講習会の目的

微生物の生き様を定量化する

次世代シーケンサーを主としたDNA やRNA 解析技術の発展に伴い、微生物群集構成種の同定や個々の微生物が保持する遺伝情報の解析が可能になってきた。その結果、生態系の構成微生物種の遷移や構成微生物の場所間比較を解明するための解析技術が飛躍的に進展している。しかし、DNA やRNA を用いた個々の微生物個体や群集単位での遺伝子・遺伝子産物情報の解明が進む反面、従来の生態学で扱われてきた微生物個体や集団の「生き様」(=表現型・生態形質)を理解するための測定項目(形態観察・バイオマス定量・生理活性測定など)を用いた研究例は、相対的に少なくなっている。

生態学として微生物生態系の役割を理解するためには、遺伝子を対象とした種同定や細胞内現象の解明をめざす研究と同時に、微生物の「生き様」の理解するための、微生物が集団(群集)として駆動する機能の測定や、微生物種の多様性が生態系機能の維持に果たす役割を定量化する必要がある。

本ワークショップでは、簡便かつ定量的に微生物群集の生態系機能を直接評価できる手法として、エコプレート(バイオログ社)を用いた炭素基質利用活性の違いをベースとした生態系機能評価方法についての実習をおこなう。主催者は,バイオアッセイと最新の化学情報学を融合し、エコプレート培養実験から得られる生態情報の質を格段に向上させる手法の開発に成功した(Miki et al. in review)。実習では、エコプレートの測定方法だけでなく、この手法を実装したR統計プログラミングを用いた評価手法の習得までを目指し、生態系機能を評価できる微生物生態研究者のすそ野を広げ、微生物の「生き様」の解明に繋がることを目的とする。

注)「生き様」は正しい日本語ではないようですが、ご容赦ください。https://dictionary.goo.ne.jp/jn/10371/meaning/m0u/