労務相談Q&A

1 緊急事態宣言による自粛要請の法的根拠

Q:緊急事態宣言に基づいて都道府県知事が行う営業休止(休業)の要請にはどのような法的根拠があるのでしょうか。

 居酒屋は夜の8時までとするよう要請されていますが、どのような違いがあるのでしょうか。

A:新型インフルエンザ対策特別措置法では、緊急事態宣言が発令された場合、対象地域の都道府県知事は、感染を防止するために以下のような措置を講じることができると定めています。

①(外出自粛要請)住民に対し、生活の維持に必要な場合を除きみだりに当該者の居宅等から外出しないことその他の感染の防止に必要な協力の要請(45条1項)

②(施設の利用制限等)学校、社会福祉施設、興行場その他の政令で定める多数の者が利用する施設を管理する者等に対し、施設の使用の制限・停止、催物の開催の制限・停止等の要請(同条2項)

③(施設管理者等に対する指示) 施設管理者等が正当な理由がないのに要請に応じないとき要請に係る措置を講ずべきことの指示(同条3項)

 ②の「要請」とは、必要なことが実現できるように協力を求めることを意味します。したがって、強制力はなく、罰則もありません。③の「指示」は要請より強い意味合いがあるものの、同じく強制力はなく、罰則もありません。なお、上記②の要請や③の指示がなされた場合には、対象となる施設等が公表されますので(同条4項)、要請や指示に反して施設の利用等を継続している場合には、そのことが周囲の人から見ても明らかとなります。

 2020年4月には、緊急事態宣言を受けて、②の営業休止(休業)を要請する施設は、遊興施設、劇場、集会・展示施設、運動・遊戯施設、1000㎡以上の文教施設・大学・学習塾・商業施設等と定められました。

 これに対し、居酒屋を含む小売店等は、上記①の「感染防止に必要な協力の要請」として、営業時間等について自主的な協力を求めているものです。

 このように新型インフルエンザ対策特別措置法では、行政の取りえる手段には限りがあり、諸外国のような「ロックダウン」「都市封鎖」は、法律上はできないことになっています。

 しかし、だからといって、「協力の要請」、「要請」、「指示」に従わなくてよい、ということにはなりません。新型コロナウィルスの感染拡大を防止するためには、できるだけ多くの国民が協力して外出等、感染リスクのある状況を回避することが重要です。企業の社会的責任という観点からも、リモートワークの活用等も含めて、できるだけ感染リスクを軽減することが重要となります。

Q:緊急事態宣言の対象外の地域で、非常事態宣言の発令や自粛要請がなされていました。どのような違いがあるのでしょうか。また、緊急事態宣言が解除された後、同様の地域独自の自粛要請等がなされた場合についても、どう捉えればよいでしょうか。

A:2020年4月17日に緊急事態宣言の対象が全国に拡大されましたが、それ以前に都道府県知事が、独自に「緊急事態宣言」「緊急事態宣言」等を発令したり、「夜間の営業自粛要請」「外出自粛要請」「首都圏等への出張自粛要請」などの「自粛要請」を出していました。

 これらの宣言、要請は、法律上の根拠はなく、都道府県知事が独自の判断で自主的な判断で協力を求めているものです。強制力や罰則はありませんが、企業の社会的責任の観点から、できるだけ協力することが求められます。

 緊急事態宣言解除後の地域独自の自粛要請等についても、同様にお考えください。


2 社員に感染者、感染疑い者が発生した場合の対処法と休業手当

Q:事業所で社員の感染者が出ました。どのように対処すればよいですか。

A:保健所の指示に従いますが、以下のような事項を実施、検討する必要があります。

① 職場その他ウイルスが付着したおそれのある場所の消毒

② 感染リスクに応じて営業の休止

③ 感染した従業員の行動調査、報告

④ 濃厚接触者の判定のための調査への協力

⑤ 従業員の中で濃厚接触者が判明した場合には、当該従業員に対する自宅待機等の命令

⑥ 感染のおそれのある取引先、顧客等への連絡、対外的公表の可否の判断

Q:新型コロナウイルスに感染した社員が休業した場合の給与の扱いはどうなりますか。

A:新型コロナウイルスに感染した場合、感染症予防法第18条2項により、就業制限がなされます。この場合、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないと考えられますので、給与はもちろん、労働基準法第26条の休業手当も支払う必要はありません。

 従業員としては、要件を満たせば、健康保険による傷病手当金を別途請求することができます。

Q:体調の悪そうな社員がいます。自宅に待機するよう命じてよいのでしょうか。その場合の給与の扱いはどうなりますか。

A:熱、咳など体調不良のある従業員については、当該地域の感染状況、海外渡航歴や本人の行動履歴等にもよりますが、新型コロナウイルスに感染しているおそれがあり、感染防止の観点から自宅待機を命じるべきでしょう。

