東北大学附属図書館 令和5年度企画展

伊達

 [監修] 籠橋 俊光(東北大学大学院文学研究科 准教授)

伊達騒動とは

 伊達騒動とは、万治・寛文(1658~1673)年間に仙台藩で発生した御家騒動である。御家騒動とは江戸時代の大名等の武士の家で生じた権力闘争を指す。数多く発生した御家騒動のなかでも、伊達騒動は全国屈指の大藩を舞台としたことで人口に膾炙(*1)し、現代に至るまで文学・演劇等に広く取りあげられてきた。本展では仙台藩の歴史を語る上でも欠かせないこの事件の経緯を、附属図書館本館所蔵の貴重な古文書によってたどっていく。

[注]

*1:かいしゃ /  物事が多くの人びとに言いはやされて、広く知れわたること。[精選版 日本国語大辞典]

相関図

寛文事件古文書

 寛文事件古文書とは当館所蔵の古文書群の一つで、大正年間に購入されたもの。全体で52点からなり、もとは一関藩士 板垣家に伝来したものとされるが、事件の主要人物の一人である奉行(家老)奥山大学常辰(*2) に関する古文書がその大半を占めている。騒動関係者間の書状や奥山の書状草案・覚書類を数多く含み、事件前半の政局や奥山の認識をよく伝える貴重な古文書群である。

[注]

*2おくやまだいがくつねとき

登米伊達家文書

 登米伊達家文書とは、昭和初年に購入された当館所蔵の古文書で、仙台藩最上級の重臣である一門の一つ、登米伊達家に伝来したものである。全体で5,000点を超え、本館所蔵の古文書群全体でも最大規模を誇る。同家の家政や藩政、文化に関する豊富な内容を持ち、仙台藩の重臣文書を代表するものである。ここではそのなかから、「寛文経界訟論一件書類」として題された伊達騒動関係文書を中心に紹介する。

六ヶ条問題とは

 六ヶ条問題とは、①後見人の所領内に制札(*3)を立てること、②伝馬利用の申し合わせを作ること、③将軍に大鷹を献上すること、④将軍に初鳥・初魚を献上すること、⑤隣国の人間を送還すること、⑥移出入が禁止された品目の通行を許可することを指し、後見人はこの六つの問題に独立した大名として独自に対処しようとした。しかし、後見人の所領が仙台藩領から分与されたものであることから、常辰から問題視されることになった。

[注]

*3:せいさつ / 禁止の事項や布告などを書いて、路傍や辻に立てた掲示。[精選版 日本国語大辞典]

関係要図(仙台城下)

係要図(谷地境界)

年表

年表(伊達騒動).pdf

書籍で読む伊達騒動

 文学・演劇作品で人気の高い伊達騒動であるが、その真相を究明するために多くの研究が積み重ねられてきた。本展も、それらの成果に基づいたものである。そこでここでは、伊達騒動にちなむ本館蔵の書籍を、史実・創作の両面から紹介する。複雑にして魅力に富んだ事件の諸相を、展示とは別の切り口から読み解いていただきたい。

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