不動産取引Q&A

1 賃貸借に関するご相談

Q:新型コロナウイルスの影響によって収入・収益が減り、従前どおりの賃料の支払いが困難です。支払いの免除・猶予・減額をしてもらうことはできますか。

A:

<飲食店等のテナント>

 家賃の免除・猶予・減額のためには、家主との交渉が必要です。

 2020年3月31日に、国土交通省は、不動産関連団体を通じて、賃貸用ビルの所有者など飲食店をはじめとするテナントに不動産を賃貸する事業を営む事業者に対して、新型コロナウイルス感染症の影響により、賃料の支払いが困難な事情があるテナントに対しては、その置かれた状況に配慮し、賃料の支払いの猶予に応じるなど、柔軟な措置の実施を検討するよう要請しました(http://www.mlit.go.jp/report/press/content/001339166.pdf

 この要請を受け、賃料の支払い猶予などの措置に乗り出した一部の事業者もいます。

 現段階では、賃借人の賃料支払義務が当然に免除・猶予・減額されるものではありませんが、国土交通省の要請や実際の事例等を踏まえて交渉をされてください。

<一般のマンションなど>

 家主との交渉の結果、免除・猶予・減額をしてもらうことはあり得るでしょうが、一般のマンションなどについては、特に行政から上記のような要請はされていません。

Q:新型コロナウイルスの影響によって収入・収益が減り、従前どおりの賃料の支払いが困難です。賃料の支払いができなかった場合でも、支払いができない原因が新型コロナウイルスであれば、債務不履行として契約の解除事由とはならないのでしょうか。

A:新型コロナウイルスの影響によって賃料が支払えなくなったとしても、賃貸借契約上の賃料支払義務を履行しなくていいということにはなりません。そのため、賃料の不払いの態様等によっては、解除事由となることも考えられます。

 なお、一般に、賃料不払いを理由に賃貸人から賃貸借契約を解除するには、不払いの態様等が、賃貸借契約上の信頼関係を破壊したといえるほどのものか、といった観点から解除の可否が判断されますが、新型コロナウイルスの影響等により一か月分の賃料が支払えなかったからといって、直ちに信頼関係を破壊したとは言い難いと考えます。

 賃料の不払いは貸主・借主双方にとって、負担になりますので、まずは貸主と協議されてはいかがでしょうか。

Q:大学に入学が決まったので、大学近くにマンションの一室を借りる賃貸借契約を締結済みです。大学での講義の開始が延期になったため、まだマンションには住んでいないのですが、賃料を支払う必要はありますか。

A:すでに賃貸借契約関係にあるため、実際に居住を開始していなかったとしても、賃料を支払う義務を負います。

Q:当社所有のテナントビルには共用の喫煙室があるのですが、いわゆる3密にあたるので、当面、利用できないようにするべきではないかとの意見がある一方、喫煙者から、利用を制限されたら困るとの意見もあがっています。どうしたらよいでしょうか。

A:共用の喫煙室は、まさに密閉、密集、密接の3密に該当するというべきケースが多いように思われます。感染していても症状がない場合も多く、テナント内で感染が拡大することは避けねばなりませんから、予防的な観点からは、施設管理権に基づくやむを得ない措置として、一時的に利用を制限することが望ましいです。

Q:当社はテナントビルに入居しているのですが、従業員が感染した場合、オーナー(管理会社)に連絡する必要はあるでしょうか。

A:ウイルスの感染力が強いこと、有効な治療法が見出されていないこと、重大な結果に至る可能性があること等(感染拡大防止目的)から、賃貸借契約上の付随義務として、オーナー(管理会社)に連絡すべきと考えられます。

Q:新型コロナウイルスの影響によって収入・収益が減り、従前どおりの賃料の支払いが困難になったので、賃貸人と借主で話し合って賃料を減額することにしました。何か気を付けることはありますか。

A:後々のトラブルを防止する観点から、減額する賃料の金額、賃料を減額する期間、期間経過後の賃料の取扱い(一定期間が経過したら元の賃料に戻すのか、どのような事情を考慮して決めるのか)等を合意書などのかたちで明確にしておくのが良いです。

合意書(例)はこちら

Q:新型コロナウイルス感染拡大の影響によって収入・収益が減り、従前どおりの賃料の支払いが困難です。行政の支援は何かないでしょうか。

A:

