることが要件です。

⑥雇用保険適用事業主であること

 労災保険適用事業所も特例で対象となります。

Q:制度が頻繁に変わっていますが、今まで何がどのように変わったのですか。

A:

令和2年

  4月10日  新型コロナウイルス感染症に伴う特例措置の追加実施及び提出書類の簡素化を公表。

 :① 新型コロナウイルス感染症の影響を受ける事業主(全業種)を対象

  ② 生産指標要件の緩和(3か月10%以下→1ヶ月5%以下)

  ③ 雇用被保険者でない労働者の休業も対象に追加

  ④ 助成率を引き上げ(解雇等を行わない中小企業9/10等)

  ⑤ 計画届の事後提出を認める

  ⑥ クーリング期間要件、被保険者期間要件の撤廃

  ⑦ 支給限度日数の引き上げ

  ⑧ 短時間休業要件を緩和

  ⑨ 休業規模要件を緩和(中小企業1/40)

  ⑩ 残業相殺を停止

  ⑪ 教育訓練加算の拡充(中小企業加算額2400円)と要件の緩和

  https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_10782.html

          https://www.mhlw.go.jp/content/11603000/000620642.pdf

  4月25日  雇用調整助成金のさらなる拡充措置を公表

   :解雇等を行わない中小企業の助成率引き上げ

         https://www.mhlw.go.jp/content/11603000/000625165.pdf

  5月 1日  生産指標の比較対象となる月の要件の緩和を公表

   :前年同月とは適切な比較ができない場合は、前々年同月との比較や、前年同月から12か月のうち適切な1か月との比較が可能となる。

        https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11128.html

  5月 6日  申請手続きのさらなる簡素化を公表

     :① 概ね20名以下の中小企業について、「実際の休業手当額」を用いて、助成額を算定できるように。

      ② 助成額を算定する際に用いる「平均賃金額」の算定方法を大幅に簡素化

      ⅰ 源泉徴収税の納付書を用いて平均賃金を算定することができる

      ⅱ 所定労働日数を休業実施前の任意の1ヶ月をもとに算定できる

         https://www.mhlw.go.jp/stf/press1401_202005061030.html

  5月11日  雇用調整助成金の上限額について引き上げる方向で検討に入ったとの報道がなされました。

  5月19日  5月6日発表の簡素化に加え、以下を公表。

      ① 休業等計画届の提出を不要とする

      ② 5月20日12時からオンライン申請開始

  6月12日  令和2年度第二次補正予算の成立に伴い、雇用調整助成金(及び緊急雇用安定助成金)を次のとおり拡充。

     :① 企業規模を問わず、1人1日あたりの上限額を8,330円から15,000円に引き上げ(月額上限330,000円)

      ② 解雇等をせず雇用の維持に努めた中小企業の助成率の拡充 

        従前は原則9/10(一定の要件を満たす場合は10/10など)だったが、一律10/10に引き上げ

      ③ 特例措置が適用される緊急対応期間を、令和2年4月1日から同年9月30日までに延長(従前は6月30日までだった)

  8月28日  緊急対応期間を12月末まで延長。

 11月27日  緊急対応期間を令和3年2月末まで延長。

令和3年

  1月 8日 緊急事態宣言対象地域の知事の要請を受けて営業時間の短縮に協力する飲食店等につき、大企業の助成率を10/10に引き上げ。

  1月22日

     :① 緊急対応期間を、緊急事態宣言が全国で解除された月の翌月末まで(※)延長

         ※緊急事態宣言が当初の予定どおり2月7日に解除された場合、3月末まで

      ② 特に業況が厳しい大企業(※)への雇用調整助成金等の助成率引上げ

         ※生産指標(売上等)が前年又は前々年同期と比べ、最近3ヶ月の月平均値で30%以上減少した全国の大企業

        緊急事態宣言が全国で解除された月の翌月末まで、助成率は次のとおり

         解雇等を行わない場合の助成率 10/10(これまでの特例措置の助成率3/4)

         解雇等を行っている場合の助成率4/5(これまでの特例措置の助成率2/3)

  2月 5日 雇用維持要件の緩和。

         対象事業者:下記大企業に加え、中小企業の全ての事業所

                ・対象地域の知事の要請を受けて営業時間の短縮に協力する飲食店等の大企業

                ・特に業況が厳しい全国の大企業

         対象となる休業:令和3年1月8日以降、緊急事態宣言解除の翌月末までの休業

         雇用維持要件緩和の内容:令和3年1月8日以降の解雇等の有無により、適用する助成率を判断する

                 ※ 従前は令和2年1月24日以降の解雇等の有無で確認

  2月12日 厚生労働省から「新たな雇用・訓練パッケージ」の公表。

         5~6月の特例措置について、以下を示す。

         ・原則的な措置を段階的に縮減していくこと:日額上限13,500円、助成率最大9/10(中小企業)

