山本康仁 (2012)
東三河地域の土地利用の異なる2地点におけるカエル類の音声モニタリング. 豊橋市自然史博物館研究報告 22, 13-18
カエル類の雄は繁殖期になるとメイティングコールを盛んに行ないます。種ごとにメイティングコールは異なるため、種の判別は容易に行うことができます。近年、このメイティングコール(鳴き声)を指標としたモニタリングが行われており(例えば,North American Amphibian Monitoring Program (NAAMP),日本産両生類モニタリングプログラム(JAMP))、各地域における知見の蓄積が進んでいます。
私は、未だカエル類に関する基礎生態情報の少ない愛知県豊橋市において、2010年の4月~10月にかけて定点音声モニタリングを行ないました。灌漑期のみ湛水する水田と、通年で湛水がある湿地の2地点をモニタリングサイトとして選定しました。防水加工したICレコーダーを設置し、タイマー予約録音機能を使用して、毎日20時から10分間周囲の音声を録音しました。
その結果、ニホンアマガエル(旧:Hyla japonica、現:Dryophytes japonicus),シュレーゲルアオガエル(旧:Rhacophorus schlegelii、現:Zhangixalus schlegelii),トノサマガエル(旧:Rana nigromaculata、現:Pelophylax nigromaculatus),ツチガエル(旧:Rana rugosa、現:Glandirana rugosa),ヌマガエル(旧:Fejervarya limnocharis、現:Fejervarya kawamurai),ウシガエル(旧:Rana catesbeiana、現:Lithobates catesbeianus)の計6種類のカエル類の本地域での生息が確認されました。
また、水田と湿地では繁殖活動を行う種の組成や時期が異なっていることが示唆されました。
図1. 2地点の水管理と音声モニタリング結果.
・写真左:レコーダーと防水パックセット使用したICレコーダーはSANYO製のICR-PS501RMです。録音データはレコーダー内のmicro SDカードに保存されます。1か月から2か月に1回の頻度で電池を交換し、SDカードを回収しました。ジップロックの中にはレコーダの他に乾燥剤と防虫剤を同封しています。・写真右:設置した状況 調査地点の脇に杭を打ち込み,地上約50㎝の位置にレコーダーを含む野外設置用ケースを固定しました。社会人となる今後も、「日曜日の生態学者」的な志で、モニタリングをコツコツと続けていきたいものです。