Written by Kosei Masube
こんにちは!ますべです。今回はTsukukoma Schools Open 2022 R2(prepared) In times of severe public health crisis, THBT unelected technocrats should take over the government. を解説していこうと思います!
I
0. 論題の背景
政治家が専門家の意見を無視したコロナ政策を行う、といった事態は世界各国で起こっています。トランプの例が一番直観的かもしれませんが、より深刻な例としてはブラジルの元大統領ボルソナロがコロナのフェイクニュースを流したり、ソーシャルディスタンスに反対したり、マスク着用に反対したり......とかマダガスカルでは......などがあります。しかし、科学的であることは民主主義にとって必要な要素なのでしょうか?我々は「熟議民主主義」という政治パラダイムを生きており、民主主義が他の政治形態と比較して比較的悪くない政治的決定機関であるという神話を信じています。しかし、「熟議」の不可能性がそこかしこで論じられるようになってきた今、「官僚主義」というオルタナティブと比較対照し民主主義に対して批判的な目を注いでいきましょう。
https://www.kcl.ac.uk/covid-19-in-brazil-how-jair-bolsonaro-created-a-calamity
基本の対立
最も先鋭的な対立は、政治制度をどう見るかに関わります。すなわち、政治にとっての最高善は功利を最大化することであってデモクラシーはそれに奉仕する手段であるという立場(Gov)、そしてデモクラシーは市民の意見の代弁装置であり多数決で決められた意見を反映する機能そのものが重要である(Opp)という対立軸です。
Max WaberとHobbsの政治理念を比較した以下のPodcastが非常に参考になります。特にprofessionalismとbeaurocracyのニュアンスの違いはきちんと押さえておいた方がいいでしょう。(政治家はscientific expertではないがprofessionalなので)
https://play.acast.com/s/history-of-ideas/weberonleadership
もう一つの考え得る弱い対立は、Oppが政治は功利を最大化する手段であるというGovの立場を認めた上で、官僚主導と政治家主導のどちらが最も功利を最大化するかどうかを争うものです。この対立軸で目指すものは同じ、すなわちGoalが共有なので、事象のLikelihoodの対立に帰結します。
昨今のディベート風潮的には後者でメカニズムを争うのが主流なのでしょうが、哲学的におもろいのは前者なので、前者の対立について解説します。後者は自分でメカニズム積んでください。
2. Gov
<framework>
政治にとっての最高善は功利を最大化することである
人間は国家という形態を持たないと自然状態に置かれ、万人の万人に対する闘争が発生する(現実態としてのサブサハラ地域)
国家とは個人の理念的な社会契約をする相手である。個人は私有財産と自然権の保護のために国家に権利を一部譲り渡す代わりに国家による保護を受ける。
契約の相手は民主主義国家に限定されない(王権に対して契約を結んでもよい)
すなわち我々の契約を結ぶ国家とは、最もよく私有財産や権利を保護する政体である。
*功利主義がコンセンサスならこのフレーミングはいらないので、oppのスタンスが判明してからdeputy/whipで出す。
<Impact>
(脳死マイノリティ守りに行く戦略で)選挙というシステムを通じて救われない人々にインパクトを落とす
社会的弱者は金銭的・社会的資本へのアクセス可能量が少ないので、(a)国家によるワクチンや失業保険に頼りがちであり、(b)対面を伴う労働を続けなくてはなりません。官僚主義はそれらの人々に対してより効率的にリソースを提供する可能性が高い
In conclusion, the most vulnerable people are difficult to be cared by politicians. COVID-19 disproportionately affects the poor, the unemployed and the minority races like African American and Hispanic. We recognize that higher infectious rate and mortality rates of these individuals because (a)since they cannot access to enough medical resources because lack of financial resources and (b)since majority of them are working at the blue color job like construction or food delivery, they are unable to move on remote work and still forced to make human contact.
