毎月主に第2金曜日にオンラインで開催しております
4/14(金) 15:30~17:00
水野 弘基 (信州大学)
絡み目とskein加群
アブストラクト:一般に可微分多様体上のskein加群は,可微分多様体上の絡み目で生成される自由加群を局所的な関係式(skein関係式)で割ることで得られる.特に重要なskein加群は,1990年代にTuraevとPrzytickiによって独立に導入された曲面上のKauffman skein加群であり,character varietyやTQFT,量子不変量の研究などに用いられる.今回は,古典的な絡み目理論におけるJones多項式から始めてskein加群を導入し,諸性質について解説する.またskein関係式を変えることで様々な具体例が得られるため,それらについても紹介する予定である.
5/12(金) 15:30~17:00
木津 暁 (京都大学)
実モーメントアングル複体のG-indexについて
アブストラクト:実モーメントアングル複体は、単体複体に対して定義されるCW複体でありトーリックトポロジーとよばれる分野においてその重要性が見出された。その後、群作用や組合せ論や可換代数といった他の分野との関連も知られるようになり、現在でも盛んに研究されている。
ある空間に群Gが自由に作用するとき、その空間の「G-index」とよばれる不変量が定義され、自由な群作用を持つ空間のトポロジーを調べるのに役立つ。本講演では、実モーメントアングル複体のG-indexについて考察し、元の単体複体の組み合わせ的な情報を用いて記述する。また、これに関連して、G-coindexやG-weightとよばれる不変量についても考察する。
6/9(金) 15:30~17:00
箕輪 悠希 (京都大学)
ゲージ群の分類空間のコホモロジーについて
アブストラクト:ゲージ群とは、主束の自己同型からなる位相群のことである。ゲージ群のホモトピー型に関しては広く研究がなされているが、一方でゲージ群やその分類空間の(コ)ホモロジーについてはあまり多くのことが知られていない。
本講演ではゲージ群のホモトピーや(コ)ホモロジーに関する既存の結果を概説するとともに、具体例としてS^2上の主SO(n)束のゲージ群の分類空間のコホモロジーについて論ずる。
7/7(金) 15:30~17:00
石橋 典 (東北大学)
曲面のTeichmuller理論から生ずる代数系
曲面のTeichmuller空間とは, その曲面上の複素構造 (あるいは双曲構造) の変形空間である. 本講演では, Teichmuller空間上の幾何学からGoldman Lie代数, スケイン代数, クラスター代数などの興味深い代数系が生じることを紹介する. これらの代数系は曲面の位相的な性質を反映した豊かな対象であり, 互いに密接に関連している.
高階Teichmuller理論においてこれらの代数の“高階版“を研究することは目下進展中のトピックであるが, 今回はその一番基本的な部分を紹介する.
9/29(金) 15:30~17:00
浅尾 泰彦 (福岡大学)
Set → Ab v.s. sSet → sAb
今回発表する考察は「Set → Abは情報を落とさないのになぜsSet → sAbは情報を落としているのか」が知りたい(目で見たい)という動機から来ています。もう少し説明すると、集合から自由生成アーベル群を構成する関手は情報を落としません。例えば2つの集合X, Yから自由アーベル群ZX, ZYを構成すると、基底の濃度の一意性からZXとZYが同型の時XとYも同型です。これは圏論の言葉で言えば関手Set → Abが本質的単射ということになります。それではこの関手が誘導する関手sSet → sAbはどうかと言えば、これはかなり情報を落とす気がします。その1つの根拠としてsSetはホモトピー論的に位相空間の圏Topと同値、sAbは鎖複体の圏Chと同値であり、TopからChは情報を落としている、ということが挙げられます。ただこの議論はホモトピー圏をとっているので厳密には根拠になっていません。もっと直接的に情報の落ち方を見たいと思ってわかったことが、線形代数の少し難しい演習問題レベルの考察でわかることですが、そもそもsSet → sAbは本質的単射でありません。今回はこれらを含む考察を紹介するのと、それだけでは時間が余りますので、前提知識はあまり必要ないように説明しながら話そうと思います。(講演記録)
10/13(金) 15:30~17:00
齋藤峻也(名古屋大学)
DG環と森田理論
私は、普段「環の表現論」という分野を研究しています。なので代数トポロジーに関する話は出来ませんが、共通の道具である「DG環」や「ホモトピー代数」をどのように用いているのか、なぜ代数トポロジーに興味を持っているのかについて話そうと思います。
環の表現論は、簡単に言えば環上の加群の圏やその導来圏などのアーベル圏・三角圏を調べる分野です。講演では、環の表現論の動機や基本的な考え方をまず紹介します。とくにアーベル圏の中で加群の圏を特徴付ける「森田理論」について話します。その後、三角圏に対してもある種の「森田理論」を展開しようとすると自然にDG環が姿を現すことを説明したいと思います。もし時間がありそうなら、DG環を用いてある種の三角圏を調べた自身の研究「周期傾理論」についてお話しようと思います。
11/10(金) 15:30~17:00
前川拓海(東京大学)
Introducing Cat∞
∞-圏論の概観を行います。とくに圏論の最初の基本概念(圏同値・部分圏・随伴・種々のファイブレーション)に至るまでの定義集を与えることを目指します。時間が許せば、``∞圏による圏論''を可能にするいくつかの基本定理を紹介します。
あるいは、「代数トポロジストとしてどのように∞-圏と向き合い得るか」や「ホモトピー論にどのような応用が可能なのか」といった点を述べることも可能です。聴衆とのインタラクションを歓迎したいと思います。(講演記録)
12/15(金) 15:30~17:00
佐野岳人(東京大学)
On Bar-Natan’s reformulation of Khovanov homology
Khovanov ホモロジーは Jones 多項式の圏化として M. Khovanov が 2000 年に導入した結び目のホモロジー理論です。2006 年に D. Bar-Natan は Khovanov ホモロジーを「2次元コボルディズムのなす圏の上の形式的な複体」として定式化しなおし、対象を結び目からタングルに拡張することに成功しました。この拡張は理論の見通しを良くしただけでなく、Khovanov ホモロジーのコンピュータ計算速度を著しく改善することにも繋がりました。
この発表では、Khovanov ホモロジーのオリジナルの定義と Bar-Natan の定式化を説明して、理論と計算方法の両面からその面白さを紹介したいと思います。結び目理論の知識は前提としません。(講演スライド)
2/19(月) 15:30~17:00
堀内遼(佛教大学)
豊饒圏とトロピカル数学
藤井宗一郎さんの「Enriched Categories and Tropical Mathematics」というサーベイ論文を紹介します。
この論文では、トロピカル数学の枠組みが豊穣圏の言葉である程度は書けるだろうと主張されています。より正確にいえば、これまでトロピカル数学で知られてきたいくつかの概念が、quantaleで豊穣化された圏の観点から統一的に理解できると主張されています。例えばLawvereの意味での距離空間などもquantaleで豊穣化された圏として、この論文で扱われています。
講演者はこの辺りの勉強を始めたばかりなので、この講演ではquantaleの定義をして、簡単な例を見て、基本的な随伴の構成などを話す程度になると思います。講演というよりは、情報交換会という感じになるかと思います。