         ・感染拡大地域特例(※)・業況特例(全国・特に厳しい企業):日額上限15,000円、助成率最大10/10(中小大企業)

            ※ まん延防止等重点措置対象地域に指定された地域があれば、営業時間の短縮等に協力する飲食店等が対象

  2月22日 緊急対応期間を4月30日まで延長。

  2月26日 「緊急事態宣言等対応特例」として、令和3年以降の緊急事態宣言に伴う大企業の助成率の引上げや雇用維持要件の緩和を整理。

  3月25日 厚生労働省が、5月以降の雇用調整助成金の特例措置等について、発表(「新たな雇用・訓練パッケージ」と同様の内容)。

  4月30日 緊急対応期間を6月末まで延長。


2 支給要件について

Q:従業員をフルタイムで雇用していたのですが雇用保険に加入していませんでした。今から加入してから助成金を申請してもよいのでしょうか。

A:緊急対応期間中(2020/4/1~2021/6/30)は、雇用保険被保険者とならない労働者の休業についても助成対象となります。ただし、雇用保険に未加入であれば雇用保険適用の手続をしていただく必要があります。詳しくは最寄りのハローワークにお問合わせ下さい。

Q:生産指標要件である売上5%減は、具体的にはどのように判定するのですか。

A:休業等を実施する対象期間の初日が緊急対応期間にある場合は、「初回の判定基礎期間の初日が属する月、その前月または前々月」(つまり、休業した月、休業した月の前月、休業した月の前々月)について、原則として前年同月と比較します。複数の判定基礎期間がある場合はいずれかの判定基礎期間を任意に選択可能です。

  また、前年に比較できる月がない場合または比較することが適切でない場合等は、前々年同月、または、「初回の判定基礎期間の初日が属する月、その前月または前々月から直近1年間であって適切と認められる1ヶ月分の指標」と比較することができます。

 ※ただし、比較に用いる1ヶ月はその期間を通して雇用保険適用事業所であり、かつ、当該1ヶ月の期間を通して雇用保険被保険者を雇用している月である必要があります。

Q:①在宅勤務の労働者、②コロナウイルスに感染した労働者、③感染の疑いのある労働者、④有給休暇を使った労働者は助成対象になりますか?

A:

① 在宅勤務(テレワーク)の労働者     

  在宅勤務は休業にあたらないため、対象外です。

② コロナウイルスに感染した労働者

  事業主が自主的に休業等を行った場合の休業手当が助成対象となります。コロナウイルス感染者は、本人の事情により休業したものであるため対象外です。ただし、別途健康保険制度により傷病手当金が支給されます。

③ 感染の疑いのある労働者    

  事業主が自主的に休業等を行った場合には、対象となります。

④ 有給休暇を使った労働者    

  有給休暇の使用は、休業にはあたらないため、助成対象外です。

Q:対象となる労働者の範囲について、以下のような人は対象になりますか。

① 雇用保険被保険者でない者(所定労働時間が週20時間未満の者)

② 雇用したばかりの人、内定後に1日も勤務していない人

③ 雇用契約書や給与明細のない人

④ 取締役

⑤ 家族従事者

A:①雇用保険被保険者でない者(例:所定労働時間が週20時間未満) 

   →雇用調整助成金は雇用保険被保険者を対象にしていますが、雇用保険被保険者でない者に関しても、緊急雇用安定助成金の制度により、2020/4/1~2021/6/30の間の休業は助成対象となります。ただし、緊急雇用安定助成金は、北海道を除き、令和2年4月1日以降に開始された休業が対象ですので、ご注意ください。

   ※雇用保険被保険者とは、31日以上引き続き雇用されることが見込まれ、かつ、1週間の所定労働時間が20時間以上である者を指します。

  ② 雇用したばかりの人、内定後に1日も勤務していない人    

   →対象となります。

  ③ 雇用契約書や給与明細のない人 

   →出勤簿、給与明細、給与支払い実態等で雇用関係が確認できれば対象となります。

  ④ 取締役      

   →対象外です。

  ⑤ 家族従事者    

   →雇用関係が確認できれば対象となります。就業実態が、雇入時に労働条件を明示した書面、出勤簿、給与簿、給与の支払実態等によって他の労働者と同様に管理され、事業主と利益を一にする地位にないと確認されることが必要です。