 本人から自主的に病欠の申し出があった場合、または、本人の申し出がなくとも、体調不良により仕事ができないと判断される場合には、欠勤扱い(有給休暇を使用する場合は有休扱い)となります。

 他方、会社が感染防止の観点から、社員に就労意欲と能力があるにもかかわらず、自宅での待機を命じた場合には、会社の都合による休業にあたります。この場合、労働基準法第26条により60%以上の休業手当を支払う必要があります。また、就業規則で上積みをしている場合には、就業規則で定められた休業手当を支払う必要があります。

 もっとも、法令・規則で定められた以上の手当を支払うことは可能です。自宅待機により収入が減少するとなると、社員は、体調不良があっても自主的に申告してこない可能性があります。自主申告を促す観点からも、自宅待機を命じた場合でも、100%の休業手当を補償するという対応も考えられます。

Q:社員が濃厚接触者の疑いがあるとして、保健所から調査が入りました。PCR検査は陰性でした。本人は大丈夫なので出勤すると言っているのですが、自宅待機を命じてよいでしょうか。その場合の給与はどうなりますか。本人に有給休暇を取得するよう命じてもよいのでしょうか。

A:PCR検査が陰性であっても、偽陰性の可能性があります。

 感染者との接触の時期、態様等を勘案して感染リスクの有無を判断して下さい。感染リスクがあると判断した場合には、自宅待機を命じることも考えられます。この場合、60%以上の休業手当(就業規則で上積みをしている場合は規則で定めた金額)を支払う必要があります。

 なお、年次有給休暇は、原則として労働者の請求する時季に与えなければならないもので、会社が有給休暇を取得するよう指導することは認められません。

Q:社員の家族に感染者が出ました。どのように対処したらよいでしょうか。

A:当該従業員が濃厚接触者と判定される可能性が高く、直ちに自宅待機を命じて保健所に相談すべきです。この場合、当該従業員の感染が判明したり、就業できない状態にならない限り、労働基準法第26条により60%以上の休業手当を支払う必要があります。これを上回る補償を行う対応はもちろん可能です。

Q:従業員の夫が勤務している病院で感染者が出ました。会社としては就業を認めたいのですが、他の従業員から出勤を停止してくれ、との申し出があります。嫌そうな顔をする人もいて、本人も精神的に落ち込んでいます。どうしたらよいでしょうか。

A:①情報の正確な把握

 まずは情報を正確に把握することが大切です。当該従業員から可能な限り具体的に聞き取りを行いましょう。報道や夫が把握されている限りですから限界はあるでしょうが、聴取事項としては、夫の仕事内容・就労日時・就労場所、感染者がどういった方なのか(職員なのか、利用者なのか。職員であれば、どこで、どのような仕事をしているのか。利用者であれば何科の利用者で、院内のどこを移動したのか、外来患者なのか入院患者なのか等)、いつから症状があっていつ感染が発覚したのか、夫と感染者(及び濃厚接触者)との接触の有無・回数・期間・態様・環境、感染者が入院患者であれば看護状況、院内感染の発生の有無・規模といったものが考えられます。

②説明

 こうしたヒアリングを行うことで、感染の可能性がどの程度想定されるか、具体的なイメージを持つことができた場合、感染の可能性が低いと考えられるのであれば、(当該従業員の心情を聞いた上で、就労を希望するのであればその了解のもと)そう判断される根拠を含め、他の従業員に丁寧に説明して、理解を求めることもあり得るでしょう。

 一方で、感染の可能性が決して低くないと考えられるとか、情報が少なくて合理的な判断ができない、或いは丁寧に説明しても他の従業員達の理解を得ることができないということであれば、会社としては、当該従業員に理解を求めることもやむを得ないかもしれません。ただ、その場合であっても、当該従業員自身に責められるべき事情があるわけではありませんし、同僚の態度により心理面でダメージを受けているでしょうから、会社としては極力寄り添った対応が望ましいと思います。

③休業手当

 会社が、感染防止の観点から、当該従業員に就労意欲と能力があるにもかかわらず、自宅での待機を命じた場合には、労働基準法第26条により60%以上の休業手当(就業規則で上積みをしている場合には規則で定めた金額)を支払う必要があります。

Q:新型コロナウイルスに関連した雇用調整助成金制度について教えて下さい。

A:新型コロナウイルスの影響で事業活動の縮小を余儀なくされた事業主に対し、雇用を維持するために支払った休業手当の一部を助成する「雇用調整助成金」があります。新型コロナウイルスに関連して、2021年6月末までは「緊急対応期間」として、支給要件が大幅に緩和され、助成率も高くなっています。

 ①判定基礎期間の初日が令和3年4月まで(上限は1人1日15,000円)

