ばんか
花が綻びる。
それは名もなき花であった。急カーブの道路の脇にひっそりと置かれたちいさいハコの上には、誰が備えたのかわからない小さい花束が雑に放置されている。
享年十五。
あまりにも、若すぎる死。
けれど、道行く人はそんなものに目もくれない。それどころか、まるで汚いものでも見るかのように遠目に通り過ぎていく。
そこに二人の人影が現れた。一人は派手な金髪の男。見るからにヤンチャそうな彼の横には、一見すると真面目そうな大男。
まもなく日付が変わりそうな夜の帳に紛れるように二人は静かにお粗末な献花台へ赴き、持ってきたお菓子と花とを丁寧に並べた。そしておもむろにしゃがみ込むと手を合わせ、真剣そうな表情で黙祷を捧げた。
一週間前に起きた事故は、地元の暴走族の末端構成員である中学三年生の死亡が確認された。少年は急カーブを速度を落とさずに走行して横転し、病院に搬送されまもなく息を引き取った。
「臣、行こうぜ」
臣と呼ばれた青年は、目元をかすかに濡らしてうつむいている。全身を黒で統一した二人の青年が普段は暴走族の特攻服に身を包んでいることなど、横を通る人たちは思いもしないだろう。
名もなき少年たちは行き場を無くした情熱を燃やし、青春を燃やし、自らを燃やして潔く散ることを良しとする。
けれど、散った本人は知らない。どんなに激しく燃えたとて、後に何も残らないことは決して無いと。わずかな灰がもたらす涙の痛みを。