【家賃支援給付金】

5月の緊急事態宣言の延長等により、売上の減少に直面する事業者の事業継続を下支えする目的で、地代・家賃(賃料)の負担を軽減する給付金が支給されます。

7月14日(火曜日)より申請受付が開始されました。申請の期間は2020年7月14日から2021年1月15日までとされていましたが、2021年1月以降の新型コロナウイルスの感染拡大等を踏まえ、2021年2月15日(月曜日)24時まで申請期限が延長されています。詳しくは、中小企業庁の家賃支援給付金のHP等をご確認ください。

https://www.meti.go.jp/covid-19/yachin-kyufu/index.html


<支給対象(①②③すべてを満たす事業者)>

①資本金10億円未満の中堅企業、中小企業、小規模事業者、フリーランスを含む個人事業者(※)

※医療方針、農業法人、NPO法人、社会福祉法人など、会社以外の法人も幅広く対象となる。

②5月~12月の売上について、

・1カ月で前年同月比▲50%以上 または、

・連続する3カ月の合計で前年同期比▲30%以上

③自らの事業のために占有する土地・建物の賃料を支払い


<給付額>

法人に最大600万円、個人事業者に最大300万円を一括支給。

算定方法は、申請時の直近1カ月における支払賃料(月額)に基づき算定した給付額(月額)の6倍

詳細は、下記資料等をご参照ください。

https://www.meti.go.jp/covid-19/yachin-kyufu/pdf/yachin-kyufu.pdf


<申請要領・給付規程>

申請要領・給付規程等が経済産業省の下記HP上で公表されていますので、ご確認ください。

https://www.meti.go.jp/covid-19/yachin-kyufu/index.html


【住宅確保給付金】

行政が、賃借人に代わって、原則3か月間、賃料を支払ってくれる住宅確保給付金の支給対象者が、2020年4月20日から拡大されます。

https://www.mhlw.go.jp/content/000605807.pdf )。

これまでは、離職又は廃業した日から2年を経過していない方に限られていましたが、それに加えて、給与等を得る機会が当該個人の責に帰すべき理由・当該個人の都合によらないで減少し、離職又は廃業には至っていないが、こうした状況と同程度の状況にある方も支給対象に含めることになりました。年齢制限はないほか、雇われた方だけでなく、フリーランスの方も対象となります。

Q:賃借人から、賃料の免除・猶予・減額の申し入れがありました。応じなければいけないのでしょうか。

A:現状、応じる義務まではありません。飲食店をはじめとするテナントに不動産を賃貸する事業を営む事業者に対しては、国土交通省から、賃料の支払いの猶予に応じるなど、柔軟な措置の実施を検討するよう要請が行われており、可能であればこれを踏まえた対応が望ましいですが、義務付けではありません(http://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo16_hh_000201.html

 なお、賃料を減免した場合、税務上、損金処理が可能となります(https://www.mlit.go.jp/common/001340572.pdf )。

Q:賃借人から、今月の家賃が支払えないので、差し入れた敷金をこれに充てて欲しいとの連絡がありました。応じなければならないでしょうか。

A:賃貸借契約でそのように定められているのでもない限り、応じる義務はありませんが、支払いの猶予等も含め、賃借人と協議することが望ましいと思います。なお、実際に敷金を充当している例もあるようです。

Q:当社管理のテナントビルに入居するテナントで感染者が出た場合、他のテナントに告知しなければならないでしょうか。

A:賃貸人は、テナントに対して、賃貸借契約上、物件を安全に使用収益させる義務を負います。そのため、感染予防の観点から、建物の構造や用法等から感染の可能性が極めて低いといった事情でもなければ、賃貸借契約上の付随義務として、告知を求められるケースが多いと思われます。ただし、プライバシーには配慮する必要があり、少なくとも、感染予防に関連性の低い感染者の個人名の開示は適切ではないと思われ、仮に個人名等の情報開示が必要であれば、できるだけ本人の同意を得ておくことが望ましいと言えます。

なお、賃貸人としては、予め、テナントに対して、感染者が出た場合には(保健所とともに)速やかに報告すること、感染防止のために他のテナントに必要な範囲で情報を開示することを周知しておくのがよいです。

