手紙遺産  もくじ

『手紙遺産』 書籍・DVD・CD・PDFの内容

第一章 愛 17

文学青年から少女への純粋なプロポーズ ―― 芥川龍之介

僕のやっている商売は、今の日本で一番金にならない商売です 18

妻帯者(さいたいしゃ)から人妻への屈折した告白 ―― 谷崎潤一郎

ご主人様、どうぞどうぞお願いでござます 24

南極越冬中の夫への三文字の電信年賀状 ―― 大塚ツネ子

アナタ 30

弟子(でし)から師(し)への感情的なファンレター ―― 萩原朔太郎

わずかの時日(じじつ)の間に、あなたはすっかり私をとりこにされてしまった。 33

国民詩人の感謝をこめた結婚通知 ―― 北原白秋

白(はく)秋(しゅう)およめさまをもらい嬉(うれ)しくてたまらず候(そうろう)。 38

少女から不良中年へのあいまいな命令 ―― 川端康成

私は忘れますけど、あなたは覚えていてください 44

決められない画家の美しい未練 ―― 竹久夢二

ゆき子さん、私は 49

近況報告の余白に置く言葉の威力 ―― 太宰治

コイシイ 57

第二章 あいさつ 63

深い感謝を伝えた短いお礼 ―― 松尾芭蕉

雪のように真っ白な塩を一斤(いっきん)ほど送ってくださり 64

一通で何度も感謝を届ける方法 ―― 島崎藤村

お送り下(くださ)ったものを毎朝(まいあさ)の友(とも)として、その度(たび)に御地(おんち)のことを思い出すでしょう。 68

親友の結婚に贈る非常識な祝辞 ―― 若山牧水

寂しさは自分のことを思うからで、あたたかさは新しい君たち二人を見たからだ 72

孫の誕生を劇的に伝えた年賀状 ―― 志賀直哉

私も男だと思うといい、カケになりませんでした 79

スキー場から転びながら送るはずむ心 ―― 吉屋信子

すべり、ころび、走り、ころぶ、いったいどっちの時間が多いのか 84

いっしょにはしゃぎながらの出産祝い ―― 尾崎紅葉

半(はん)ダースまでは女の子で、あとの残りは皆男子というように願ってみては 89

感謝と喜びと愛想のあるお詫び ―― 夏目漱石

恐縮(きょうしゅく)の程度をなおさら強くすることになります 94

喪中欠(もちゅうけつ)礼状(れいじょう)にひそむわずかな非礼 ―― 郷原宏

喪(も)に服(ふく)すべきはあなたであって この私ではないはずなのに 100

第三章 知らせ 107

フレッシュな新生活を予感させる転居(てんきょ)通知 ―― 北原白秋

転居はとりもなおさず家庭的旅行で少なくとも新鮮な換気法(かんきほう)です。 108

謎の人物からの怪しい死亡通知 ―― 無言(むごん)道人(どうじん)

江(こう)漢(かん)先生(せいは)は老衰(ろうすい)し、……ついに大きな悟(さと)りを得て、病気で死んでしまったとさ。 114

柿の送付通知とともに送られたもの ―― 野口雨情

先生、どうぞこの田舎(いなか)くさい柿を御笑味(ごしょうみ)下(くだ)さいませ。 120

納得できる理由を示した法要(ほうよう)の欠席通知 ―― 窪田空穂

安静(あんせい)にして居る(い )様(よう)にと医師(いし)に警告(けいこく)されて、臥せ(ふ )って居ります(お )。 126

ていねいな説明が効果的な贈り物の添え状 ―― 幸田露伴

少し焦(こ)げすぎるぐらいに火でおあぶりくださり、これをおもみになり 131

謙虚に原稿の遅れを詫びた流行作家 ―― 吉川英治

明日一日何とか おくり合わせのほどを 伏(ふ)して願います 135

相手の心配に配慮した震災見舞いのお礼 ―― 寺田寅彦

家族は全員無事です…ご安心ください 141

あたたかな肉声が届いた不合格通知 ――出版社

残念ながら貴方(あなた)のご要望にそうことができませんでした 146

第四章 願い 153

借金に役立ったたくまざるユーモア ―― 石川(いしかわ)啄木(たくぼく)

