Costa Surfaceは、トーラス(=ドーナツ型の表面)(に3つ穴を開けたもの)と同じ構造(トポロジー)を持っています。このことを利用して、Costa Surfaceを2本の曲線のみで表現することを考えました。さらに等角写像による曲面の表現を参照すると、2本の曲線を全ての交点で直交させることができます。この性質が、ワイヤロープ同士を留める金具(荒川技研工業製作)の性質と合致し、本作品の表現が生まれました。また、Costa Surfaceとトーラスが同じトポロジーを持つということは、トーラスを連続変形するとCosta surfaceが得られるということを意味します。この連続変形の「中間の形」を同じ手法で作ることにより、二つの曲面の関係をよりわかりやすく示しています。— 中川功大
形状を実際の材料で作り上げる行為はその形状を深く理解することにもつながります。本作品は、ワイヤロープと固定金具(荒川技研工業)による製作を試みています。金具の制約によりワイヤーが直交することが要求されることから、等角写像によるCosta surfaceの表現を参照しています。さらに、その等角写像のパラメータ空間がトーラスと同相であることから、2本の曲線のみで表現できることが分かりました。このように幾何的なつながりをたどって本作品の表現が生まれています。— 舘知宏
協力:荒川技研工業株式会社Nakagawa, K., & Tachi, T. (2023) Wire Construction of the Costa Surface and a Torus, Bridges 20233つのオブジェのうち最上段に位置しているのが、トーラスのワイヤロープによる表現です。トーラスを等角写像で表現するにあたり、元のパラメータ空間を(Costa Surfaceのパラメータ空間と同じく)正方形にするという制約から、トーラスの輪のプロポーションが決まります[Sullivan 2011]。— 中川功大
Sullivan, John M. "Conformal tiling on a torus." Proceedings of Bridges 2011: Mathematics, Music, Art, Architecture, Culture. 2011. pp.593-596.3つのオブジェのうち真ん中に位置しているのが、Costa surfaceとトーラスの中間形態です。トーラス(に3つ穴を開けたもの)とCosta Surfaceが同じトポロジーを持つということは、二つの曲面の間に連続変形が存在する(一方の曲面を切ることなく変形させることで他方の曲面が得られる)ということを意味します。このオブジェはトーラスからCosta Surfaceへの連続変形の途中にある形を表現しています。— 中川功大
3つのオブジェのうち最下段に位置しているのが、Costa Surfaceのワイヤロープによる表現です。Costa Surfaceの大きな特徴の一つはトーラス(に穴を三つ開けたもの)と同じ構造を持つ極小曲面であるということです[Costa 1984]。この性質を利用してCosta Surfaceを2本の曲線で表現する方法を考えました。また、Costa Surfaceが正方形のパラメータ空間からの等角写像で表現できる[Costa 1984]ことが、ワイヤロープを留める金具の選定につながっています。— 中川功大
Costa, Celso J. “Example of a Complete Minimal Immersion in R^3 of Genus One and Three Embedded Ends.” Bol. Soc. Bras. Mat., vol. 15, nos. 1 and 2, 1984, pp. 47-54.photo:Choku KIMURA