Q:テナントビルのオーナーです。ビルのテナントでクラスターが発生したため、ビルを3日間閉鎖することになりました。ビルの共用部分の消毒費用について、テナントに請求することはできますか。

A:コロナ感染者が出た場合の建物等の消毒等の作業に要する費用については、現時点で公費でまかなわれる等の対応は取られておらず、基本的には実施者の自己負担となっています。その場合において、クラスターが発生したテナントの専有部分についてはテナントの負担で実施されるべきと考えられますが、共用部分の消毒等に要する費用については、クラスターが発生したテナント側に、営業自粛要請にも関わらず「密」を解消するための対応を取らないまま漫然と営業を継続していた等のクラスター発生についての落ち度が認めらる場合でない限りは、オーナー側から法的権利として費用負担を求めることは難しいものと考えられます。いずれにしても、テナントビルとしての価値を維持するためには消毒作業を行うことは不可欠ですから、消毒作業等に要する金額、消毒する範囲、テナント側の上記「落ち度」の大小、テナントの事業の見通し等も踏まえ、オーナー側、テナント側とで柔軟な話し合いが望まれるところです。

Q:テナントビルのオーナーです。ビルのテナントでクラスターが発生したため、ビルを3日間閉鎖することになりました。各テナントに対して、この3日間の家賃の支払いを求めることはできるでしょうか。もしできない場合、クラスターを発生させたテナントにその補償を求めることはできるでしょうか。

A:賃貸借契約の定めによりますが、契約書上、特に定めがない場合、テナントが貸室を使用収益できなかった以上、他のテナントへの賃料の請求は困難です。

また、クラスターを発生されたテナントに対しても、漫然と従業員を出社させ感染予防を怠っていた等、賃借人の責めに帰すべき事情(過失)がない限り、当該テナントの家賃についても請求は困難と思われます(民法536条1項)。

Q:コロナウイルスの感染拡大を受け、行政から、無症状者・軽症者の収容のため、当社が経営するホテルを借り上げたいとの連絡がありました。空室率は高いのですが、反面、受け入れをする場合には風評被害のおそれもあると思われ、社内にはあまり協力したくないとの声もあがっています。応じなければならないのでしょうか。

A:新型インフルエンザ等対策特別措置法49条1項は、都道府県知事は、緊急事態宣言がなされた場合において、臨時の医療施設を開設するため、土地、家屋又は物資を使用する必要があると認めるときは、所有者及び占有者の同意を得て、当該土地等を使用することができることを定めていますが、この条項に基づく要請であれば、同意をしない限り、強制的に使用に供されることはありません。

一方で、同条2項は、所有者若しくは占有者が正当な理由がないのに同意をしない等の状況では、都道府県知事は、臨時の医療施設を開設するため特に必要があると認めるときに限り、1項の定めにかかわらず、同意を得ないで、使用することができると定めていますので、この条項を根拠とする場合には、応じざるを得ない可能性があります。

なお、いずれの場合であっても、使用に供した場合には、損失補償が行われます(同法62条1項)。

Q:当社所有のテナントビルでクラスターが発生しました。今後、行政によって強制的に使用を禁止されることはあり得るのでしょうか。

A:感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律や関連政令により、次の定めが設けられています。


①感染症の蔓延を防止するため、消毒により難いときは、期間を定めて、当該建物への立入りを制限し、又は禁止することができる

②それでも蔓延の防止ができない場合は、緊急の必要があると認められるときに限り、建物について封鎖その他蔓延防止のために必要な措置を講ずることができる


こういった措置は必要最小限度のものでなければならないとされていますが、ビルのオーナーとしては、早期から保健所の指示に従って協力することが望ましいといえます。

Q:当社が所有するテナントビルに入っていた飲食店ですが、新型コロナウイルス感染症の拡大により、目に見えてお客さんが減っていました。そして、ある日を境に店の営業をしなくなり、賃借人や連帯保証人には連絡がつかない状態です。どうやら夜逃げしたようですが、貸室の中には什器備品が残っている様子です。このまま置いておくわけにもいきませんので、当社で処分してもよいでしょうか。