  中小企業:解雇等を行わないで雇用を維持している場合→10分の10  それ以外→5分の4

  大企業 :原則  解雇等を行わないで雇用を維持している場合→4分の3  それ以外の場合→3分の2

       業況特例・地域特例(※)を満たす場合  解雇等を行わないで雇用を維持している場合→10分の10  それ以外→5分の4

 ②判定基礎期間の初日が令和3年5月以降(上限は原則13,500円で、業況特例・地域特例に該当で15,000円)

  中小企業:解雇等を行わないで雇用を維持している場合→10分の9  それ以外→5分の4

  大企業 :解雇等を行わないで雇用を維持している場合→4分の3  それ以外の場合→3分の2

  業況特例・地域特例(いずれも企業規模を問わない)(※):解雇等を行わないで雇用を維持している場合→10分の10 それ以外→5分の4


  ※ 業況特例:売上高等の生産指標が最近3ヶ月平均で前年又は前々年同期に比べ30%以上減少している企業

    地域特例:緊急事態宣言の対象区域・まん延防止等重点措置を実施すべき区域において、都道府県知事の要請を受けて営業時間の短縮等

         に協力する事業主

       → 緊急事態措置やまん延防止等重点措置を実施すべき期間を通じ、要請等の対象となる施設(飲食店、劇場、映画館、百貨店、

         体育館、水泳場、ボーリング場、博物館、美術館、図書館など)の全てにおいて、休業、営業時間の変更、収容率・人数上限の

         制限、飲食物提供(利用者による酒類の店内持ち込みを含む)又はカラオケ施設利用の自粛に協力することが必要


 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html

Q:当社では、正社員には会社都合で休業した場合に80%の給与を補償するとの就業規則がありますが、パート・アルバイトにはそのような規定はありません。パート・アルバイトは法定の60%の休業手当の支払いでよいでしょうか。

A:正社員と同様、80%の休業手当を支払う必要があります。

 いわゆる働き方改革関連法の施行により、2020年4月1日より、正規社員と非正規社員(有期、パート・アルバイト、派遣)との間の不合理な待遇差の解消を目指して、同一労働同一賃金制度が導入されています。

 同一労働同一賃金制度においては、待遇のそれぞれにつき、当該待遇に対応する正規社員の待遇との間において、業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」といいます。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならないこととされます。

 この点、就労が可能な状態なのに会社の判断で社員を休業させた際に、正規社員と非正規社員との間で待遇を異にすることに合理的な理由は想定しづらく、不合理な相違として、違法の評価を受ける可能性が高いと思われます。正社員の待遇を引き下げるためのハードルは高いですし、同一労働同一賃金制度の導入にあたって、そのような対応は推奨されておらず、パート・アルバイトへの補償も、正社員と同等の水準とすることが必要と思われます。

 なお、有期、パート・アルバイトに関しては、中小企業への同一労働同一賃金制度の導入は2021年4月1日ですが、同一労働同一賃金制度導入前の判例でも、正規・非正規間での不合理な待遇差を違法とする判断が行われていますので、同様に考えることが適切と思われます。

Q:パート・アルバイトの労働契約書では、給与は時間給、勤務時間について「シフトによる」と定めています。感染が疑われることから自宅待機を命じたのですが、この場合、仕事をしていない以上、給与は支払わなくてよいのでしょうか。勤務日数・時間が雇用契約書に記載されている場合はどうなるのでしょうか。

A:パート・アルバイトについても、会社側の判断で休業させた以上、最低限、労働基準法26条の休業手当の支払いが必要です。

 休業手当については、「平均賃金」の60%以上とすることが求められていますが、「平均賃金」とは、「これを算定すべき事由の発生した日以前三箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額」です(期間については、賃金締切日がある場合においては、直前の賃金締切日から起算することとされています。労働基準法12条1項、2項)。

 したがって、休業手当は、労働契約書上、単に「シフトによる」とされているか、それとも所定労働日数が明記されているかに関わらず、過去3か月間の実績に基づいて計算して、休業手当の支払いを行うことになります。


3 職場の感染防止対策、テレワーク

Q:職場の感染防止対策としてどのようなことに気を付ければよいでしょうか。

A:一般的な感染防止対策としては、以下の点が挙げられます。

1 基本的な対策

 ①咳エチケットの徹底(必要なマスク等の防護具の支給を含む)、②手洗い等の徹底、③日常的な健康状態の確認、④十分な栄養摂取と睡眠

2 クラスター発生防止対策

 ①三密(密閉、密集、密接)を満たす社内行事の中止、②職場の換気、③在宅・テレワーク・時差出勤、④会議・打合せの回避、⑤2m以上の距離の確保、⑥社員食堂の座席数減や喫煙場所の利用制限

