毎月主に第2金曜日にオンラインで開催しております
4/12(金) 15:30~17:00
景山諒平 (東北大学)
反復積分とホモトピー極限
アブストラクト:多様体の有理homotopy群とhomology群を繋ぐ定理としてChenの定理やHainの定理があります。これらに現れる写像はその構成を見れば非常に似通っている、ないしほとんど同じものだと分かります。
今回の講演ではこれらの写像はその肝の一つである反復積分を、積分を使わない方法で言い換えることでこの定理を''一般化''できそうだということを話します。
これは現在私が興味を持って取り組んでいる課題の一つであり、未解決な箇所を含んでいます。その箇所に関しての議論も出来れば良いなと思っています。
5/10(金) 15:30~17:00
奥原 悠朔 (信州大学)
linking numberと配置空間の自由ループ空間
アブストラクト:2成分絡み目の有名な不変量としてlinking numberが知られている。Chenによる反復積分の理論に従えば、配置空間の自由ループ空間に微分形式を導ける。そこで単位球面の体積形式に反復積分を適用すると、linking numberの1つの積分表示が得られる。
本講演ではこの表示について詳しく述べる。これを成分数について一般化しようとしたときの難点について、時間の許す限り説明する。
講演の内容は現在研究中のものである。
6/12(水) 15:30~17:00
多寳 雅樹 (東京大学)
Diffeological spaceの接空間
アブストラクト:可微分多様体の拡張概念の一つに、diffeological spaceと呼ばれるものがあります。
今回の講演では、diffeological space上の接空間の様々な種類の定義を紹介します。
これらの中には、必ずしも同値でない定義が多く含まれています。実際に幾つかの異なる種類の接空間が同型でないことが計算によって明らかになるので、そのような空間の例や、実際の計算をお見せできればと思います。
時間があれば、圏におけるtangent bundle categoryと呼ばれる概念を紹介し、diffeological spaceの圏におけるtangent bundle categoryの導入に際し直面する課題を紹介します。
これは現在私が興味を持って取り組んでいる課題の一つです。
7/9(火) 15:30~17:00
赤坂奎茉 (千葉大学)
A_∞圏のホモトピー論
アブストラクト:ホモロジカルミラー対称性の定式化のために、A_∞圏が定義された。これは射の結合律がホモトピーの違いを除いてしか成立しないようなdg圏の一般化である。
本講演では、A_∞圏のホモトピー論を構築することを目標に、dg圏のホモトピー論を復習しながら、A_∞圏の枠組みへの一般化が困難であることを見る。
特に、A_∞圏の1圏ではなく、A_∞圏の∞圏の枠組みで考えることが重要であることを、時間が許す限り説明する。
講演の内容は現在研究中のものである。
9/20(金) 15:30~17:00
田邊真郷 (北海道大学)
特異点の数え上げとはめ込みのトポロジー
アブストラクト:はめ込みの分類は、その微分写像に関する何らかの数え上げによって実行されます。平面曲線の回転数は、非自明で最も簡単な例といえます。
さて、この数え上げを特異点論的な立場から再解釈する研究が、21世紀に入ってから続々と現れました。
その手法は、与えられたはめ込みを境界に持つような拡張写像 --- 特異Seifert膜 --- を考え、そこに現れる特異点の数え上げによってはめ込みの不変量を得るというものです。
今回は、特異Seifert膜にまつわる一連の研究をご紹介します。時間が許せば、私が最近調べている複素特異点リンクのはめ込みについてもお話しできればと思います。
10/11(金) 15:30~17:00
若月駿(名古屋大学)
Homological perturbation theory and its application
アブストラクト:(A,d)が鎖複体,(B,d)がその部分複体で,ホモトピー h: A→A によりBがAの変位レトラクトであるとき,組 ((A,d), (B,d), h) を contraction と呼ぶ.さらに perturbation t: A→A すなわちAの新たな微分 d+t: A→A が与えられているとき,(1-ht が可逆であれば) 新たな contraction ((A,d+t), (B,d+t'), h') が得られる.これが basic perturbation lemma である.さらに,fibration の全空間の鎖複体の記述(つまりSerreスペクトル系列の精密化)や,A_∞ 代数の transfer theorem などが,basic perturbation lemma の応用として得られることが知られている.
本講演の前半では basic perturbation lemma の主張と具体例(toy model)について述べ,後半では応用を紹介する.前提知識としては,前半部分は鎖複体の基本事項(ホモトピーの定義程度)さえ知っていれば十分である.後半部分についても同程度の知識で理解できるよう,(時間が許せば)背景知識から説明する予定である.
1/24(金) 15:30~17:00
丸山修平(金沢大学)
Narimanによる森田の定理の短証明
アブストラクト:Sam Narimanさんの論文「On powers of the Euler class for flat circle bundles」の後半の内容を紹介します。
1984年に森田茂之先生は、平坦C^∞円周束のオイラー類の冪乗が有理係数で生き残ることを証明しました。その証明で用いられたのはMather--Thurston理論と有理ホモトピー論でした。Narimanさんは同変版のMather--Thurston理論を作り上げ、その応用のひとつとして上記の森田先生の定理の短い証明を与えました。こちらの証明では有理ホモトピー論を用いません。
このNarimanさんによる証明について、私が理解できた部分を話したいと思います。(とある写像の弱同値についてまだ分かっていないので、分かる方がいたら教えてください。)
2/14(金) 15:00~16:30
名取雅生(東京大学)
実Bott周期性の短証明の可能性
アブストラクト:複素Bott周期性のHarrisによる1980年の証明があります。これはユニタリ行列のスペクトル分解とgroup completion theoremを組み合わせた短くてelegantな証明です。これにはベクトル空間でラベル付けられた配置空間という幾何学的な描像があります。この証明を実Bott周期性に適用する文献が見当たらないので、うまく回らないか考えています。その際に四元数行列の解析が出てくるので、それを紹介したいと思います。