A:賃借人が行方をくらました場合であっても、賃貸人において直ちに実力を行使して賃借物件に立ち入り、動産を整理したり原状回復を行うことは、法的には認められません。仮に強行した場合は、賃借人の財産権等の侵害の責任を問われる可能性があります。手間はかかりますが、管轄の裁判所に訴訟を提起し、明渡し等を命じる確定判決を得た上で、強制執行の手続を経るのが本来です。

Q:テナントの代理人に就任したという弁護士から、突然、「経営を続けることは不可能になった」「破産する」との連絡がありました。明渡しや原状回復費用、未払いの家賃等の支払いは得られるのでしょうか。

A:賃借人が破産手続の申立てをして、破産手続が開始された場合には、裁判所が、賃借人の財産の清算を行う破産管財人(弁護士)を選びます。したがって、この破産管財人と協議して、明渡しに向けて進めていくことが多いと思われます(事情によっては、破産手続の開始前に、テナントの代理人弁護士との間で協議を行うこともあります。)。

敷金を充ててもなお原状回復費用や未払の家賃等が残る場合、その残額は、破産債権となり、破産手続きの中で配当という形で支払いを受けることになります。賃借人の財産がどれだけ確保できるかによりますが、配当まで少なくとも数ヶ月以上を要するのが通例ですし、一般論としていえば、受けられる配当金はかなり少なく、配当を受けられないことも珍しくありません。


2 売買に関するご相談

Q:売買契約を締結し、手付金を受け取っていましたが、決済までの間に新型コロナウイルス感染症の拡大による業績悪化を理由に、買主が売買契約を白紙解約したいと言ってきました。契約書には「天災地変その他不可抗力により本契約が履行不能な場合には、売買契約を解除することができる。」との記載がありますが、解除に応じなければならないのでしょうか。

A:この条項は通常、対象物件の物理的な損壊、滅失を想定した条項です。

 資金調達ができないことと、新型コロナウイルス感染症拡大との間に因果関係があるのかという問題もあり、白紙解約に応じる義務はないと思われます。履行に着手していない段階であれば、手付解約として売主は手付を没収することができます。

Q:建築条件付き土地売買で、土地の売買の決済は終えて、売主の指定業者と工事請負契約を締結し、工事は着工しています。しかし、感染症拡大により設備資材の納入が大幅に遅れるとともに、職人の一人が感染したとして現場の職人全員が濃厚接触者として自宅待機となり、工期に間に合わないとの連絡を受けました。施主としては、引っ越しの遅れによる現在の自宅の賃料や工期遅延による請負契約上の遅延損害金の支払いを求めることはできるでしょうか。

A:資材の代替性や請負業者の規模、人員にもよりますが、工期遅延が不可抗力によるとして遅延損害金を請求できない場合も多いと思われます。

 国土交通省は、施工中の工事における、新型コロナ感染症の影響に伴う資機材調達困難や感染者発生等については、建設工事標準約款に定める「不可抗力」にあたるものとして、工期の延長を請求でき、増加する費用については、受発注者間で協議して定めるものとする通知を出しています(https://www.mlit.go.jp/common/001341799.pdf)。

 賃料負担の増加についても同様に考えられ、また、住宅ローンの返済が始まっていない場合には、施主側に損害が発生したとも言えないので、請負業者にその負担を求めることはできない可能性が高いと思われます。

 なお、設備資材の納入遅延の場合には、設置未了で未完成状態でも完了検査を認める措置がとられています(https://www.kensaibou.or.jp/news_release/files/20200228_coronavirus_mlit_02.pdf

 完了検査を受けられれば、住宅ローンの実行が可能となりますので、受注業者は資金繰りの面で救済されます。しかし、施主側は設備設置未了で生活はできないので、住宅ローンの返済と賃料負担という二重の負担を負うことになりかねません。引き渡しを受けるか否か、設備の在庫品への変更可否など慎重に検討する必要があります。

Q:飲食店の店舗を居抜きで購入する売買契約をし、手付金を支払って、決済日は3カ月後でした。決済日までは売買対象の店舗で売主が営業を継続することになっていたのですが、そこで新型コロナウイルス感染者のクラスターが発生し、店舗名や店の外観等が報道されました。保健所の指導もあって当面営業再開は無理ですし、このようなニュースになって風評被害もあるので、同じ場所での営業は難しく、売買契約を白紙解除したいのですが、可能でしょうか。