3 風邪症状が出た場合の対応

 風邪症状が出た場合の「出勤しない」「出勤させない」の徹底

4 感染者、感染疑いが出た場合の対応

 ①不利益取扱い、差別禁止の徹底、②感染者等の情報の速やかな周知、③感染者等が出た場合の対応の徹底


 上記に加え、小売業、サービス業、医療・介護等、人と接触する可能性の高い職種の場合には、より高度な感染症対策が求められます。

Q:管理部門の社員をテレワークに切り替えましたが、労働時間管理はどうすればよいでしょうか。これまでテレワークを採用したことがなく、専用のシステムなどもないので、どのように対応したらよいかわかりません。

A:総論的には、以下のガイドラインが参考になります。

① 厚生労働省 「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/shigoto/guideline.html

② テレワーク中の時間管理については、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000187488.pdf

 具体的な労働時間管理方法については、

③ 「テレワーク導入ための 労務管理等Q&A集 - 厚生労働省」(http://www.tw-sodan.jp/dl_pdf/13.pdf )の

 Q2-2【テレワーク時にはどのように労働時間を管理すればよいですか?】の記載が参考になります。

 なお、一例を挙げると、パソコンの使用時間、専用のシステムを供用している場合はそれへのログイン・ログオフの記録、メールの送受信の記録等を参考に労働時間管理をすることが想定されます。

 ちなみに、現在ご自身の会社で導入している勤怠管理システムの会社に問い合わせすることも有用でしょう。一部の製品では、テレワークに対応したソフトの提供等も行っています。

Q:マスクを着用しない、夜カラオケに行く、飲み会に行く等、感染防止意識の低い社員がいます。どうしたらよいでしょうか。

A:使用者からの業務命令は、企業の運営上必要かつ相当なものでなければならず、必要性または相当性が欠ける場合は無効となります。

 会社で用意したマスクの就業時間中の着用は、感染防止の必要性、感染が発生した場合の結果の重大性、マスク着用に伴う従業員らの不利益がさほど大きくないことなどから、許容されます。

 一方で、自社の従業員だからといって、その私生活をコントロールすることまでは認められませんので、業務命令として、終業後の行動を広く制限することには慎重であるべきです。取引先との親睦会等、業務に関連したものであれば、業務命令により禁止することも可能ですが、純粋にプライベートな領域に関しては、業務命令としての制限は困難といわざるを得ません。

 もっとも、使用者は、他の社員との関係でも安全配慮義務を負い、感染拡大防止のための措置を講じることはできますから、そのために必要な範囲で、従業員教育を実施することはできます。感染防止意識の低い社員に対しても、感染防止対策の必要性を説明し、プライベートな行動であっても、感染した場合のリスクを説明し、粘り強く、丁寧に、理解を求めることが必要と思われます。

Q: 受け入れている派遣労働者についてもテレワークを導入することにしたのですが、派遣契約や情報管理など留意すべき点を教えてください。

また、派遣元事業主が講ずべき指針、派遣先が講ずべき措置に関する指針では、定期的に派遣労働者の就業場所を巡回することが求められていますが、テレワークを実施した場合にこの点はどう対応すればよいのでしょうか。

A:派遣契約において派遣労働者の就業場所の指定が必要ですが、テレワークを導入する場合には「テレワークの場合は就業場所を派遣労働者の自宅とする」と変更合意する必要があります。

テレワークを導入する場合、業務管理の観点で派遣労働者の自宅の住所を派遣先が把握する必要が生じる場合もありますが、派遣会社に連絡の上、使用目的を明示したうえで派遣労働者の同意のもとに派遣労働者又は派遣会社から自宅の住所の情報提供を受けることは可能です。

テレワークでは、労働者への業務用のモバイル端末の貸与や機密情報の管理が問題となりますが、誓約書の提出やシンクライアント端末を貸与するなど、労働者個人の手元で機密情報が保存、管理する必要がない措置を講じる等の検討が必要でしょう。こうした機器の導入には、「働き方改革推進支援助成金(新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース)」なども利用できます。

派遣労働者の就業状況や派遣契約違反がないことの確認を目的に、派遣労働者の自宅を巡回することまでは不要であり、電話、メール、WEB会議等で就業状況を確認できれば問題ありません。


4 事業を一時的に休止、縮小する場合の対応(一時帰休、ワークシェアリング等)

Q:飲食業をしています。新型コロナウイルスの影響で売上が急減したため、当面の間、休業することにしました。従業員に対する補償はどうしたらよいでしょうか。

A:「使用者の責めに帰すべき事由」により従業員を休業させた場合には、労働基準法第26条により60%以上の休業手当(就業規則で上積みしている場合には、規則で定める金額)を支払う必要があります。

