意見交換の概要を取りまとめました。(文責は実行委員会にあります。修正等が必要な場合にはご連絡ください)
〇 富士川の水質調査が山梨県と静岡県で行われているが、田んぼや川岸に堆積したヘドロを見ると、まだ十分とは言えない。河川水のみではなく流域の調査も必要。
〇 ダムが埋まり台風の影響で床上浸水して移転するような状況になった。このことをマスコミ始め関係者が取り上げ、結果知事がダム会社に強い要請をしたおかげで現在多数の重機が浚渫を行っている。濁りも魚のことも大切だが、人間が埋まったらどうにもならん所まで追い込まれた。現在は災害を防ぐため浚渫が行われ、多少の降雨であれば安全なところまで来ている。
稲又谷のダムでこんな事態になってしまった。色々な行政の立場の人もいるが、予算消化のために、人間も水生生物も混乱している状況になっている。
川に興味を持って貰うことは重要だが、地元住民とすれば被災することなく生活ができる状況になって欲しい。
3年前の秋、24号の台風で雨畑ダムが埋まり、雨畑集落の中で床上浸水、移転、居住不能な家屋が出て、お茶工場も床上浸水になった。このため対策協議会を設立し、ダム会社や行政と協議した。長崎知事が動いてそれを静岡新聞や山日新聞に取り上げて貰った。企業も水利権を取り上げられては困るので、重い腰を上げた。ダムが埋まる話は20年以上前からありその対策を要望してきた。
大浜さんは厳しい人で、重機のバケットで直接川底を掘らないようにダム会社へ要請したが、地元とすれば川底は下げて貰わなければ困る。川底を掘らないように作業が行われているため時間がかかっている。
今回の降雨で富士川、早川は濁っていたが、雨畑は澄んでいた。稲又谷のことはあるがそういう状況のこともある。地球研の方の研究には感激し、驚いた。浚渫が進んでいるのは各方面の色々な方達のおかげで感謝している。
〇 25年前から富士川でラフティング業を始め、富士川の環境と水生生物を観察してきた。富士川流域のリバースポーツで将来にわたって地域を活性化する可能性にかけて行きたい。地域で子供達のカヌークラブを作り小さいころから川に親しめるような地域づくりをしたい。川に水が流れていることは非常に大事なことだと思う。国土交通大臣が令和4年度中に富士川へ維持流量を設定すると答弁した。一級河川109水系の内維持流量が設置されていないのは数河川しかない。
Q:富士川の河川維持流量はどれくらいが良いと思うか? 四ヶ郷堰堤の魚道をアユが上るのにはどれくらいの流量が必要なのか?
A:現在の維持流量は、塩ノ沢の堰堤で夏は5トン/s、それ以外は3トン/s。維持流量には基準が3通りあり、その中の0.1~0.3トン/s・100km2で計算すると、かなり十分な量となるが、これは取水側に向いた基準。正常流量設定の手引きには約10項目があるが、その殆どが生物の魚類から算出されている。産卵場がある場合にはそこの水深と流速から、産卵場がない場合には代表魚種の体高の2倍の水深から算出されている。この設定方法を変えて欲しい、そして流量が増えて欲しいというのが、私の願い。
魚道については、左岸は流量が少ない方が良い。右岸についてはある程度の流量があれば良いが、流路の流れ方によってかなり状況が変わってくるので、どれくらいあれば良いとは言えない。
Q:維持流量を決める基準の問題と誰がどのような手続きで決めているのか?について、もう少し説明が欲しい。基準は誰がどのように決めるのか?
A:国交省が決めている基準。見直しがあれば変わるかもしれない。一般的には調査をして魚が上れる上れないに基づき決められる。地域の声を聞くことになっているが、簡単に意見が聞き入れられるものでもない。
Q:そういう手順が必ずしも確立されている訳ではないということか?
