本研究室で学ぶことを希望される方には,会話分析のアプローチを用いて論文を執筆することが求められます.本研究室で執筆する論文では,相互行為の参加者が直面しているどのような課題が,繰り返し利用可能などのような方法によって解決されているのかについての「研究の主張」を,相互行為のデータを用いて,会話分析のアプローチから立証していただきます.その上で,立証された「研究の主張」が,研究対象に関する既存の研究に対して,そして社会的に,どのような意義を持つのかを論じていただきます.
会話分析は,徹底したボトムアップ型の研究アプローチであるため,研究対象となるデータに対して,「動機付けられない観察」(Sacks 1984: 27)を行うことを求めます.会話分析の研究者は相互行為のデータの中に自らを投げ込み,その分析はデータに導かれるように生み出されていくのです.こうした会話分析に特有の方法的態度は,自身の研究テーマや研究対象に対して非常に強い問題意識を持っている方や,仮説検証型の研究などに慣れてきた方にとって,身につけることが容易ではない場合があります.
会話分析を体系化したエマニュエル・A・シェグロフは(Čmejrková and Prevignano 2003: 49),会話分析を学ぶことは「単に新しい学問分野に取り組むということとは全く異なる」ものであり,「痛みを伴う転換」が必要とされる「長く険しい道である」こと,そして,「そのための覚悟ができておらず,早い段階で大きな成果が必要ならば,これは進むべき道ではないだろう」と述べています.しかし同時に,シェグロフは,「どれほど多くの学生が,会話分析の学びが人生を変えた,と自分に伝えたか分からない」,とも語っています.そこで,本研究室での学びを希望する前に,あなたにとって,会話分析を学ぶことが,本当に必要なものであるのかどうかを,改めて確認してください.
具体的には,まず,エスノメソドロジー・会話分析研究会のwebサイトにあるEMCAとは何かのページの以下の記事を読んでいただければと思います.(以下に,挙げていない同ページの残りの記事もお読みになることを推奨します).
・会話分析とは(黒嶋 智美)
・会話分析研究の国外での広がり(川島 理恵)
・会話分析の国内の広がり(森本 郁代)
・どんな領域の研究をしているのか(戸江 哲理)
その上で,私のミニ講義の動画を視聴し,さらに,私の論文(中川 2022)を読むことで,この研究室での学びのイメージと,ご自身が書く会話分析の論文についてのイメージをつかんでください.
大学院への進学を希望される方は,さらに,串田先生らが執筆された会話分析の教科書(串田ほか 2017)にチャレンジしてみてください.
ここまで述べてきた作業を遂行された方が,本研究室での会話分析の学びを希望されることを歓迎します.
{出願について}
・研究生
上記の作業を遂行された上で,なお研究生として本研究室への所属を希望される方は,宇都宮大学の科目等履修生・研究生の募集案内のページ,の「研究生の募集」を熟読の上,中川敦までご連絡ください.
・学部生
学部生として,本研究室で学ぶことを希望される方は,宇都宮⼤学の学部入学試験情報のページの募集要項を熟読してください.その上で,地域デザイン科学部コミュニティデザイン学科に出願し,合格された場合,2年時に実施されるゼミ選考を経て,選考されると3年時より本研究室に配属されることになります.
ゼミ選考時に事前相談が行われるため,学部受験時点での中川との事前相談は不要です.
・大学院生
大学院生として,本研究室で学ぶことを希望される方は,宇都宮⼤学の大学院入学試験情報のページの募集要項を熟読してください.その上で,博士前期課程であれば,社会デザイン科学専攻のコミュニティデザイン学プログラム,博士後期課程であれば,先端融合科学専攻のグローバル地域デザインプログラムに出願していただくことになります.
本研究室での学びを希望して大学院受験をする場合,入学後に予定している研究テーマ・内容が,このページおよび,「研究対象となる(ならない)データ」のページで詳述されている,本研究室の方針と一致しているかどうかを確認するために,私,中川敦との事前相談が必要となります.
【文献 】
Čmejrková, Svetla and Carlo L. Prevignano, 2003, "On Conversation Analysis: An Interview with Emanuel A. Schegloff [会話分析について: エマニュエル・A・シェグロフとの対話], "Carlo L. Prevignano and Paul J. Thibault, eds., Discussing Conversation Analysis: The work of Emanuel A. Schegloff [会話分析を論じる: エマニュエル・A・シェグロフの仕事], pp. 11–55. Amsterdam/Philadelphia: Benjamins.
串田秀也・ 平本 毅・林 誠,2017,『会話分析入門』勁草書房.
中川敦,2022,「遠距離介護の電話の会話分析――望ましさの提示による申し出の誘い出し」『社会学評論』73(2): 136-53.
Sacks, Harvey, 1984, “Notes on Methodology [方法論に関する覚え書き],” J. Maxwell Atkinson and John Heritage eds., Structures of Social Action: Studies in Conversation Analysis [社会的行為の諸構造:会話分析の研究], Cambridge: Cambridge University Press, 21-7.