高等学校における実践研究

〇高等学校

研究の目的 本研究の目的は、高等学校における学校規模ポジティブ行動支援(School-Wide Positive Behavior Support)の特に第1層支援の効果について検討することである。研究計画 ABCBCDEデザインが用いられた。場面 公立の高等学校において実施された。参加者 高等学校の在校生734名、教員54名であった。介入 学校における目標行動を生徒と教員にリマインドするためのポジティブ行動マトリクスを作成し校内に掲示した。それに加えて目標行動を実行した生徒へのフィードバックを与えるために、GBT (Good Behavior Ticket)およびPPR (Positive Peer Reporting)の両手続きを導入した。前者は、教員によって提示され、後者は生徒によって提示された。行動の指標 問題行動を示した生徒への懲戒件数および目標行動が生起した数を得るためにGBTカードとPPRカードの数を用いた。結果 SWPBS第1層支援(ポジティブ行動マトリクスの掲示、GBTおよびPPR手続きの導入)により、懲戒件数は減少することが示された。結論 SWPBSにおける第1層支援の介入として、ポジティブ行動マトリクスの掲示とGBTおよびPPRの手続きの適用が有効であることが示された。しかし、今回の第1層支援の方略だけでは、問題行動を示す生徒が残されていたため、第2層支援、第3層支援に位置づけられるようなより高密度で個別的な介入が必要であると考えられた。


キーワード:学校規模ポジティブ行動支援(SWPBS), ポジティブ行動支援(PBS), 高等学校, 問題行動, 懲戒指導, Good Behavior Ticket(GBT), Positive Peer Reporting(PPR)

研究の目的 相互依存型集団随伴性を適用した協同学習による学業達成を目指して、生徒のかかわりを促進する条件を検討した。研究計画 生徒2名による参加者間多層ベースラインデザイン法を用いた。場面 定時制高校の数学の授業で行われた。参加者 軽度知的障害、及び自閉症スペクトラム障害と診断された生徒2名が参加した。独立変数の操作 個別学習条件、相互依存型集団随伴性を適用した協同学習条件、役割付与のルールを加えた相互依存型集団随伴性による協同学習条件、の各条件を適用した。行動の指標 問題演習時の生徒のかかわり行動の観察、出題された課題の達成の割合を指標とした。結果 知的障害のある生徒は、相互依存型集団随伴性を適用した協同学習条件、役割付与のルールを加えた相互依存型集団随伴性による協同学習条件において、かかわり行動を生起し、課題達成の割合を増加させた。自閉症スペクトラム障害のある生徒は、役割付与のルールを加えた相互依存型集団随伴性による協同学習条件においてのみ、非言語的なかかわり行動を生起し、課題達成の割合を増加させた。結論 生徒に相互依存型集団随伴性による協同学習を適用し、かかわり行動を伴って課題達成へと導くためには、役割付与のルールが効果を伴うことが考えられた。


キーワード:定時制高等学校, 協同学習, 相互依存型集団随伴性, 軽度知的障害, 自閉症スペクトラム障害, かかわり行動

研究の目的 定時制課程の高等学校において、生徒の課題遂行を高めることを目的とした行動コンサルテーションを実施し、介入厳密性(treatment integrity)を保つのに必要となる支援の検討を行った。研究計画 2学級を対象としてA-B-C-CD-CDEデザインで実施した。場面 定時制高等学校の数学Iの授業に介入した。参加者 コンサルタントとして特別支援教育コーディネーター、コンサルティとして教職経験4年目の数学Iの教科担当、クライエントとして教科担当が指導する2つの学級に在籍する生徒35名が参加した。介入 教科担当の介入厳密性を高めるために、2度の打ち合わせ、遂行する教授行動の毎朝の確認、パフォーマンス・フィードバック、台本の提示を行った。行動の指標 授業ごとの生徒の課題遂行率および教師の教授行動の遂行率を測定した。結果 介入とともに発達障害の生徒を含む各学級の生徒の期間ごとの課題遂行率が上昇の傾向を示した。それに応じて教師の介入厳密性も高まった。結論 コーディネーターの働きかけが教師の教授行動に与えた影響が示唆された。考察 コンサルテーションで生じた教師の教授行動の変容の要因、生徒の課題遂行率の上昇との関連を議論した。研究の限界として厳密な場面の統制ができなかった。


キーワード:定時制高校, 特別支援教育, 行動コンサルテーション, 介入厳密性, ルール提示, パフォーマンス・フィードバック, 台本

〇部活動

本実験の目的は、4名の公立高校硬式野球部選手のスローイング技能の指導に、通常のコーチングと行動的コーチングを適用し、これらが反応遂行としてのスローイング技能と適切なゾーンに当てるという反応所産に及ぼす効果を分析することだった。ターゲット行動であるスローイング技能は、10の下位技能に分類された。対象選手は27.4m離れた3つのゾーンに向けて送球し、その際のスローイングの反応遂行と、どのゾーンに命中したかという反応所産が測定の対象となった。同部におけるこれまでの指導法によって構成された通常のコーチングと、シェイピング、チェックリストの説明、賞賛、示範、教示、ロールプレイの諸変数を含む行動的コーチングの効果を、選手間多層ベースライン法によって分析した。実験1において、通常のコーチングは反応遂行と反応所産のいずれにも改善をもたらさなかった。一方、行動的コーチングはスローイング技能の改善をもたらしたが、反応所産には一様の正の結果をもたらさなかった。そこで、実験IIにおいて、行動的コーチングの変数であるチェックリストを一部修正し、目標を見るという行動を形成するための変数を新たに導入することによって、スローイング技能だけでなく、反応所産にも正の結果が示された。その結果を行動的コーチングと反応遂行、及び反応所産の測度の関連で考察した。