<2021年度第4回研究会(通算第20回) Zoom オンライン研究会>
書評会 〜 医学・キリスト教・生をめぐる日米関係 〜
日 時: 2022年2月10日(木)19時〜21時
スピーカー:藤本大士氏(日本学術振興会特別研究員PD/
京都大学大学院教育学研究科 特別研究員PD)
ディスカッサント: 竹内愛子 Aiko Takeuchi-Demirci 氏(コチ大学、イスタンブール)
藤本大士『医学とキリスト教:日本におけるアメリカ・プロテスタントの医療宣教』法政大学出版会、2021。
1859年、宣教師ヘボンがアメリカ長老教会から派遣され、来日した。彼の名前はヘボン式ローマ字の考案者として今日でも知られているだろう。しかし、彼は医師資格を持つ医療宣教師でもあった。医療宣教師とは、医療提供を通じて現地の人々の心を開き、キリスト教を広めようとした宣教師のことである。19世紀に入ると、アメリカやイギリスなどから世界各地に医療宣教師が派遣された。日本にも多くの医療宣教師がやってきたが、これまでの研究では彼らの活動は個別に取り上げられることが多く、包括的に分析した研究がなかった。本書では、幕末からアジア・太平洋戦争後に至るまで、アメリカから日本に派遣された医療宣教師を取り上げ、彼らの医学史・ミッション史における位置づけを明らかにしている。
<2021年度第3回研究会(通算第19回) Zoom オンライン研究会>
日 時: 2022年1月22日(土)9:00~11:00
スピーカー:Mae Ngai 氏 - コロンビア大学 Lung Family Professor of Asian American Studies and Professor of History, and Co-Director of the Center for the Study of Ethnicity and Race. 主著ー Illegal Aliens and the Making of Modern America (Princeton UP 2004『移民の国アメリカの境界』白水社 2021); The Lucky Ones: One Family and the Extraordinary Invention of Chinese America (Houghton Mifflin Harcourt 2010, Princeton UP 2012)
https://history.columbia.edu/person/ngai-mae/
ブックトーク: The Chinese Question: The Gold Rushes and Global Politics. Norton, 2021.
19世紀末から20世紀初頭にかけてアメリカ合衆国、オーストラリア、南アフリカで起きたゴールドラッシュと、それぞれの現場で働いた中国人労働者の世界を検討する。アメリカ合衆国と大英帝国圏の植民社会における中国人移民のリクルートと排斥の過程を検証することで、グローバルな資本主義における人種化された労働者の形成、自由労働をめぐる相剋を論じるグローバルヒストリー。
使用言語:英語(通訳なし)
<2021年度第2回研究会(通算第18回) Zoom オンライン研究会>
日 時: 2021年11月21日(日)午前 10:00~12:00
スピーカー:樋口敏広 Toshihiro Higuchi 氏(ジョージタウン大学歴史学部)
タイトル:地球環境問題の先駆けとしての大気圏内核実験問題
要旨:本報告は、Political Fallout: Nuclear Weapons Testing and the Making of a Global Environmental Crisis (Stanford UP, 2020) の紹介を通じて、冷戦期における軍備管理と緊張緩和の嚆矢として従来論じられてきた部分的核実験禁止条約(1963年)の成立過程を史上初の地球環境条約の一つとして再検討する。大気圏内核実験による地球規模の放射能汚染(グローバル・フォールアウト)は、その時空間の規模ゆえに人体への影響を正確に把握することが困難であり、またそのリスクの許容の是非は社会的に論議を呼び、核保有国の安全保障政策に直結する重大な問題であった。拙著は当初は無害とされたグローバル・フォールアウトが次第に人類の脅威として認識されるようになった過程をアメリカ、イギリス、ソ連を中心に分析し、それが冷戦における政治・文化・科学と密接に連動していたことを明らかにした。執筆を通して得られた知見を振り返りつつ、アメリカが主役となった冷戦と核軍備問題を地球環境史の視点、特に人類の活動が地球環境に影響を与えるようになった新しい地質時代として提唱されている「人新世」(Anthropocene)の視点から考えたい。
<2021年度第1回研究会(通算第17回) Zoom オンライン研究会>
日 時: 2021年8月28日(土)13:30~17:00
スピーカー1:小田悠生(中央大学准教授)
テーマ:Impossible Subjectsとアメリカ移民史研究の潮流
要旨:
本報告では、2021年に邦訳が出版された、アメリカ移民史研究における金字塔 と評される Mae M. Ngai, Impossible Subjects: Illegal Aliens and the Making of Modern America (Princeton UP, 2004) (邦題『「移民の国アメリカ」の境界―歴史のなかのシティズンシップ・人種・ナショナリズム』白水社)を中心に、21世紀のアメリカ移民史研究の潮流と、現代のアメリカ社会への示唆について検討する。
スピーカー2:和泉真澄氏(同志社大学教授)
テーマ:移民史/エスニック史から越境生活史へ-日系カナダ人通史の出版までと今後の研究課題-
要旨:
本報告では、2020年1月に上梓した『日系カナダ人の移動と運動-知られざる日本人の越境生活史』(小鳥遊書房)の刊行に至る経緯、日系カナダ人の通史を書くことの困難と意義、そして今後の研究課題について概観する。戦前に日本からカナダに渡った人々の歴史は移民史の文脈で、第二次大戦期の強制移動・収容を経て戦後に至る日系カナダ人の体験はエスニック史の文脈でこれまで分析されてきたが、本書では「越境生活史」という概念を用い、日加間の双方向の移動や跨太平洋コミュニティの形成、二世・三世世代による「日系カナダ人」としてのアイデンティティ再編、そして人種・民族的多様性を認め、それと交叉する階級間格差の是正を志向する多文化主義社会へとカナダを変貌させた日系人の運動を、一つの連続した歴史として記述した。この記述がカナダおよび日本に関して抱かれている既成イメージの脱却にもたらす可能性や日系移民に関する今後の研究課題などについて考える機会としたい。
スピーカー3:一政史織(中央大学教授)
テーマ:第一次世界大戦後の戦後構想と婦人国際平和自由連盟―エミリー・グリーン・ボルチの思想を中心に-
要旨:
本報告では、第一次世界大戦中及び以降の国際女性平和運動の中心人物の一人であり、婦人国際平和自由連盟(WILPF)第二代会長を務めたエミリー・グリーン・ボルチの平和思想と第一次世界大戦後の戦後構想に焦点をあてる。1915年ハーグで開催された国際女性会議をきっかけに、恒久平和のための女性国際委員会(ICWPP)、そして、それを引き継いで1919年にWILPFが誕生した。傘下の女性諸団体のさまざまな活動と共に、本組織は第一次世界大戦中及び戦後の平和構築や国際協調へ多くの提言をしたと言われている。ボルチは、19世紀末からセツルメント運動に熱心に関わり、社会科学研究と女子教育に尽力した人物で、スラヴ系移民について先駆的な研究も展開した。ボルチの思想や活動を分析することで、セツルメント運動や女性参政権運動に連なる国際女性平和運動の中で生まれたWILPFの特徴とその平和構想を移民とジェンダーという視点から読み解きたい。