誤算(ごさん)また誤算……まったく絶体絶命(ぜったいぜつめい)の状況となってしまいました。 154

学問所の教授を驚嘆させた博労(ばくろう)の督促状(とくそくじょう) ―― 亀

おれがゆくならただおかぬ かめがうでにはほねがある 160

文字が苦手な親が書いた息子への懇願 ―― 野口シカ

早く来てください。いつくると教えてください。 166

芥川賞選考委員へのあからさまな裏工作 ―― 太宰治

何卒(なにとぞ)私(わたし)に与えて(あた )下さい(くだ )……私を見殺(みごろ)しにしないでください 172

原爆を落とされた者から落とした人への願い ―― 衣川舜子(きよこ)

抗議(こうぎ)するなどという気持ちは全(まった)くありません 180

時代を超えた新しい価値の推薦 ―― 夏目漱(なつめそう)石(せき)

十分朝日新聞で紹介してあげる価値があると信じます。 185

作家が試みた三億円強奪犯に対する説得 ―― 大薮春彦

そんなことをしたら君の芸術(?)に汚点(おてん)を残す 191

風情と実用情報をまじえた紅葉狩りの誘い ―― 樋口一葉

紅葉(もみじ)が水面(みずも)にうつる趣(おもむき)なども、静かに観賞して楽しむことができると思います。 197

推薦に利用した絶妙な塩梅(あんばい)の合理性と情味 ―― 菊池寛

会計係には金のある人を用いるのが一番安全だ 203

明治の思想家が書いたホームコンサートへの招待状 ―― 福沢諭吉

面白くもなんともありませんが、編集局の皆様においで願いたく 208

第五章 心境・決意 213

療養地(りょうようち)から季節に託して送る哀しく美しい心境――梶井基次郎

山の便りお知らせいたします 桜は八重(やえ)がまだ咲き残っています 214

プロレスラーが遠征先から送った繊細な情感 ―― 力道山

又(また)お手紙差上(さしあげ)げます では元気で アロハ 219

何気ない問い合わせにひそむ悪夢――中原中也

藤村(とうそん)て、まあ嫌(いや)な奴(やつ)だ 224

青春をつかんだ若者から家族への決意表明 ―― 浮谷東次郎

僕は自分が信じないことに青春を費(つい)やす気はないんです。 229

はつらつとした抱負(ほうふ)を述べた斬新(ざんしん)な年賀状 ―― サトウハチロー

今年からウンと若くなるつもりです 234

マラソンランナーが遺(のこ)した美しい心の調(しら)べ ―― 円谷幸吉

父(ちち)上様母(うえさまはは)上様(うえさま)三日(みっか)とろろ美味(おい)しうございました 239

第六章 慰(なぐさ)め・励(はげ)まし 245

相手の位置におりて送った力強いエール ―― 芥川龍之介

生きて面白い世の中とも思わないが、死んで面白い世の中とも思わない。 246

親友の悲嘆を慰めるための正しい姿勢 ―― 宮沢賢治

おっかさんに別れたあなたを慰(なぐさ)めようとして書くのではありません。 251

火事で家をなくした門人の見舞い方 ―― 松尾芭蕉

災難(さいなん)をこのような名句(めいく)にかえたとなれば、それほど惜(お)しくはないと思います 255

敬語の使いどころに成功した小学生 ―― ミサオくん

はいけい、先生、しんどいんか 260

病床(びょうしょう)の枕辺(まくらべ)に寄りそうようなやさしい言葉 ―― 正岡子規

寒(さむ)かろう痒(かゆ)かろう人(ひと)にあいたかろう 265

弟子入り希望者へのていねいで率直な助言 ―― 島崎藤村

師(し)なければ勉強できないという説(せつ)にも私は反対(はんたい)です 272

時代を突き抜け効き目を失わないアドバイス ―― 斎藤茂吉

私も一度は二度は三度はこういう厭(いや)な道に陥(おちい)ってもがきました 277

お金の代わりに渡した処世(しょせい)の金言 ―― 夏目漱石

原稿料の支払いを出版社が延(の)ばすように、君も家賃(やちん)の支払いを延(の)ばしなさい。 285