Written by Ryosei Kobayashi
こんにちは。このサイトをつくってから公開するまでの期間、何の記事を書きためておこうかと考えていたのですが、せっかくなので自分がACをさせてもらった銀杏杯のMotionを解説しようかなと思います。
実のところ、採用された自分のMotionはあまり捻りのないシンプルなものが多かった(そもそも一年生大会なのでそうあるべきだが)ので、新たな知見が得られる可能性は低いような気もしますが、他のMotionに活用できる考え方もあると思うのでぜひ読んでみてください。
では、銀杏杯Motion解説第一弾。Open OctoのMotionですね。実はちょっと前のEUDCのMotionだったりします。
1 Twitterの分析
このタイプのMotionを見たときには特に、まず考えたいのがこのTwitter自体のCharacterizationですね。プレパでも、具体的なことから考え始めるとUniqueなケースが思いついたりすることもあります。
Twitterの機能面における特徴としては、アカウントをフォローすることによる投稿取得、投稿を表示するアルゴリズムが挙げられるでしょう。
ツイ廃ディベーターのみなさんが日ごろ体験しているように、
①フォローしているアカウントのツイート
②フォローしているアカウントが「いいね・リツイート」したツイート
が自分のアカウントのタイムラインに表示されますよね。いろいろなメカニズムでよく聞くEcho Chamberの一番分かりやすい形がこれです。要するに、個人が好きなアカウントだけフォローしまくると、似たようなアカウントのツイート、そしてそれらのアカウントの持ち主が好むツイートが優先的に表示されるということです。
アルゴリズムについてはもう少し複雑なようで、気になる人は詳しく調べてみてください。文系の私でもそこそこわかった記事を乗っけておきます。
2022年最新 | アルゴリズムから考えるTwitterマーケティング (statusbrew.com)
どういうアルゴリズムが存在しているのかざっくりと説明すると、
①過去に自分がいいねしたツイート、表示したツイートの傾向を抽出し、類似したコンテンツを表示する。
②自分が日ごろ見ているコンテンツとの類似性が高いが、自分が反応しなかったツイートをまとめて表示する。
③最新のツイートを優先して表示する。
などがあるようです。こう言われると身に覚えがあるような気がしてきますね。
他にも、単純にバズっているツイート(ユーザーからのエンゲージメントが高いツイート)を表示したり、トレンドになっているトピックのツイートを表示したりする機能もありますね。
このアルゴリズムについては、一定のバイアスがあることが問題視されています。アルゴリズムはもちろん、人間の手による作業ではなく機械学習によるシステムなので、人間がその挙動を完全に予測することは難しいようで、有名なバイアスとしては、
・黒人女性よりも白人女性を強調する傾向(広告など?)
・右派寄りのコンテンツが多く表示される(ツイッターのアルゴリズム、右寄り政治投稿を増幅=自社研究 - BBCニュース)
などがあるようです。
2 Gov
Govが取れそうなスタンスとしては、前述したTwitterの情報発信の偏りが一般に良くない帰結を生む、といった感じになるでしょうか。
Issue 1: Politics
<Impact>
A. 個人のDecision MakingがComprehensiveでなくなり、個人にとって不利益になるようなVote、もしくは必ずしも最適ではないVoteをしてしまう可能性が高まる
B. 社会的なリソースを多く持っている人が、より選挙や政治活動を有利に進めることができるようになり、結果としてMinorityなどの社会的弱者が虐げられる
<Mechanism>
・Twitterを使用したCampaignが選挙前などにたくさん行われる
・有権者も、いちいちあらゆる政党の街頭演説に行ったりマニュフェストをたくさん読んだりリサーチしまくったりするよりは、Twitterに流れてくる情報を摂取する方が圧倒的にLess time consumingかつnot exhaustingなので、多くの人はSocial Mediaを情報源の1つにする
→今はとくにこの潮流がある気がします。YouTubeのShort動画とかで街頭演説の動画がよく流れてきたり、Twitter上でもいろいろ演説の動画とかあるし。Twitterだと特に、動画も画像もついて、なおかつ短い文字情報しかないし、インスタントな情報源になりやすいんですよね。
・個人は自分が支持している、ないし自分の政治的信条、周囲が支持しているために認知している政治家や政党をフォローしたり、そのツイートにいいねしたりする
→当然といえば当然ですよね。自民党支持者は安倍晋三とか河野太郎(この人は例外かもだけど)のTwitterはフォローしてそうだし。最近は政治家が結構Twitterやって、若者向けの情報発信しようとしたりしてますね。逆に、自分が嫌いな政治家とか政党はわざわざフォローしませんよね。してる方は相当Rationalだと思いますが、普通に考えると、嫌いなものを日常的に見続けるのはストレスフルなので、しないIncentiveはなかなか高いです。
・結果として、強いPolitical ideologyを持っている人だけでなく、ある程度Swingな人たちも、住んでいる地域や家族、友人などの影響なども含め、それぞれがEcho ChamberにOpt inすることになる
→例えば、周りが自民党支持者しかいないコミュニティや家庭にいるとして、ぼーっとしてるだけで立憲民主党とか維新の会とかの政治家にめちゃめちゃ詳しくなれる可能性って、そこまで高くないはずです。つまり、割と環境要因で自分が触れられる政治的な対象にも限りが出てくるってことですね。
・対立する政党や異なる立場を取る政党の情報が限りなく少なくなり、ある政党や候補者をGlorifyする内容へのExposureが多くなり、Criticalな評価が難しくなっていく
→まあ、これも想像しやすそうですが、良いところ/キャッチ―なところを切り抜いた動画とかをずっと見てれば、どんどんそれが良い内容だと思い込むようになったりします。参政党のYouTube Shortsとか見てみると、良い感じの分かりやすい長さで街頭演説が切り抜いてあって、個人がどうやって傾倒していくのか想像に難くないです。
