大切にしていること

人をみるということ

実験的研究は,一見すると無機質にみえるかもしれません。論文にも障害のある人の困難さが詳細に出てくるわけではありません。障害のある人とない人の記憶成績を測り平均値を算出し比較するといったスタイルだからです。しかし,実験的研究は思いがないと難しい部分があります。それは実験的研究は先に仮説を立ててから検証する方法だからです(仮説駆動型)。この仮説を立てるときに各々の思いが必要です。私たちの研究室では,あの人のあの行動が気になる(関心がある)という実際に障害のある人と接した原体験(思い)から仮説を生成し実験に落とし込む方法を採用しています。どのような現象を明らかにしたいのか,何度も何度も議論を重ねて仮説を明確にしていきます。時には構想が振り出しに戻ることもあります。そんなときにはもう一度,障害のある人に会いにいきます。仮説は足で稼ぐ。だからこそオリジナリティが生まれる。先行研究で言われていることを理解することも大切です。ただ,文献ありきでは詰みます。詰んだときに研究のモチベーションがあがりません。文献を読むのは問題意識が芽生えてからだと思っています。いかに固有名詞で話ができるか,これが障害のある人を対象とする時に大切なことなのではないかと考えています。

Work together to help each other.

「あなたが好きなものは好きでいいし,私が好きなものはこれ。みんなそれぞれでいいよね。」

多様性という言葉が出てきてからこのような他人の価値観には入りこまないことがよしとされてきました。自分の好みが邪魔されない,とても大切なことだと思います。しかし,このような多様性は互いが互いを認め合っているようで実は「自分の価値観を守るために壁を作り,相手を理解しようとする姿勢を排除」しているのではないかとも思うのです。相手を理解しようと思うと自分の思いが通じなかったり,思うようにいかなかったり「めんどくさい」ことが多すぎます。わかります。ただ,言いづらいことが言えない世の中になってきていないでしょうか。これは最近の話ではなく,いつの時代でも言われてきたことだと思います。だからこそ「一緒に働き,助け合い」を大切にしたい。めんどくさいことも受け入れる姿勢を養いたい。社会で生きる,人と混ざるというのはめんどくさいことが多すぎる。でも,困っている人がいたら少し肩を貸す(貸してもらう)人でありたい。そんなめんどくささを受け入れることが大切なのではないかと思っています。