ケイトウは、複雑なひらひらとした曲面形状をしています。これは面の中心から縁にかけて成長率が 増加しながら成長する differential growth(偏差成長)と呼ばれる仕組みによって生み出されるものです[Yamamoto et al. 2021]。成長率の勾配によって生じるひずみが平面内で適合できなくなることによって面外変形が引き起こされ、ひらひらとした複雑な曲面形状が自己組織的に生成されます。自然界にはこういったひらひらとした曲面形状がよく見られます。建築やプロダクトデザインの領域において、ひらひらとした形状を静的で硬いもので模倣した例は多く見られますが、Differential growth の原理を模した成長・変形を模倣した例はあまり見られません。— 小野富貴
Yamamoto, K. K., Shearman, T. L., Struckmeyer, E. J., Gemmer, J. A., & Venkataramani, S. C. (2021). Nature’s forms are frilly, flexible, and functional. The European Physical Journal E, 44(7), 95.株式会社 竹尾「気包紙」の新製品を記念した展覧会「KI・HOU・SHI Tactile×Visual 触覚×視覚」のためにデザインされた、季節の花を包む折紙の花入です。コンピュテーショナル・オリガミによって手びねり感を与えた花入は、花を引き立てるため、陰(shade)を錯覚させるような印刷を施し、自身の存在感を消すことを試みています。気包紙GL-FS ならではの高い印刷再現性により、濃淡生成のインタラクティブシステムのシミュレーションどおりに実現しています。手びねりのようなゆがみの生成には、舘が独自に開発した折紙設計のシステム "Freeform Origami" を用いています。— 三井嶺 / 舘知宏
Freeform Origami; 一枚の紙から折れる「可展性」、コンパクトに折りたためる「平坦可折性」といった、本質的な幾何学を保ったまま、自在に立体折紙形状を変形させることのできるインタラクティブ設計システム。photo:Choku KIMURA