・特にSwing VoterのSocial Mediaには優先的にフォロワーの多い政党・政治家のツイートが表示されやすく、よりPopulisticなPolicyを掲げて大規模なCampaignを行うことのできるRichでConservativeな政党の情報をより多く得ることになる
Issue 2: Hate Speech
<Impact>
A. 特定の個人に対してOffensiveなRemarkがされ、その結果としてのPsycological damageなど
B. 個人がHate remarkが多いようなSocial discourceにOpt inするIncentiveを失い、DiscourceのDiversityが失われることにより、特定のSocial IssueについてのDiscourceが弱まる→選挙の中で注目が下がり、そのStakeholderが助からない
<Mechanism>
・Anonymityの高いPlatformであるために個人がある特定の個人に対してHate remarkをするPsychological burdenが下がる
→Social media系のMotionでよく出てくる分析ですよね。目の前に他人がいない状態だと、人が内面に思っていることなどを躊躇なく発言するようになったりするっていうやつです。裏垢で悪口を書く人の心理に近いですね。
・影響力が強い、政治的な発言をするアカウントに対して、批判するような返信などが集まることが多く、Echo chamberにより接触すること長いような攻撃的なRemarkを目にする機会が多い
→有名なActivistとかのツイートとか、Feminist的なリベラルな人のツイートによく攻撃的なリプが付いたり、引用リツイートが付いたり、レスバが始まったりするのをよく見ますよね。
3 Opp
Issue 1: Socialization
<Impact>
物理的に離れた人々とのコミュニティにアクセスすることで、日常のストレスや苦痛をReleafする/精神的にRelyできる、自己が肯定されるコミュニティへのOpt in
<Mechanism>
・特定の趣味や経歴、個人的共通点に基づいたコミュニティが、特定のアカウントをフォローすることで、新たなアカウントのツイートが表示され、徐々に形成される
・個人が周囲のコミュニティに対して見込めない機能を果たせる、もしくは周囲のコミュニティから来るPainをReleafできるコミュニティを選択できる
→あまり人に言いたくない趣味を持っていたり、周囲に特定のIdentityを明かしていなかったり、仕事や育児の愚痴や悩みを共有したかったり、、とにかく、自分のImmidiate human connectionで満たされないようなコミュニケーションの需要が満たせるというのが、いいところっていうふうに説明できそうですね。
・現実にIsolateしている個人にもアクセス可能な定期的なコミュニケーションの機会になる
Issue 2: Minority representation
<Impact>
A. Social Capitalなどに関係なく、一定の人数に対して影響力を持つPolitical remarkをすることができる
B. Geographically separateされた人々も、このPlatform上でUniteすることで、社会の中で一定のPresenceを持つことができる
<Mechanism>
これは正直Govの政治のArgumentに対するカウンターとして、っていう感じですね。勝ちIssueにはなりにくいように思います。
・Privilege dominantな従来のMedia(テレビとかラジオとか)と比べると、Twitterは開かれた、そこそこリベラルにも優しいユーザー主体のPlatformなので、Opt inしやすい
・特定のコミュニティの中で、地域を超えた影響力で情報を発信できるようになり、MajorityにMediaがDominateされている状態よりはまだ良い
なんかOppの内容薄いんですけど、個人的にはこのMotionはOppの方が近いImpactが立ちやすいので、勝ちやすいかなと思います。Govをたくさん書いたのは必要なMechanismとか分析がそこそこ多そうかなと思ったからです。Impactの説明の仕方を工夫すればGovでもいい感じになると思います。
4 Tips ~このラウンドをジャッジするときに考えたいこと~
ディベーターとして日本の大会に出ていると、意外とよく出合うタイプのジャッジに、「Uniquenessを重めに評価する」人がいるなぁという実感があります。
何かの事象が特定の対象にしか関係していない、起きないことを示すことはPolicy Motionなどでは両パラダイムの差分に直結するので重要なのですが、このようなAnalysis Motion、特にTHBT X does more harm than good/THS/THO などのMotionに対してはあまり有効な思考でないように感じます。
例えば、このMotionでチームが複数のSocial Mediaが持つ特徴を前提としたImpactを提示したとしましょう。ジャッジはそのImpactを、「いやそれFacebookでも起きるやん、誹謗中傷とか2chでもあるし、Communityはインスタでもできるじゃん」とかなんとか言ってDiscreditしても良いのでしょうか?
このMotionの問いは「Twitterが」どのような損益をもたらすのかということ以上でも以下でもないので、ディベーターには
①Twitterが存在しない世界との比較をするBurden
②Twitterにしかあてはまらない分析をするBurden
はありません。他のSocial Mediaに当てはまっていようが、その分析がTwitterとそのStakeholderに当てはまるのであればMotionの肯定/否定にとって必要な分析です。必要以上にUniquenessなどを理由にImpactを取らないのではなく、そのImpactに至るまでのMechanismやImpact自体の規模、Urgencyなどを重視した方が良いでしょう。
こんな感じですかね、ではまた~