 この「使用者の責めに帰すべき事由」がないとするためには、①その原因が事業の外部より発生した事故であること、②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であることの2要件を満たす必要があると解されています。

 飲食業の種類にもよりますし、企業規模、業績、緊急事態宣言の発令の有無や都道府県知事からの要請の内容等によりますが、新型コロナウイルス感染拡大による飲食店の急激な売上減は①の要件(外部的な要因による事故)を満たすと考えられるため、②の要件(最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故)を満たす場合には、「使用者の責めに帰すべき事由」がないとして、休業手当を支払う必要はありません。ただし、行政の協力依頼や要請を受けて営業を自粛し、労働者を休業させる場合であっても、一律に労働基準法に基づく休業手当の支払義務がなくなるわけではないこと(厚生労働省の新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)「4 労働者を休ませる場合の措置」(休業手当、特別休暇など)」の問7。https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html#Q3-3 )、また、雇用調整助成金について拡充措置が取られていること(上記2「社員に感染者、感染疑い者が発生した場合の対処法と休業手当」の7つ目のQをご参照ください)等からすると、②の要件を満たすか否かは慎重に検討する必要があります。

Q:アパレルショップを経営しています。入っているテナントビルが緊急事態宣言を受けて全館閉鎖となりました。従業員に対する補償はどうしたらよいでしょうか。

A:企業規模や業績にもよりますが、販売員が在宅業務を行うことは困難ですし、物理的に営業が不可能であることから、使用者の責めに帰すべき場合とは言えず、休業手当を支払う必要はありません。

 ただし、それでは従業員の生活が困難となりますし、営業再開後までの雇用確保も困難となりますので、雇用調整助成金なども活用して、少なくとも60%の休業手当を補償することも検討すべきでしょう。

Q:ホテル(旅館)を経営しています。新型コロナウイルスの影響で、宿泊者が1割に落ち込み、今後も回復が見込めないため、8時間・6名/日で回していたシフトを、8時間・3名/日に減らすことにしました。シフトに入っていた従業員は10名です。どのように対処したらよいでしょうか。

A:経営上の必要性によりシフト変更による余剰人員の削減を行う場合、それが一時的なものなのか、将来も続くものなのかを見極める必要があります。その上で、解雇等により人員削減を行うのか、雇用は維持しつつ、ワークシェアリングで乗り切るのかを判断する必要があります。

 人員削減を行う場合には、整理解雇の要件を満たす必要があります。

 人員削減を行わず、ワークシェアリングで乗り切る場合には、その間の休業した場合の手当の支払いをどうするのか、ワークシェアリングの方法を決定する必要があります。労働基準法第26条の休業手当(60%以上)については、事業を継続し、かつ助成金等がある以上、その支払いが求められる可能性が高いです。経営体力がある場合には、従業員の生活を補償するため上積みの給付も検討してもよいでしょう。そのうえで、従業員個々人の状況、希望、通勤等による感染リスクの程度等を勘案して、ワークシェアリングの方法を協議していただく必要があります。

Q:新型コロナウィルスの影響で売上げが減ったため、出勤する従業員を大幅に減らすことになりました。その場合、通勤による感染リスクの低い者を出勤させ、遠方の者を欠勤扱いとしてよいでしょうか。

A:当面の間ワークシェアリングを行う場合、欠勤した場合の休業手当等の支払いの程度や、個々人の状況、通勤による感染リスク等を考慮して判断することになります。できるだけ従業員間で協議してもらうのが好ましいです。最終的には、どのようなシェアリングを行うかは会社が判断することになりますが、不合理・不公平な判断にならないよう、従業員の希望やそれぞれの置かれた状況等を聴取して判断して下さい。

Q:当社は飲食店で4店舗を経営しています。1店舗を閉店することになり、3店舗は経営を続けていますが、いずれも県外になります。勤務地限定で採用した社員について、他の店舗に勤務させることは可能でしょうか。社員がそれを拒否した場合、解雇してもよいでしょうか。

A:本人の了解のもとに異動を命じることは可能と思われます。

 ただし、緊急事態宣言が発令されている地域の内外を含めて、全国的に移動制限をすることが求められている状況下において、それを実施することが必要不可欠かどうかも、感染症拡大防止の観点から慎重に検討する必要があります。

 また、従業員の同意が得られない場合、異動は雇用維持のための措置でもあるので、後に整理解雇を行う場合には、解雇回避努力を行った事情として考慮される場合もあると思われます。ただし、その前段階として店舗休業中の従業員の雇用を確保し、60%の休業手当を補償して雇用調整助成金を活用する等の対応も検討すべきでしょう。


5 事業を縮小、休止する場合と非正規雇用の対応

Q:製造業をしています。新型コロナウイルスの影響で発注量が7割に落ち込みました。派遣打切り、アルバイト・パートの削減を検討していますが、どのような点に注意したらよいでしょうか。

