代数トポロジー若手情報交換会では年1回程度対面での開催を計画しております。
本ページは2024年3月に行われる対面開催の記録です。
開催日時:2024 年 3 月 16 日~17 日
開催場所:名古屋大学 東山キャンパス 多元数理科学棟 452号室
講演者
荒川研資(京都大学 M2), 洞龍弥(東京大学 M2), 和久田葵(東京大学 M2), 水野 弘基(信州大学 D2), 月森綾乃(名古屋大学 M1), 名取雅生(東京大学 D2), 武田雅広(京都大学 非常勤講師)
プログラム
3/16
13:00~14:00 武田雅広(京都大学)
14:15~15:15 月森綾乃(名古屋大学)
15:30~16:30 洞龍弥(東京大学)
16:45~17:45 荒川研資(京都大学)
3/17
9:00 ~ 10:00 和久田葵(東京大学)
10:15~11:15 水野 弘基(信州大学)
11:30~12:30 名取雅生(東京大学)
12:30~13:00 自由討論
世話人:浅尾泰彦(福岡大学), 丸山修平(金沢大学), 若月駿(名古屋大学), 堀内遼(佛教大学), 武田雅広(京都大学)
タイトル、アブストラクト
武田雅広(京都大学)
Steenrodの問題とStanley-Reisner環
どのような環が空間の特異コホモロジー環として表現されるか, という問題はSteenrod によって提起された代数トポロジーの古典的な問題の一つである. この問題へのアプローチの一つとしてSteenrod代数の作用を考えるという手法が古くからある。私たちは4次元と6次元の生成元で生成されるStanley-Reisner環にSteenrod代数の作用が存在する条件とグラフの彩色のある種の一般化に関係があることを示した。本講演ではその解説から始め、グラフの彩色の一般化に関して議論したい。
本講演はDonald Stanley氏との共同研究に基づく。
月森綾乃(名古屋大学)
monoidal categoryとalgebra object
古典的なモノイダル圏の表現は、無限圏の設定ではあまり都合のよくないことが知られており、かわりに Grothendieck opfibration による構成が考えられています。今回の発表では、無限圏には立ち入らずに、一般の圏における、Grothendieck opfibrationによるsymmmetric monoidal category の構成と、その例を紹介します。内容は、A SHORT COURSE ON ∞-CATEGORIES(Moritz Groth )、An Introduction to Higher Categorical Algebra (David Gepner)を参考にしています。
洞龍弥(東京大学)
トポス理論入門
トポスの幾何的および論理学的側面,そしてそれらがいかにして対応するかを概観することを目的に,勉強不足ながら話させていただきます.空間としてのトポスは,Grothendieckが「空間にとって最も本質的なものの具現化(“incarnant” ce qui est le plus essentiel à l’espace)」と評するように,彼の空間概念の革新の中で生まれました.後にLawvereらが論理学的な視点から(Grothendieck)トポスを一般化し,現代の(初等)トポスの定義が誕生します.結果として,Cohenによる連続体仮説の独立性証明やブラウアーの見た直観主義の世界が,層の為す集合論的宇宙として(我々の基礎づけの中に!)現れます.私の発表では,幾何学を背景に持つ人々に,論理学とのダイナミックな対応の魅力を伝えられればと思います.発表の最後には,トポスの(相対的な)連結性に関する私の修論について僅かに触れる予定です.
荒川研資(京都大学)
A context for manifold calculus
Taylor approximations of functions is a powerful technique in calculus. Borrowing an analogy from this, Goodwillie initiated a study of homotopical properties of functors in terms of their successive approximations, called functor calculus. Weiss realized that functor calculus can be used to study manifolds by approximating functors (pre(co)sheaves) on manifolds. Not only is manifold calculus a widely successful idea to study manifolds in general, but it also elucidates a beautiful interplay between manifold topology and higher category theory. In this talk, we will introduce basic notions of manifold calculus, with particular emphasis on its formal aspects in the setting of ∞-categories. Some generalizations of existing results (of Boavida de Brito--Weiss and Tsopméné--Stanley) will also -be mentioned.
和久田葵(東京大学 M2)
TWGリー代数の中心定理の一般化
向き付けられた曲面のGoldman Lie代数はloopの向きを反転させる自然なLie代数同型写像によって,Z/2-次数付きLie代数になる.そのeven partはThurston-Wolpert-Goldman Lie代数(TWG Lie代数)と呼ばれる.ChasとKabirajは,TWG Lie代数の中心が,constant loopの類と,境界成分や1点穴を周回するloopの類によって生成されることを証明した.even partの中心は,even partの各元によってannihilateされるeven partの元全体の集合と言い換えることができる.本講演ではodd partを含む残りの3つの場合についても,同様の定理が成り立つことを証明する.
水野 弘基(信州大学 D2)
スケイン代数による量子化と近年の動向
スケイン代数は結び目不変量と不変量が満たすスケイン関係式から構成される結合代数である.V. Turaevによって,Alexander-Conway型のスケイン代数が,Goldman Lie代数の量子化に対応することが示された.これは曲面上の曲線がもつ構造が,結び目理論由来の代数構造に量子化されるという主張になっている.本講演ではスケイン代数とGoldman Lie代数の量子化を解説する.そして,時間が許せば,Kauffman型のスケイン代数と∞圏に関する論文のサーベイを紹介する.
名取雅生(東京大学 D2)
Fulton-MacPhersonのBivariant Theory
Bivariant theoryといえばよく知られているのはKasparovによる作用素環のKK-theoryである. しかし今回はそれではなくFulton-MacPhersonによるbivariant theoryについて話す. これは2つの対象に対してアーベル群を返すわけではなく, 1つの射に対してアーベル群を返すという特徴を持つ, contravariant theoryとcovariant theoryを統合した理論である. 各一般コホモロジー理論に対して対応するbivariant theoryがある. また, このbivariant theoryはGrothendieck-Riemann-Rochの圏論的なフレームワークを与える. Grothendieck-Riemann-RochはHirzebruch-Riemann-Rochのある一般化である. 本講演ではbivariant theoryの定義から始めてGrothendieck-Riemann-Rochの枠組みについて解説を試みる. また, 講演者が考えているbivariant theoryの不完全な例についても話したい.