Q:テレワーク、在宅勤務と休業とはどうやって区別するのですか。私用のパソコンでメールをチェックさせている場合はどうでしょうか。

A:事業主の指揮監督下で業務に従事している場合には、在宅であっても休業にはあたりません。雇用調整助成金の対象となる「休業」は、労使間の協定により行われた計画に沿って行われた休業である必要があり、「休業」期間中は業務に関して指示、命令等をしてはいけません。休業期間中に従業員が私用のパソコンであってもメールをチェックさせていると、「休業」には該当しないとされるおそれがあるので注意して下さい。


3 対象となる休業について

Q:どのような休業が対象になりますか。休業するにあたってどのような点に注意したらよいのでしょうか。

A:休業の要件は、以下のすべての要件を満たす必要があります。

 ① 労使間の協定によるものであること

 ② 事業主が自ら指定した対象期間内(1年以内)に行われるものであること

 ※ 雇用調整助成金の特例措置の延長に伴って、1年を超えて引き続き受給することも可能となりました(1年を超えて引き続き受給できる期間は、同年6月30日までです。)。

   https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000716538.pdf

 ③ 判定基礎期間における対象労働者に係る休業の実施日の延日数が、対象労働者にかかる所定労働延日数の40分の1(大企業は30分の1)以上であること(休業等規模要件)

 ④ 休業期間中の休業手当の額が、労働基準法第26条の規定(平均6割以上)に違反していないものであること

 ⑤ 所定労働日の所定労働時間内において実施されるものであること

 ⑥ a)所定労働日の全1日にわたるもの   または

   b)一定のまとまりで行われる1時間以上/日の短時間休業

(所定労働時間内に当該事業所における部署・部門ごとや、職種・仕事の種類によるまとまり、勤務体制によるまとまりなど一定のまとまりで行われる1時間以上の短時間休業または一斉に行われる1時間以上の短時間休業であること)

Q:労使間協定はどのように締結すればよいのですか。

A:過半数労働組合がある場合には労働組合と、ない場合には従業員の過半数の代表者と協議した上で、休業の実施時期や日数、対象者、休業手当の支払い率等について、労使協定を締結する必要があります。

  緊急対応期間中は、休業等実績一覧表に協定を締結した労働者代表の署名または記名押印があれば、従業員代表選任書の提出は省略可能です。ただ、後日、調査を受ける場合がありますので、従業員代表の選任は適切な手続により行うことが必要です。

Q:緊急事態宣言で要請が出たためやむなく休業しました。不可抗力による休業のため休業手当を支払わない予定ですが、この場合、助成金を受け取ることはできますか。

A:できません。60%以上の休業手当を支払うことが支給要件です。

Q:労使協定の内容に沿って休業とありますが、感染状況は日々変わるので、事前に計画することはできません。どうしたらよいのでしょうか。

A:令和2年5月19日に発表された申請手続の簡素化により、計画届の提出が不要となりました。予め休業協定書において概要を計画した上で、休業等実績一覧表をもとに申請すれば足ります。

Q:短時間休業で助成金がもらえるのはどのような場合ですか。

A:従前は、事業所の対象労働者全員について、1時間以上、一斉に行われる短時間休業を対象としていましたが、今回の特例措置により、以下のような、一定のまとまりをもって行われる1時間以上の短時間休業も支給対象となりました。

 ① 立地が独立した部門ごとの一斉短時間休業

  (例:客数が落ち込んだ店舗のみの短時間休業、製造ラインごとの短時間休業)

 ② 常時配置が必要な者を除いての短時間休業

  (例:ホテルの施設管理者等を除いた短時間休業)

 ③ 同じ勤務シフトの労働者が同じ時間帯に行う短時間休業

  (例:8時間3交替制を6時間4交替制にして2時間分を短時間休業と扱う)


4 助成金額について

Q:緊急対応期間中の助成率と上限額について分かりやすく教えて下さい。

A:① 判定基礎期間の初日が令和3年4月まで(上限はいずれも1人1日15,000円)

    中小企業:解雇等を行わないで雇用を維持している場合→10分の10  それ以外→5分の4

    大企業 :

     原則→解雇等を行わないで雇用を維持している場合→4分の3  それ以外の場合→3分の2

     業況特例・地域特例(※)を満たす→解雇等を行わないで雇用を維持している場合→10分の10  それ以外→5分の4


  ② 判定基礎期間の初日が令和3年5月以降(原則としては1人1日13,500円が上限だが、業況特例・地域特例に該当で15,000円)