A:

<派遣について>

 厚生労働省からは、労働者派遣契約の安易な中途解除は行わないよう派遣先の事業主に対する要請がなされています。やむを得ず、労働者派遣契約を中途解除する場合には、労働者派遣法第29条の2に基づく労働者派遣契約の解除に当たって講ずべき措置や、派遣先の講ずべき措置に関する指針に基づき適切に対応する必要があります。

<アルバイト・パートの削減>

 アルバイトやパート等の非正規社員だからといって、経営難を理由に当然に解雇することができるわけではありません。以下の点に留意してください。

(期間の定めのない雇用契約の場合)

 経営難を理由とした人員整理に伴う、いわゆる「整理解雇」の場合、以下の4つの要素を総合的に判断して、解雇権濫用か否かが判断されます。

①人員削減の必要性(客観的に経営危機にあり、人員削減がやむを得ない場合であること)

②解雇回避努力義務(新規採用抑制、希望退職の募集、配転など人事異動、退職勧奨など)

③人選の合理性(合理的な人選基準を設定し、それを適切に運用すること)

④労働組合等の協議(労働組合や当該従業員と十分協議すること)

 整理解雇の要件を満たす場合でも、いわゆる非正規社員であることのみを以て整理解雇の対象人員とすることは、人選の合理性を満たさないと判断されるおそれがあります。

 企業の実情や正規、非正規を問わず、従業員の置かれた状況を勘案し、労働組合や従業員と十分に協議をした上で決定する必要があります。

(有期雇用契約の場合)

 アルバイト・パートを有期雇用期間中に解雇する場合、使用者は、「やむを得ない事由」がある場合でなければ、解雇できません(労働契約法第17条)。「やむを得ない事由」は通常の解雇事由よりも厳しく判断されますので、経営状況等を踏まえて、解雇が不可避であるか慎重な検討が必要です。

 これに対し、有期雇用契約の場合、期間満了時に更新をしないことは可能です。ただし、30日前に雇止め予告をする必要があります。

Q:4月末に契約更新時期を迎える有期雇用(契約期間6カ月)の従業員がいますが、コロナウィルスの営業で事業を縮小することになりましたので、雇止めをしたい(契約更新をしない)のですが、雇止めは可能でしょうか。また、どのような手続きが必要でしょうか。

A:有期雇用契約の社員を期間満了時に雇止めすることは可能ですが、30日前に雇止めの予告をする必要があります(平成15年厚生労働省告示第357号)。

 また、有期雇用契約であっても、以下に該当する場合には、雇止めに客観的合理性があり、社会通念上相当と認められる場合でなければ、雇止めはできません(労働契約法第19条)。

①過去に反復更新されており、無期雇用の解雇と社会通念上同視できる場合

②契約更新されると期待することに合理的な理由がある場合

 上記のような有期契約社員について、新型コロナウイルス感染症の影響による事業の悪化によって当然に雇止めができるわけではありません。客観的合理的理由があると認められるために、雇用調整助成金の活用等を検討する必要があると思われます。

Q:雇止めまでは考えていませんが、人件費を削減するため、更新を機会に労働条件を変更(例えば、勤務時間を8時間から4時間に短縮、給与の金額を減額、有期雇用期間を半年から3カ月に短縮)することは可能でしょうか。

A:契約更新時に労働条件を変更することは可能であり、当該従業員が条件変更に同意すれば、変更された内容で有期雇用契約を締結することができます。当該従業員の生活に大きく影響するため、経営状況等について丁寧に説明し、理解を求める必要があります。

 なお、過去に契約が反復更新されているような場合や、同一条件での契約更新を期待することに合理的な理由があるような場合には、同意があっても不利益変更が無効とされる場合があります。


6 子育て休業支援

Q:小学校等の臨時休業に際して、従業員が子どもの世話をするために休業する場合、どのような支援があるのでしょうか。

A:事業主は、子が通う小学校等が臨時休業した等の理由で休職した従業員に特別の有給休暇(年次有給休暇を除く)を取得させた場合、一定の上限はありますが、その日数分の賃金の全額について助成金を受けることができます(2021年3月末までの休職が対象です。)。従業員の正規・非正規を問いません。申請期限が設けられていることなど、詳細は厚生労働省のホームページをご確認ください。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07_00002.html

Q:4月に育児休業から復帰する予定の従業員がいたのですが、新型コロナウイルスの影響で保育所が閉鎖になり、復帰できなくなりました。どのように対処すればよいですか?

