2025年9月19日、北海道伊達市において小惑星(3200)Phaethon(フェートン)による恒星食(掩蔽現象)の観測を行いました。本学からは学生が5名参加し、専門家やアマチュア観測者を含む総勢26名ほどが現地に集まりました。
掩蔽(えんぺい)とは、天体が天体を一時的に隠す現象のことを指します。掩蔽には、小惑星が天体を隠す、惑星が天体を隠す、月が天体を隠すなど様々あります。これらの現象は掩蔽帯と呼ばれる帯状の領域で観測されます。領域内では地点ごとに掩蔽のタイミングにずれが生じます。これを利用して複数地点のデータを複合することで遮った天体の形状や大きさ、大気の検出、環や衛星の発見に貢献することができます。
今回の観測では前日から北海道に行き観測地の下見と機器の調整、その後本番と同じ時刻で予備観測を実施。22時頃からヘッドライトの明かりだけを頼りに作業を続け、深夜2時頃まで本番さながらのシミュレーションを行いました。また、北海道の自然環境にも配慮し、熊対策のスプレーなどの装備を用意して臨みました。
観測地から見えた天の川
観測当日も、22時頃から望遠鏡の設置。カメラとパソコンの接続などを手際よく進め、現象1時間前にはすべての準備が完了。暗闇の中、望遠鏡の結露に細心の注意を払いながら、ひたすら雲が出てこないことを祈り続けました。そして、現象時刻である午前1時52分。標的の星が消えることを皆が祈る中、その願いは叶い、掩蔽の瞬間を捉えることに成功しました!
観測の様子
現在解析を進めていますが、現時点では以下のような成果を現すグラフになっています。縦軸が明るさ、横軸が経過時間です。グラフは遮られる星の明るさを表したもので、途中で急に明るさが減り、すぐに戻っていることが分かります。この結果は小惑星が星を隠したという証拠であることが分かります。
遮られた天体の時間経過による明るさの変化
今回の観測には、IOTA/EA(国際掩蔽観測者協会・東アジア支部)も深く関わっています。IOTA/EAは、東アジア地域における掩蔽観測のネットワークを支える団体であり、世界中の観測者と協力しながら小惑星などの天体の科学研究に協力しています。
本学のチームとしても、今回の経験を通して得た知見を今後の研究・教育活動に活かし、国内外の観測ネットワークと連携しながら、次世代の宇宙科学に貢献していきたいと考えています。
最後に、今回の観測にあたりご協力いただいたIOTA/EAをはじめ、現地でご一緒した観測者の皆様、ならびに地域の方々に深く感謝申し上げます。
観測を手伝っていただいた、吉田様、宮下様との記念撮影