<Mechanism>
証明しなければならないcomparativeは以下の2つです。
民主主義は社会的弱者を無視する傾向にある
官僚主義は民主主義が無視する人々に対してよりよい帰結をもたらす
<SQ>
選挙民(社会的弱者)のキャラクター
多くの貧しい市民は、教育格差により科学に関する深い知識を持ない(RNAワクチンの仕組みとか、安全性とか)
一定のリテラシーがない人々にとって有権者登録(sign up)は難しい
政治家が自分たちの生活を変えてくれる実感がないので、選挙に行くインセンティブがそもそもない
ゲリマンダーなどにより、仮に投票に行ったとして政治に対する集合的な影響力は限られる
政治家のキャラクター
政治家は(例えば4年周期の)選挙サイクルで勝てればいいので、ワクチンの強制など効果は大きいが反発も大きい政策はとろうとしない
政治家は政治実務の専門家であって科学者ではないので、政策効果を科学的指標において評価する能力に劣り、間違った判断を下すことがある、あるいは正しい判断をするにしても遅い
政治家は投票で結果を左右する大きな力を持たない人々を軽視する
In conclusion, considering these mechanisms, governors won’t be able to carry out the scientifically proven policy like social distance, mask mandate and vaccine mandate, because they’re afraid of losing votes. The typical example is Brazilian President Jair Bolsonaro spread false information about Covid-19, opposed social distancing, refused to wear masks, and routinely shook hands with crowds of supporters.
<counterfactual>
官僚は政治家と比較しより多くの実際上の知識を持つ
官僚組織は議会と比較しより効率的な意思決定上の組織構造を持つ
選挙民との直接的な関係がないので、Qanon信じてるやつらの言うことを聞かなくていい
など
3. Opp
ハードスタンスを取った時の勝ち筋としては、官僚主義による効率の向上ケースをmitigateしつつ、demcracyを押していくことになります。なので逆に効率悪くなるアーギュメントも建てましょう。ただし、ソフトスタンスを取った時に使える、政治家は現状でも専門家会議の助言聞いて政策決定してるからあんま変な政策とらへんモデルはハードだと使いにくいです。
<Contextualization>
マジョリティが科学的な政策を求める社会(e.g. EU)ではみんなマスクするしワクチン接種するので、官僚主義であろうが民主主義であろうが差分はない。マジョリティが反-科学的な選好を持つ社会について語らなくてはならない
<framework>
デモクラシーは市民の意見の代弁装置であり多数決で決められた意見を反映する機能である
ワクチンの接種やマスクの強制は(gov's best caseで)健康をもたらすかもしれないが、それが人々の望んでいるものかは不明である
健康とは精神的な充足を得るpremiseにすぎず、健康であるからと言って幸せであるとは限らない。(e.g. コロナの行動制限下での自殺者の増加)
時として人は、科学的に正しい帰結よりもサブスクライブしやすい物語を好み、精神的充足を得る(e.g. リバタリアンのマスク反対、Brexit)
<Impact>
マスク着用/ワクチン接種がcoerceされないので、より自分の選好するナラティブに基づく社会生活を送ることができる。たとえばリバタリアンがマスクもワクチン接種もなしで生活するとか。もしコロナに罹っても、それは彼らにとっては些細な問題であり、Oppのパラダイムの方が人々はより幸福である
*Tips【libertanianとliberal】
どちらも「自由主義者」と訳したくなってしまいますが大きな違いがあり、それは「自由」という概念の異なる理解に基づくものです。
Libertanian
リバタリアンの標榜する"Liberty"は「強制力や障害から自由であること」です。ヨーロッパの古い知的伝統に基づく語の意味であり、Isaiah Berlinが"negative freedom"として定式化したことで知られています。
https://plato.stanford.edu/entries/liberty-positive-negative/
Liberal
現代の「リベラル」はポリティカルな意味合いを多く含んでおりやや複雑です。OEDによると
4-a. Free from bias, prejudice, or bigotry; open-minded, tolerant; governing or governed by relaxed principles or rules; (Politics) favouring social reform and a degree of state intervention in matters of economics and social justice; left-wing.
4-b. Theology (originally U.S.). Regarding many traditional beliefs as dispensable, invalidated by modern thought, or liable to change; open to the reception of new ideas or proposals of reform.
と出てきます。政治的に規制の撤廃を求める立場、そして改革を求める立場のことをリベラルと呼ぶとひとまず言えそうです。フェミニズム運動による婚姻やセックスの自由化、公民権運動やBLMなどによるマイノリティ人種のエンパワメントなどが顕著な例として挙げられます。しかし、現実には経済分野で市場規制の撤廃を求める人々の立場を「ネオリベラル」と呼び、progressiveの立場から課税を求めて批判するなど(e.g. Bernie Sanders, Elizabeth Warren, etc...)トップダウン型の把握には無理があります。具体的な人名や政策と関連付けてアメリカ政治の動向をチェックするようにしましょう。
<Mechanism>
Govのを裏返して使ってみてください!
まあ適当に書き散らかしてきたのですが、自分は政治哲学を専攻してるわけでもないので滅茶苦茶な議論があれば指摘おなしゃす。参考音源貼って終わりにします。では!