A:売買契約の内容を確認する必要がありますが、当該店舗で飲食店経営を目的としたものであることから、履行不能による契約解除(民法543条)が可能となる余地はあると思われます。

一方、飲食店で感染症発生のリスクが指摘されていますので、感染防止対策をどこまで講じていたかにもよりますが、適切な防止措置を講じていてもなお、感染者が発生した場合には、債務者の責めに帰することができない事由によるとして、解除は認められないこともあるでしょう。

Q:投資用のテナントビルの売買で、買主が外国人です。売買代金の10%の手付金を受け取っており、決済日は1ヶ月後なのですが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、決済日に入国できなくなりました。買主には購入意思があり、買主の居住国は感染症が終息しつつあるのですが、日本での感染が終息していないため、当該国からの入国制限がかかっています。買主がいつになったら日本に入国できるかも分からないので、契約を白紙解除したいのですが、可能でしょうか。また、決済日を延期するとして、どのようなことに注意したらよいでしょうか。

A:買主には購入意思があるのであれば、白紙解除はできず、手付倍返しでの解除とならざるを得ないと思われます。

解除せずに決済日を延期する場合には、延期後の決済日を定めるとともに、延期後の決済日時点で決済不可能な状況が解消されていない場合の契約の処理(白紙解除を認めるのか否か)等を明確に合意しておく必要があります。


3 仲介に関するご相談

Q:不動産の賃貸借契約を予定しています。緊急事態宣言が出され、外出自粛が求められていますし、感染防止のためにも、面と向かっての賃借人への重要事項説明はできれば避けたいと考えています。何か方法はありますか。

A:賃貸借契約の場合、いわゆるIT重説(重要事項説明をテレビ会議等のITを活用して行うもの)の方法を用いることが可能です。

 ただし、次の要件を満たすことが求められます。

(1)宅地建物取引士及び重要事項の説明を受けようとする者が、図面等の書類及び説明の内容について十分に理解できる程度に

映像を視認でき、かつ、双方が発する音声を十分に聞き取ることができるとともに、双方向でやりとりできる環境において実施している

こと。

(2)宅地建物取引士により記名押印された重要事項説明書及び添付書類を、重要事項の説明を受けようとする者にあらかじめ送

付していること。※PDFファイル等による電子メール等での送付は認められない。

(3)重要事項の説明を受けようとする者が、重要事項説明書及び添付書類を確認しながら説明を受けることができる状態にあること

並びに映像及び音声の状況について、宅地建物取引士が重要事項の説明を開始する前に確認していること。

(4)宅地建物取引士が、宅地建物取引士証を提示し、重要事項の説明を受けようとする者が、当該宅地建物取引士証を画面上

で視認できたことを確認していること。

 なお、宅地建物取引士は、ITを活用した重要事項の説明を開始した後、映像を視認できない又は音声を聞き取ることができない状況が生じた場合には、直ちに説明を中断し、当該状況が解消された後に説明を再開することが必要です。

 国土交通省の「ITを活用した重要事項説明 実施マニュアル」にて、望ましい対応が詳細に説明されていますので、詳しくはこちらをご確認ください。

https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001397149.pdf)

Q:不動産の売買契約を予定している売主側業者です。売買契約が4月末に予定されています。買主は遠隔地に住んでおり、緊急事態宣言を受けて、移動や直接会うことは可能な限り避けたいと考えています。この異常事態でも、重要事項説明は必要でしょうか。必要だとして、IT重説によることは可能でしょうか。

A:売買契約の場合、重要事項説明を省くことはできません。

 社会実験を経て、令和3年3月30日より、不動産売買においてもIT重説の本格運用が開始されました。
 要件、実施方法については国土交通省から実施マニュアルが公表されています。

 「ITを活用した重要事項説明 実施マニュアル」 (https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001397149.pdf)

Q:居住用の賃借物件で、前入居者(単身)が新型コロナウイルス感染症に感染し、自宅療養をしていたのですが、容体が急変してお亡くなりになりました。その事実について、次の入居者の募集時に心理的瑕疵として説明する必要はあるでしょうか。

A:当該物件で感染者が居住していた事実は対外的には公表されることはないですし、適切な除染を行えば法律的には心理的瑕疵に該当しないと思われますので、説明義務はないと思われます。