    中小企業:解雇等を行わないで雇用を維持している場合→10分の9  それ以外→5分の4

    大企業 :解雇等を行わないで雇用を維持している場合→4分の3  それ以外の場合→3分の2

    業況特例・地域特例(いずれも企業規模を問わない)(※):解雇等を行わないで雇用を維持している場合→10分の10 それ以外→5分の4


  ※ 業況特例:売上高等の生産指標が最近3ヶ月平均で前年又は前々年同期に比べ30%以上減少している企業

    地域特例:緊急事態宣言の対象区域・まん延防止等重点措置を実施すべき区域において、都道府県知事の要請を受けて営業時間の短縮等

         に協力する事業主

       → 緊急事態措置やまん延防止等重点措置を実施すべき期間を通じ、要請等の対象となる施設(飲食店、劇場、映画館、百貨店、

         体育館、水泳場、ボーリング場、博物館、美術館、図書館など)の全てにおいて、休業、営業時間の変更、収容率・人数上限の

         制限、飲食物提供(利用者による酒類の店内持ち込みを含む)又はカラオケ施設利用の自粛に協力することが必要


  「解雇等を行わないで雇用を維持している場合」の具体的な意味内容は、次のQをご参照ください。

Q:「解雇等を行わないで雇用を維持している場合」には助成率が高くなるようですが、具体的にはどのような場合がこれにあたるのですか?

A:

⑴ 原則的な措置について

 「解雇等を行わないで雇用を維持している場合」とは、原則的には、令和2年1月24日から判定基礎期間の末日まで次の①~③に該当せず、かつ、④を満たすことを意味します。

  ①期間の定めのない労働者を、事業主都合により解雇した場合

  ②期間の定めのある労働者を、解雇とみなされる労働者の雇止め、事業主都合による中途契約解除等した場合

  ③派遣労働者を、契約期間満了前に事業主都合により契約解除等した場合

  ④雇用されている労働者(雇用保険未加入者を含む)及び派遣労働者の数が、令和2年1月24日から判定基礎期間の末日までの各月末の事業所労働者数の平均の5分の4以上であること


⑵ 業況特例・地域特例の場合について

  一方で、業況特例・地域特例(前のQをご参照ください。)に該当する場合には、令和3年1月8日から判定基礎期間の末日までの解雇等の有無(上記⑴①~③)により判断されます。

Q:雇用調整助成金の特例措置による上限額の引上げ及び中小企業の助成率の拡充は、どの時期の休業に適用されますか?

A:特例措置による上限額の引上げ及び中小企業の助成率の拡充は、令和2年4月1日から令和3年6月30日までの期間を1日でも含む賃金締切期間(判定基礎期間)が対象です。したがって、

  ・賃金締切期間が令和2年3月中に始まり同年4月中に末日があるような場合(例:3月16日から4月15日)

  ・賃金締切期間が令和3年6月中に始まり同年7月中に末日があるような場合(例:6月16日から7月15日)

は、雇用調整助成金の支給対象となります。

 ただし、雇用保険被保険者以外の者を対象とする緊急雇用安定助成金に関しては、北海道を除き令和2年4月1日以降に開始された休業が対象とされ、また、令和3年6月30日までに実施した休業が対象(設定できる休業が、~6月30日まで)となっているので、ご注意ください。

Q:助成額はどうやって算出されますか。

A:1人1日当たりの助成額(助成単価)

・事業所の1日の平均賃金額 × 休業手当支払率(60~100%) × 助成率

   (上限は、原則13,500円です)

  助成額=助成単価×休業延日数(全日休業延日数+短時間休業延時間/所定労働時間)

 ただし、令和2年5月19日に申請手続の簡素化が発表され、小規模事業主(概ね従業員20名以下)では、実際に支払った休業手当額から助成額を算出できるようになりました。この場合、助成額は次の計算式により算出されます。

  助成額=実際に支払った休業手当額×助成率

Q:助成額の計算に用いる平均賃金はどうやって算出するのですか。

A:前年度の雇用保険料の算定の基礎となる賃金総額等÷(従業員数×1年間の所定労働日数)により算出されます。

  また、令和2年5月19日に以下の簡素化が公表されました。

 ① 平均賃金について、労働保険確定保険料申告書だけでなく、源泉徴収納付書を用いて算定することが可能

 ② 所定労働日数について前年度の任意の1ヶ月(ただし2月を除く)を基に年間所定労働日数を算定することが可能  

  なお、概ね20人以下の小規模事業主では、実際に支払った休業手当額により算出することが可能となりました。

Q:実施に支払った休業手当よりも助成金の額が大きくなることがあると聞きました。どのような場合ですか?

