産業医科大学におけるBCPの健康確保記述部分(抜粋)

1.3 基本方針
Ⅰ 行政、他の医療機関等と連携し、一人でも多くの人命を救助する。
Ⅱ 災害発生時には患者、教職員、家族等の身体、生命安全を確保するとともに、被災状況を確認し、病院機能継続のため早期復旧に最善を尽くす。(健康確保の方針)
Ⅲ 施設、設備等への事前の対策実施と災害時行動計画策定および訓練等により、事前対策を強化する。

6 発災後の職員のストレス対策 

6.1 危機事象発生時のストレス概要
目的
危機時と平常時の違いは、「想定外」であるかどうかである。想定外である危機時には 病院職員が平常時とは違う様々な職業性ストレスに曝露する可能性が高い。本項においては、健康障害リスクの高い職員を可能な限り同定し健康管理的支援を行うとともに、支援の枠組みから逸脱しがちな病院職員にも目を向け、職員の長期的な健康障害の発生を予防する。また、災害時の過重な労働は常に正確性を期待されている医療においても影響を及ぼす可能性があることも忘れてはならない。したがって、健康障害防止は単なる病気予防にとどまらず、過重労働による集中力の低下などを回避し医療上のインシデント/アクシデント防止という医療安全という視点においても実施されていることにも留意されたい。 

高リスク者の事前想定(健康障害ハザードレベルHH A~D Dほど強い):
  就業配慮実施中のもの(HH;D) 
  本人が被災し何らかの体調不良をきたしたもの(HH;D)
  過去3年以内に健康面で就業配慮を受けた実績のあるもの(HH;C)
  家族が被災し死亡・入院等の措置が必要なもの(HH;C)
  救急部など被災患者の直接的な対応・トリアージ対応するもの(HH;C)
  クレーム対応・広報担当部門(医療支援課、広報等)HH;B)
  病院長、副院長、災害対策本部長など管理部門(HH;B)
  その他(HH;A)

 高リスク環境の事前想定(健康影響曝露指標HE 1~3 3ほど強い):
  連続48時間以上勤務時間曝露(HE;3)
  連続36時間以上勤務時間曝露(HE;2)
  週80時間以上の勤務(HE;3)
  週60時間以上の勤務(HE;2)
  普段死体を見ない職種が死体を見る場合(HE;2)

6.2 ストレス対応部署と構成員
職員のストレス対応部署は、病院産業医ならびに保健センター、人事課健診係により運営される。健康管理支援体制及び役割は以下のとおりとする。  (産業保健職の役割)

6.3 対策の内容
以下の基本的な方針で任に当たるものとする。また、スクリーニングについては「実施すべき項目」ではなく、実施を検討する項目でありその時の状況に応じて保健センター長 の判断で実施の可否を検討する。 

災害前の準備(連続勤務の防止)
【すべての職員への対応】
以下の基準をもとにBCPが策定されているかどうかについてBCP策定委員会について助言を行う。
≪絶対基準≫48時間に連続6時間以上の休息をはさむことが必須
≪相対基準≫24時間に2時間(分割可)の休息をはさむことが望ましい 

発災後1週間(健康相談)
【ハイリスク者への対応】
当初の大きな目的は、健康上のハイリスク者を重大な職業性曝露から回避することが目的である。
この時点での着目すべきハイリスク者を以下のように定めそれぞれの対応を実施する。
・現在就業配慮を受けているもの ⇒ 産業医面接までは一時的に就業禁止、面接により就業の可否を検討する。
・「災害前の準備の項の絶対基準を超過したもの」については産業医による面談を実施し就業継続の可否を検討する。
・相談窓口の設置(保健センター)全従業員に対して、健康上の問題がある場合の相談窓口として広報を行う。
本人からの申し出のみならず、上司からの申し出も積極的にうけることも併せて周知する。 

発災後4週間(過重労働対策、メンタルヘルス)
・過去3年以内に就業配慮を受けた実績のあるものを順次面接を実施、必要に応じてフォローアップを実施する。
・過重労働の面接指導の再開 ・スクリーニングについて、PTSD、うつ、不安障害を最大のターゲット疾患とする。
IES―R とK6を用いて実施する。対象者はHH;B以上および、HE2以上のものとする。

 発災後3か月
・全従業員に臨時のストレスチェックおよびIES-R、K6を実施する。

発災後6か月
・スクリーニングについて、PTSD、うつ、不安障害を最大のターゲット疾患とする。 IES―R とK6を用いて実施する。
対象者はHH;B以上および、HE2以上のものとする。

 発災後12か月
・スクリーニングについて、PTSD、うつ、不安障害を最大のターゲット疾患とする。 IES―R とK6を用いて実施する。
対象者はHH;B以上および、HE2以上のものとする。