A:国、県、市町村等関係者で「アユが住みよい環境づくりの協議会」が立ち上がり、国交省も維持流量を設定すると言っているので、動きはかなり流動的。マニュアルよりはかなり配慮されるかもしれない。
〇 十島堰堤から下の流量が夏期には少なくなり、小川のようになるのが問題。
〇 水を利用する側のコントロールによって流量が変わり、川にとって必要な時期に流量が少なくなってしまう現状があるということ。
〇 維持流量については、地元町長から「国交省も増やす方向で改善されるはずなので、そこから川の再生を進めよう」という話があった。
〇 地元自治体とのやりとりをしながら、維持流量の設定がなされると言うことが分かる。
〇 旧芝川町に住んでいてここ10年富士川が汚れ水が少なく昔と全然違う、昔の富士川に戻ってもらいたい。汚れの中で、水量が色々な問題も全て解決するという、大窪さんの考えに共感する。ヘドロ等の問題に対し皆でどうしたらよいのかを話し合って行きたい。
富士市と静岡市と富士宮市の市議会は請願を国と県に提出した。山梨と静岡で一緒に連携して活動をすることを山梨の町議に要請したが断られた。市民の皆さんの声が政治を動かす。このガバナンスがどうなるか皆で声を上げてゆくことが必要。
〇 富士川にアユが例年になく多く見え、食み跡も各所に見える。ただしそこへ行く進入路にポールが立っているので車の入ることができない。川と親しむのであれば、子供でも大人でも川に親しめる環境を整備してほしい。
〇 川に水を戻すという意見が多いが、なかなか難しい。発電は地元にお金が落ちる。早川町には相当入っているはず。発電を減らすと町の収入が失われるかもしれない。色々なことが水問題には絡んでいるので、それをどのようにほぐしていくかが難しい。天竜川も大井川も電源開発がここと同様に進み同じ問題を抱えている。
〇 社会的な立場のご意見、町の運営など色々なことに絡んでいるということを、一緒に考えていかなくてはいけない。
〇 富士川町と包括連携協定を結び町づくりを行っているが、富士川舟運を復活させ水とのふれあいと賑わいを取り戻して欲しい。10月5日に中部横断道開通1周年記念のシンポで富士川舟運を取り上げる。イベント的に川下りで観光客が来るようにして富士川舟運を再建し、新しい富士川水系のつながりを作りたい。
〇 本日は濁りや生物や流量など狭い意味での河川環境の話だったが、人々をつないできた川が歴史や文化を背負っていると言うことも気づかせていただくご意見でした。経済や歴史的側面など様々な観点から川づくりを見ていくと視点が広がる。
〇 相模川・桂川流域協議会は、山梨県、神奈川県の1998年官民事業者の3者が流域をトータルに、森づくりや川の整備計画なども含め考えなど、広範囲のことをやっている。構成する市民と団体は多様に絡み合っている。また流域の全ての自治体、市町村、山梨県、神奈川県、国交省の京浜河川事務所が入っている。1992年に地域アジェンダを作成し、それに賛同する市民を集めた。アジェンダを作る際には、泊まり込みで喧々諤々の議論がされた。言質を取らない、部屋を出たら恨み辛みを後に残さないなどの約束の下に行われた。その後20年立ち昨年改定したが、この20年間でどれだけできたかというと形に成っているものは余りないが、後退はしていない。幹事会などで非常に時間を使っているが、絶滅しそうに成っていた地域の植物を保全していくための土台はできた。川に親しむ視点で神奈川では河川利用として駐車場があったり、乗り入れられるように成ったりしている。河川の護岸工事されたところにワンドを作って生態系を復元させることも行われている。
地域ガバナンスは非常に難しい。それぞれの自治体の思惑・予算・利権がぶつかり合う、その中で何を共通の目的にして行くのかは、未だ手探りの状態。対立ではなくお互いがアイデアを出し合うことで話し合いができるようになった。
富士川でも流域の山梨県と静岡県で協力してトータルに考える流域ガバナンスができたら良い。山梨県は多摩川、相模川、富士川と3つも源流を抱えている。できれば、1都3県の全てを統括した流域ガバナンスができれば良いと考えている。
Q:協議会としての具体的な活動は?
A:流域が113kmと長いので、山梨県内に2つ、神奈川県内に3つの地域協議会がある。その地域が持つ課題を掘り出しながら、子供たちが興味を持つ活動を行っている。流域トータルとしては、水源環境税の使途になっていることもあり、森林、森づくりが注目されている。森を健康にしないと川も良くならない。昨年は森林環境譲与税を流域に回し、健康な森づくりと子供達が親しめる森について検討を進めてきた。自然体験会も含め年3から4回、年1回流域シンポを両県で交互に開催し、森林やプラスチックゴミを課題としてきた。又会報誌を年2回発行している。
〇 この会議の成果は画期的なものだと思う。その上で濁りと流量がこの問題には大きく関わっているので、上流にある御勅使川についても注意して欲しい。早川の濁りに関して人為的原因の特定は困難としてしまうと問題は解決しない。大学や市民のマンパワーと時間を使えば、原因が特定できるかもしれない。一つ一つ原因をつぶしていくことが問題の解決につながる。
本流堂には早川で儲けて、早川の価値を高めて欲しい。