A:小規模事業主(概ね従業員20名以下)に関しては、実際に支払った休業手当の額から助成額を算出できますので、この場合には、実際に支払った休業手当の額を助成額が上回るということはありませんが、それ以外の場合、助成額の算出には平均賃金が用いられるところ、ここでいう平均賃金は、当該事業所全体の従業員の平均賃金のことを意味します。このため、給与の安い従業員ばかりを休業させた場合、実際に支払った休業手当を超える助成額になる場合があります。


5 申請手続及び書類

Q:申請手続きの流れを教えて下さい。

A: ① 労使協定の締結

   (休業の具体的な内容(期間、日数、休業手当の支払率)を検討し、労使協定を締結します)

   ② 休業の実施及び休業手当の支払

  (協定に基づき休業を実施し、休業手当を支払います)

   ③ 支給申請

   (休業の実績に基づき支給申請をします)  

   ④ 労働局の審査 → 支給決定


  ③の支給申請後、④の審査を行い、書類が整っている場合には、2週間程度で支給決定又は不支給決定を行うとされています。

Q:いつまでに支給申請すればよいのですか。複数月にわたる場合、まとめて申請ができますか。

A:申請は、支給対象期間の最終日の翌日から2ヶ月以内です。

 なお、「支給対象期間」とは、支給申請する「判定基礎期間」のことで、複数の判定基礎期間を同時に申請することも可能ですが、その場合でも、休業の実績一覧表などは、毎月の判定基礎期間ごとに作成・提出する必要があります。

 「判定基礎期間」とは、休業の実績を判定する1か月単位の期間であり、原則として、毎月の賃金締切日の翌日からその次の締切日までの期間です。

Q:土日祝や年末年始が申請期限の場合、いつまでに申請書を提出すればよいでしょうか。

A:申請期限の末日が行政機関の休日にあたる場合は、その翌開庁日が申請期限となります。

Q:事業所ごとに申請することができますか。その場合の生産指標要件はどのように判断しますか。

A:雇用保険の適用事業所ごとに申請が可能です。この場合、生産指標要件は、雇用保険適用事業所ごとに判断されます。

Q:支給申請に必要な書類を教えて下さい。

A:下記の厚生労働省のホームページをご参照ください。

  ホームページ上で、企業規模、判定基礎期間、業況特例・地域特例の利用の有無等を選択することにより、適切な様式が指定されます。

   https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyouchouseijoseikin_20200410_forms.html

Q:どこに支給申請すればよいですか。どうやって申請すればよいですか。

A:事業所の所在地を管轄する都道府県労働局またはハローワークに提出することとされています(郵送での提出も可)。

 大阪 大阪労働局助成金センター(大阪市中央区常磐町1-3-8 中央大通FNビル9階)

 兵庫 兵庫労働局職業対策課(ハローワーク助成金デスク)、各ハローワーク

 東京 事業所所在地を管轄するハローワーク

 令和2年5月20日12時以降は、オンラインでの申請も可能となりました。

Q:支給申請書を提出した後、労働局やハローワークから連絡や調査があるのでしょうか。

A:提出した書類についての確認の連絡や、適正な支給を推進する観点から事業所への立入検査や教育訓練等の実施状況等について調査を行うことがあるとされています。


6 地域特例にかかる追加支給申請(緊急事態宣言等対応特例)

Q:令和3年4月16日からの1ヶ月間の休業について、通常の様式で申請し、支給決定を受けました。地域特例の適用がある場合、遡って追加支給を受けられると聞いたのですが、本当でしょうか。

A:地域特例では、令和3年4月23日に発令された緊急事態宣言対象地域に関する特例を遡及して適用することから、追加支給申請が受け付けられます。以下のケースに該当する場合、追加支給申請の手続が必要です。