A:

①子どもが1歳までの場合

 従業員は、現在育児休業中であれば、事由を問わず、1回に限り育児休業の終了予定日の繰下げ変更(最長1歳まで(※1))を申し出ることができます(※2)。法令上は1か月前までに申し出ることとなっていますが、緊急事態であることを踏まえ、労使で十分に話し合ってください。 また、育児休業から一度復帰している場合も、再度の育児休業(最長1歳まで(※1))を申し出ることができます。

(※1)両親がともに育児休業をする場合、一定の要件を満たせば最長1歳2か月まで(パパ・ママ育休プラス)

(※2)1歳から1歳6か月までの休業、1歳6か月から2歳までの休業それぞれについても同様に繰下げ変更の申出が可能。

②子どもが1歳又は1歳6か月になるときの場合

 子どもが1歳又は1歳6か月になるときに、引き続き育児休業をしたい場合には、1歳からの休業であれば最長1歳6か月まで、1歳6か月からの休業であれば最長2歳までの育児休業を申し出ることできます。

 

 ①②のいずれの場合についても、事業主は、従業員従業員からの申出を拒むことはできません。また、育児休業期間中の賃金が80%未満に低下した等、一定の要件を満たした場合に支給される育児休業給付金は、変わらず支払われます。

 以上のような制度を従業員に対し周知し、労使間で協議の上、育児休業の延長等を行うことで対処されてはいかがでしょうか。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00018.html#Q6-5

Q:新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、8歳未満の子供のいる従業員には5日の特別休暇を付与しました。パート・アルバイトは、時給単価で勤務しているので、付与していませんが、問題はないでしょうか。

A:基本的には雇用形態(正規雇用か非正規雇用か)によって区別することは望ましくないと考えます。

 2020年4月1日から施行された、いわゆる「パートタイム・有期雇用労働法」においても、同一企業内において、正規従業員と非正規従業員との間で、あらゆる待遇について不合理な待遇差を設けることが禁止されています(同法・第8条)(ただし、中小企業における同法の適用は2021年4月1日から)。8歳未満の子どもがいる従業員への特別休暇の付与の趣旨や目的からすると、雇用形態の違いによって待遇差を設けることに合理性があると言いきれません。パート・アルバイトにも特別休暇を付与することが望ましいといえるでしょう。

 国は、小学校等が臨時休業した場合等に、その小学校等に通う子の保護者である従業員従業員の休職に伴う所得の減少に対応するため、正規雇用・非正規雇用問わず、特別の有給の休暇を取得させた企業に対する助成金を創設しています。このような助成金の利用も検討してはいかがでしょうか。


7 従業員の解雇等

Q:新型コロナウィルスの影響で事業を縮小することになりました。社員の一部を解雇したいのですが、どのような手続を踏めばよいでしょうか。

A:この場合の解雇は「整理解雇」と呼ばれるもので、その有効性は以下の4つの要素を総合的に判断して、解雇権濫用にあたるかが判断されます。

①人員削減の必要性(客観的に経営危機にあり、人員削減がやむを得ない場合であること)

②解雇回避努力義務(新規採用抑制、希望退職の募集、配転等の人事異動、退職勧奨など)

③人選の合理性(合理的な人選基準を設定し、それを適切に運用すること)

④労働組合等の協議(労働組合や当該従業員と十分協議すること)

 新型コロナウィルスの感染の広がりによる影響の多くは急なものであり、解雇回避の努力の余地は大きくないと思われます。行政の助成金、緊急借入等を活用してもなお事業の縮小が避けられず、どうしても解雇やむなしということであれば、従業員の個々の事情を勘案して、また、労働組合または従業員代表と協議して、合理的な人選基準で解雇することになります。

 なお、①②③④を踏まえて有効と認められる解雇であっても、通例と同様、解雇予告または解雇予告手当の支払いの必要があります。

Q:新型コロナウイルスの影響で事業を停止することにしました。社員を全員解雇したいのですが、手続を教えて下さい。

A:事業を停止するためにやむを得ず、社員全員の解雇を行う場合には、解雇の要件を満たしている可能性が高いでしょう。

 この場合、①1か月前の解雇予告又は1か月分の解雇予告手当の支払い(解雇予告から解雇日までの日数は、解雇予告手当を支払った日数分だけ短縮可能です)、②退職金規定がある場合には退職金の支払い、③離職票の交付と社会保険の手続を行う必要があります。

 なお、給料の未払いがある場合、従業員は独立行政法人労働者健康安全機構から未払賃金の立替払いを受けることができる可能性があります(原則として賃金の8割ですが、上限が設けられています)。倒産手続をとる場合は、弁護士にご相談下さい。倒産手続をとらない場合には、従業員が円滑に立替払い制度を利用できるよう、事業主証明を出す必要があります。

 未払賃金立替払制度については、厚生労働省のホームページもご確認ください。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/shinsai_rousaihoshouseido/tatekae/index.html

