代数トポロジー若手情報交換会では年1回程度対面での開催を計画しております。
本ページは2025年3月に行われる対面開催の記録です。
開催日時:2025 年 3 月 15 日~16 日
開催場所:名古屋大学 東山キャンパス 多元数理科学棟 452号室
講演者
和久田葵(東大),荒武永史(小山高専),前原悠究(RIMS),持田知朗(東北大),上村太一(名古屋大),吉岡玲音(東大)
プログラム
3/15
10:00〜12:00 自由討論
14:20〜15:20 和久田葵(東大)
15:40〜16:40 荒武永史(小山高専)
17:00〜18:00 前原悠究(RIMS)
3/16
9:00〜10:00 持田知朗(東北大)
10:20〜11:20 上村太一(名古屋大)
11:40〜12:40 吉岡玲音(東大)
世話人:浅尾泰彦(福岡大学), 丸山修平(金沢大学), 若月駿(名古屋大学), 堀内遼(佛教大学)
タイトル、アブストラクト
和久田葵(東大)
Puncture loops on a non-orientable surface
On a connected surface N with negative Euler characteristic, the free homotopy class of a loop obtained by smoothing an intersection of two closed geodesics may wind around a puncture. Chas and Kabiraj showed that this phenomenon does not occur when the surface N is orientable. In this talk, we prove that this phenomenon occurs when N is non-orientable and both geodesics involved in the smoothing are actually one-sided. In particular, we show that the free homotopy class of a loop obtained by traversing one of the geodesics m times can wind around a puncture for at most two values of m. Furthermore, if two such m’s exist, they are consecutive odd integers.
荒武永史(小山高専)
トポスの幾何的側面について
Grothendieck達はSGAの4巻において、位相空間上の層の概念を一般化することにより、トポス(=層の圏)の概念を定義した。Grothendieckは、「位相空間由来とは限らないトポスに対しても種々の幾何学的不変量を定義できる」などの観察を通して、「トポスという圏そのものを“generalized space”と見なす」という考え方を提唱した。一方で、1970年頃にトポスのさらなる拡張である初等トポスの理論が生まれたことで、トポスの圏論的・論理学的研究が爆発的に進んだ。このようなトポス理論の深化を経て、1980年代から90年代にかけて“トポスを基本的な対象とする幾何学”の研究が強力に推し進められ、近年重要性を増している∞-トポスの理論やcondensed mathematicsにもその考え方が引き継がれている。本講演では、トポスを“generalized space”と見なすことの妥当性について論じ、“トポスの幾何学”のいくつかの具体例を紹介する。特に、Hakimによる環付きトポスのスペクトラム、およびCole-Costeによるスペクトラムの一般化を紹介し、時間が許せば代数付きトポスと圏論的論理学との関わりについても触れたい。
前原悠究(RIMS)
An interactive talk on algebraic weak ω-categories
高次圏への代数的なアプローチについて、皆さんの興味の方向性をリアルタイムに伺い、できる限りそれに合わせてお話しします。とりあえずデフォルトの話題としては、GrothendieckのHomotopy Hypothesis(Whiteheadの定理を極端にしたようなもの)を絡めた動機の話を考えています。
持田知朗(東北大)
三角形分割と不変量
三角形分割を用いた多様体の不変量の構成を考える.最高次の単体を適切な線形写像と見做し,それらの貼り合いかたに対応させて合成をとることで大きなテンソルが定まる.不変量であるためにはこれが三角形分割の取り方に依らないことを示す必要があるが,その際にPachner relationと呼ばれる関係式が鍵となる.本講演では様々な代数からPachner relationの解を導出できることを,主に低次元の場合に例とともに紹介する.本発表は佐賀大学のMihalache Serban Matei氏との共同研究に基づく.
上村太一(名古屋大)
ホモトピー型理論
ホモトピー型理論(Homotopy Type Theory, HoTT)はホモトピー論、高次元圏論、数理論理学、計算機科学の交点にある新しいな分野です。この講演では、ホモトピー型理論がホモトピー論、モデル圏、(∞,1)-圏の「言語」となることを説明します。
吉岡玲音(東大)
埋め込みの空間の代数トポロジー
多様体の埋め込みを調べるとき、埋め込み全体の空間に代数トポロジーを適用することがある。結び目のVasiliev不変量や高次元埋め込みのHaefliger不変量が代表的である。余次元が3以上のとき、この方法は強力である。実際GoodwillieとWeissは、埋め込みの空間のホモトピー型が点配置空間を用いて記述されることを示した。しかし余次元2は謎に包まれている。
この講演では、Bott-Taubes配置空間積分という方法で余次元2にアプローチする。系として、2次元結び目の空間の基本群が、無限生成であることの別証明をする。この結果は、2019年にBudney, Gabai, Watanabeが最初に示していた。我々の証明はこの結果と、上記のVassiliev不変量やGoodwillie-Weiss calculusとの関係を与えるという特徴を持つ。