  ① 緊急事態措置を実施すべき期間を含む判定基礎期間について、既に、特例を利用せずに支給決定を受けている

  ② 上記①の内容が、地域特例に関する支給要件を満たしている

  ③ 上記①の内容の判定基礎期間の末日が令和3年5月31日以前である

Q:前のQのAで追加支給が受けられることは分かりました。具体的にはどういった手続が必要でしょうか。

A:追加支給申請が必要です。

 申請の期限は、令和3年7月31日まで、又は、支給決定日の翌日から2カ月以内、のどちらか遅い日付です。

 必要書類が定められていますので、詳しくは、下記のホームページをご参照ください。

  https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000783166.pdf


7 教育訓練加算

Q:教育訓練加算について教えてください。

A:就業させず、教育訓練が必要な雇用保険被保険者に教育訓練を実施した場合、緊急対応期間中は、休業に対する助成金に、中小企業については1日あたり2400円、大企業については1日あたり1800円が加算されます(従前は企業規模に関わらず1日あたり1200円)。

  なお、緊急対応期間中は、半日在宅勤務、半日訓練も加算対象となりました(ただし、この場合の加算額は半額になります)。半日訓練とは、3時間以上1日の所定労働時間未満の教育訓練を意味します。半日訓練を2度実施した結果、1日の所定労働時間に達した場合は1日として数えます。

  支給申請にあたっては、実施主体、対象者、科目、カリキュラム及び期間を確認できる書類、実施後に各受講者の受講を証明する書類(受講者レポートなど)の提出が必要です。

Q:どのような教育訓練が対象になりますか。

A:従来は職業に関連する知識、技術を習得させ、または向上させることを目的とする教育、訓練、講習等であって、かつ受講者を当該受講日に業務に就かせないものであることが必要でした。

 そのため、職業、職種を問わず職業人一般に求められる知識(例:ハラスメント研修)、通常の事業活動として遂行されることが適切なもの(例:商品知識の研修、QC活動など)、通常の教育カリキュラムに位置づけられるもの(例:入社時研修、管理職研修など)は、対象外でした。

 しかし、緊急対応期間中は以下のような教育訓練も加算対象となります。

 ・自宅でのネット講習(片方向受講、双方向受講いずれも可)

 ・接遇、マナー、ハラスメント研修等の職業、職種を問わず、職業人一般に認められる研修

 ・繰り返しの教育訓練が必要で、過去に行った教育訓練を同一の労働者に実施するもの

 ・通常の教育カリキュラムに位置づけられる研修で在宅のオンライン等、通常と異なる形態で実施するもの

 ・オンラインでの双方向訓練を自社社員が指導員として実施する教育訓練

 助成対象となる教育訓練となるか不明な場合は、管轄の労働局等にお問い合わせください。

Q:事業所内で研修を行う場合、講師が自社の従業員でもその者も含め助成金の対象になりますか。

A:事業所内で行う教育訓練において、自社の従業員が講師として研修を行う場合は、その者は通常の勤務となるため、助成金の対象とはなりません。

Q:教育訓練の過程で生産した商品を販売してもよいのですか。

A:雇用調整助成金の教育訓練は、生産ライン又は就労の場における通常の生産活動と区分して行われる必要があります。教育訓練過程で生産されたものを販売すると、通常の生産活動との区分が不可能となるため、支給対象外となります。


8 よくある質問、よくある勘違い、注意事項

Q:社員の全員を休業させないといけないのですか?

A:社員の全員を休業させる必要はありません。交替勤務、1時間以上の時短勤務でも助成金の対象となります。

Q:事業所は開いて営業を続けているのですが、助成金はもらえますか?

A:事業所は開いていても、従業員を休業させていれば、助成金の対象となります。

Q:事業所は閉鎖しているのですが、内勤、テレワークで業務を続けていますが、助成金はもらえますか?

A:助成金の対象となる「休業」とは従業員を休業させることを意味します。したがって、事業所を閉鎖していても、従業員を休業させていなければ、助成金の対象外です。

Q:事業活動が縮小したので、派遣会社との労働者派遣契約を中途解約しました。契約に基づいて休業手当相当額の損害賠償を行ったのですが、この場合、助成金は、どちらが請求できるのでしょうか。また、これから中途解約する場合、派遣元は雇用調整助成金が受けられるのであれば、違約金を支払わなくてよいのはないでしょうか。

A:派遣労働者と雇用関係のある派遣元が助成金の対象となります。

 派遣契約を中途解約する場合の損害賠償については、原則的に当事者間の契約によるため、契約書での合意内容に従う必要があります。ただし、派遣元が雇用調整助成金を受け取ることができることは、両当事者が想定していないような事態であるので、損害賠償の時期や金額については、話し合いで解決していただくのがよいでしょう。その際、派遣元が雇用調整助成金を受け取ることができるとは限らないこと、助成金の受取りは時間がかかること等に留意する必要があります。