RESEARCH

AREA

中華人民共和国:人口13.2億,漢族92%

チベット高原:250万平方km(全国土の1/4)

中国国内チベット系民族::542万人(自治区外に279万人)

宗教:チベット仏教各教派,ポン教,自然信仰

言語:チベット語(アムド,カム,ウツァンの三大方言)

文字:7c.に文字制定

政治主体:ダライラマ政権(17c~1959),ウツァン地方を統治

歩み:統一王朝「吐蕃」(7c.~9c.)

元~清朝期は教団政権が乱立,委任統治

民国期独立宣言,1951年「解放」

1959年動乱によりダライラマ14世亡命

大躍進~文革を経て1982年から開放政策

~アムドの基礎データ~

・アムド(青海チベット):黄河河原地区から最上流部(西寧-蘭州近郊)にかけての地域は「アムド」と称される。この区間の黄河はちょうどSの字を描いたように蛇行しており【図1参照】、その流域に住んでいる、牧畜と農耕(麦栽培)を主要な生業としている人々が「アムドワ(アムド人)」と呼ばれる人々である。

・アムドという言葉の由来は、チベット高原の地理について述べた仏教書では「聖山アニマチェンを南端とし、ムド・ラ ・リンモを北端とする範囲に広がっている地域であり、両者の頭の音を取って“アムド”と呼ばれる」と書かれている。

・言語:チベット語の3大方言の一つであるアムド語が話される。話者人口は現在およそ140万人程いると考えられる(2000年人口統計に基づく筆者の推計)。東チベットの方言であるカム語、中央チベットのウ・ツァン語とは意思疎通ができないほど口語間での差が大きい。海東地区、天祝チベット族自治県など漢族との接触の最前線に置かれている地域では、チベット語の会話や文字のリテラシーを持たない人も多い。

・宗教:チベット仏教、ボン教、中国仏教、イスラム教、道教など

・民族:チベット族、漢族、回族、サラ族、モンゴル族、トゥー族、ユグル族、トンシャン族、ボーアン族など

~アムドの3つの表情~

・牧畜のアムド人:アムドを特徴づけるのは“黄河のS字”である。青海省奥地に端を発するマチュ(黄河)は、チベット高原東部の大地を切り分け、険しい峡谷を形成しながらS字型を描いて蛇行していく。この黄河の”S”の下半分に当たる屈曲部が、牧畜民が集中して暮らす地方となっている。地図的には青海省南部、および四川省の北部地域を占める。ゴロクのアニマチン周域の草原、マロ地方のサンコ草原、アバのメワ地域の草原などが特に優良な放牧地として知られている。

・農耕のアムド人:“黄河のS字”の上半分の屈曲に展開するのが農耕アムド人の社会である。農耕といっても大半は半農半牧をいとなんでおり、家畜への依存度は標高が上にいくほど高くなる。ワイェン(化隆)、ヤゼ(循化)などの人口の多い農村部からなる海東地区、およびジェンザ、レコン、チュカなどが主要な農耕地域となっている。また、ゴロクのパンマやラギャは、牧畜地域のど真ん中にあって農耕が可能な数少ない地方として、重要な特色をもっている。

・都市のアムド人:西寧、蘭州など、都市部にも多くのチベット人が住んでいる。民族大学や師範大学が都市部のチベタン・コミュニティの中心となっている。また、北京や成都など、チベット高原の外側にある大都市にもチベット人が集中して居住している地区が存在する。それら中国内地に形成されたリトル・チベットの諸都市は商業と仏教文化を両軸とする濃密なネットワークで結ばれている。