本構造は、東京大学舘研究室と有職組紐道明との協働制作で、JAPAN HOUSE Los Angeles 、JAPAN HOUSE São PauloおよびJAPAN HOUSE Londonにおける「KUMIHIMO: The Art of Japanese Silk Braiding by DOMYO」展のインスタレーションとして制作した作品です。
組紐の二軸編み構造が四方から集まり、かごめ編みの三軸編み構造を介して分岐合流しています。右回りと左回りの螺旋を描いて一端から一端へと抜ける唐打ち構造の紐の動きは、円筒面の測地線として捉えることができます。唐打ちを通った一つの帯は、正四面体の測地線分割に基づくかごめ編みに組み替えられたのち、別の唐打ちに抜けていきます。— 西本清里
本作品は、正四面体を測地線に沿って三角形分割した「四面体の測地線分割」がもとになっています。四面体の測地線分割では、グリッドは四面体を構成する三角形に対してねじれた位置に配置することができ、この分割のしかたは二つの非負の整数の組(a,b)で表記できます。この測地線分割の正三角形をかごめ編みに置き換えると閉じた四面体の籠編みが作れます。このかごめ編みは、測地線の性質によって、構成する帯は自分自身とは交わらず、一周して戻ってきます。特に二つの整数(a,b)が互いに素であるとき、3本の帯のみによって四面体が作られます。
本作品はこの四面体のかごめ編みの角に唐打ちの組紐を接続したものです。四面体のかごめ編みにおいて一つの帯であったものが、左回り二つ、右回り二つで、頂点と頂点を結ぶ二つのルートに分解されます。本作品は小さい四面体(3,1)と大きい四面体(2,7)を用いて6方向の唐打ちを分岐合流する曲面構造となっています。整数の組によって四面体を周回する道筋は変化しますが、一つの帯は必ず自己交差したり逆流をせずにある頂点から別の頂点へと抜ける性質を持ちます[Nishimoto et al. 2022]。 — 舘知宏
photo:Choku KIMURA