3次元的な周期性を持つ三重周期極小曲面には、空間を曲面の表側と裏側に二等分する性質があります。負曲率の曲面であるため薄い材料を曲げるだけでは作ることができませんが、周期性に基づいて分割すれば1種類の帯から組み立てることができます。極小曲面は平均曲率が0で一定の曲面ですが、本研究では帯の境界上の点に集まる角度の和を360°より大きい一定の値に設計することで、ガウス曲率が負で一定の曲面を近似しています。その結果、空間を大小に二分割するスレンダーなバリエーションが生まれます。— 割鞘奏太
レゴやジオフィックスのようなブロック玩具では限られた種類のモジュールを組み合わせて様々な形を作れます。このプロジェクトでは柔らかく曲がったり折れたりすることが許されたモジュールをつかうことで、モジュールで作れる立体の構成原理を拡張しようとしています。 — 舘知宏
D-surfaceはダイヤモンド格子の周期性を持つ三重周期極小曲面です。本作品はD-surfaceを細らせた見た目の一定負曲率曲面であり、空間を約3:1に分割しています。すべての面が合同な二等辺三角形であり、それらが折線で連なった1種類の帯をつないで構築しています。プラパール®のCNC加工により制作されたジョイント付きの帯は人の手で何度も付け外し可能で、分解して折り畳むことですべての帯がスーツケース3個に収まります。
頂点には二等辺三角形の頂角が8個集まる点と底角が6個集まる点の2種類があります。両者に集まる角度の和が等しくなるように二等辺三角形を設計すると、一定負曲率曲面となります[Ahara 2006]。— 割鞘奏太
D-surfaceと同相の曲面を、それぞれ1種類の帯を曲げつつ辺でつなぐことで構築しています。帯は中心角60°の円弧がまっすぐに連なった外形をしています。円弧上で2枚の帯をつなぎ、円弧どうしの境界にある頂点に3枚の帯の頂点を集めることで、帯と帯の境界での曲率を負で一定にすることができます。帯の幅に応じて曲面の太さが変化し、曲面が2分割する空間の体積比が変化します。— 割鞘奏太
photo:Choku KIMURA