Q:内定を出していましたが、新型コロナウイルス感染症の影響により事業が悪化しました。現在雇用している従業員の雇用を守るために内定を取り消してよいでしょうか。

A:内定取消しは、新型コロナウイルス感染症の影響によって事業が悪化したからといって当然には認められません。内定は、法的には「始期付解約留保権付労働契約」といいますが、企業が当該留保解約権の行使を行うことができるのは、「解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ、社会通念上相当と認められる場合」に限ります。内定取消しは、内定者の生活等にも多大な支障を及ぼすものですので、雇用調整助成金制度の利用などによって対応できないかご検討ください。


8 社員が感染した場合の労災について

Q:社員が出勤途中で新型コロナウイルスに感染した場合、労災になるのでしょうか。感染経路が分からない場合は、労災が認定されるのでしょうか。

A:このようなケースでは感染経路不明である可能性が高く、業務起因性が否定される可能性が高いのではないかと思われます。労災が認定されない場合、健康保険の傷病手当の申請をすることになるでしょう。

Q:介護施設を運営していますが、社員が介護施設内で感染しました。労災になるのでしょうか。また、会社は社員に補償をしないといけないのでしょうか。

A:感染経路が介護施設と特定されている場合には、業務起因性はあり、原則として労災認定をされると思われます。(https://www.mhlw.go.jp/content/000647877.pdf) 。従業員に対して、労災保険で支給される以上の補償が必要か否かは、企業に安全配慮義務違反が認められるか否かによります。合理的な感染防止の対策を講じていたか等によって判断されることになります。

Q:営業社員が、営業先の病院でコロナウイルスに感染しました。労災になるのでしょうか。

A:感染経路が特定されており、業務のための訪問先で感染した場合には、業務起因性が認められて、労災認定される可能性が高いでしょう。もっとも、当該従業員の行動履歴等にもよりますが、感染蔓延期が進行した状態では、感染経路の特定は困難となることも予想されます。


9 その他

Q:従業員は風邪の症状があったのに、軽症だったため、会社に言わずに出勤していたところ、その後の検査で陽性反応が出ました。事業所は閉鎖にはならなかったのですが、従業員10数名が濃厚接触者として自宅待機を命じられました。当該従業員に懲戒処分をしてもよいでしょうか。

A:一般に、懲戒処分を行うには、①就業規則等に懲戒処分の根拠規定が存在すること、②従業員の行為が就業規則等に定める懲戒事由に該当すること、③その行為に対して当該処分を行うことが社会通念上相当と認められること、が必要です。特に③の判断においては、従業員の行為の性質、態様、行為の結果、従業員側の情状、使用者のこれまでの対応等が総合的に考慮されます。

したがって、従業員が風邪の症状を隠して出勤したという行為のみに着目するのではなく、例えば、使用者から従業員に対し、風邪の症状が出た場合に報告するよう求めていたか、従業員が出勤したことに合理的な理由があったか等の事情も同様に考慮されます。

少なくとも、ご質問の事案では、解雇等の重大な懲戒処分は困難と思われます。

Q:夜遊びを自粛するよう指示をしていたのに、指示を守らず、クラブ等に行って新型コロナウイルスに感染した従業員がでました。事業所も一時閉鎖して大損害です。懲戒解雇できますか。

A:「会社が従業員の私生活上の行動を制約できるか」ということについては限定的に考えられており、従業員が制約に反したとしても、その私生活上の行動が事業活動に直接関連を有する場合や、会社の社会的評価を毀損する場合にのみ、懲戒処分の対象となりうるといわれています。

 新型コロナウイルスの感染が広がっている状況で夜遊びに行ったという行動は適切ではないと思いますが、新型コロナウイルス感染症は、潜伏期間が長く、事後的な感染状況から見た評価をしがちなため注意が必要です。法的にいうと、当時の感染症蔓延の程度や緊急事態宣言の有無、会社の業種、指示の方法・回数、夜遊びの頻度、会社の評判の低下の有無等の具体的事情にもよるものの、ただちに懲戒解雇が有効とまではいえない場合が多いものと思われます。

Q:社員が海外出張から帰任する際に、2週間の待機を命じられました。自宅には家族がいるので、本人の希望でホテルに宿泊しました。宿泊費を負担しなければならないでしょうか。

A:業務命令として自宅待機を命じた場合は、その代替手段としてホテルへの宿泊が必要になったと言えますから、宿泊費は雇用主が負担する必要があると思われます。もっとも、その家族の状況(自宅の構造や家族の人数や構成[病者や妊婦の有無等])、期間、ホテルのグレード等から考えて、自宅待機の代替手段として合理的な範囲の負担に限られるでしょう。当該社員がホテルを選択する際に、事業主もその時点でホテルの選定に関与するのが望ましいでしょう。