Q:当社は売主から依頼を受けた仲介業者です。当社の仲介により不動産の売買契約が成立し、手付金の授受も行われたのですが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、買主が手付金を放棄して、売買契約を解除しました。当社は売主に対して、媒介契約で定めた仲介手数料の支払いを求めることはできるでしょうか。

A:媒介契約において手付解除の場合の仲介手数料の合意が行われていれば、その定めに従うことになります。

一方で、そのような合意がない場合には、ある程度の支払いを受けることは可能ですが、媒介契約で定めた金額全額の支払いを得るは困難と思われます。すなわち、一般に、仲介による報酬の請求権は売買契約の成立によって発生しますが、媒介契約で合意された仲介手数料の金額は、売買契約が成立し,その履行がされ,取引の目的が達成された場合について定められているものであるため、手付解除の場合に直ちに適用されるとは限りません。そして、媒介契約における約定の適用がないとされる場合には、取引額、仲介の難易、期間、労力のほか、手付金放棄による解除がなかったとした場合に仲介業者が受領し得たはずの約定報酬額、解除によって売主が現実に取得した利益の額等をも総合的に考慮して定めるべきことになります。


4 マンション管理組合に関するご相談

Q:マンションの管理組合の総会や理事会ですが、3密を避けるようにいわれているので、開催できません。書面決議やWEB会議で開催することは可能でしょうか。今回のようなことは想定していないので、管理規約には何も規定はありません。

A:区分所有法上、毎年1回一定の時期に集会を招集し、管理者または理事はその事務を報告する必要があります。

標準管理規約では会計年度開始後の2か月以内の集会招集を定めているところが多いと思われます。

しかし、前回開催時から1年以内に開催することが求められているわけではなく、集会を開催できる状況となった時点で、本年中に開催すればよいとされています(http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00024.html

通常総会を開催した場合には、委任状や書面による議決権行使(区分所有法39条2項)の方法で、3を避ける方法で行うといった工夫も考えられます。

感染症が終息せず、本年度内に通常総会を現実に開催できない場合には、区分所有者全員の承諾により書面又は電磁的方法での決議を行うことも可能であり(区分所有法45条)、電磁的方法にはWEB会議での承諾もありえると思われます。

Q:当マンションでは管理業務を管理会社に委託していますが、マンションで感染者が出た場合に備えて、管理組合として準備しておいた方がよいことを教えてください。

A:ウイルスの感染拡大を受け、多くの管理会社が業務を縮小しています。実際に感染者が出た場合には、管理会社が撤退して、全くサービスの提供を受けられない可能性も想定されますので、最低限、共用部分の清掃やゴミの分別・収集場所への移動を誰が担当するのかといったことは、予め決めておくのがよいと思われます。

また、共用部分の消毒に関しても、消毒作業を業者に頼むか否か、頼むのであれば費用の確認、自分達で行うのであれば消毒箇所や方法、必要な物資の準備、作業の割当といったことを検討しておくとスムーズでしょう。

Q:大規模修繕工事の施工業者の作業員に感染が発覚し、工事が当面中止となりました。今後のことは未定とのことですが、予定の工期に間に合わなかった場合、違約金の支払いを求めることはできるでしょうか。

A:感染者が出た場合に、感染力の強さや有効な治療法が見出されていない現状では、工事は一定期間止めざるを得ない場合も想定されます。そのこと自体、特段の事情がない限り、業者に帰責事由があるとは考えづらいと思われます。感染拡大防止の目的や、職人の確保といった面で合理的と判断される期間、工事が止まり、その分工期が遅れたということであれば、違約金の支払いを求めることは難しいと考えられます。

Q:売買契約を締結し、決済日が近づいています。緊急事態宣言による外出自粛要請や業績悪化も受けて、決済は実行したいが、決済準備や資金の準備が遅れそうなので、買主から決済日を延期してほしいと言われていますが、どうすればよいでしょうか。

A:売主側としても、決済資金を前提に様々な計画をされているとは思いますが、買主と協議して決済日の延期を含めた柔軟な対応を検討した方がよいでしょう。ただし、不透明な状況ではありますが、決済日をいつまで延期するのか、延期後の決済の実行が困難となった場合にどうするのかを決めておいた方がよいでしょう。