遠心力場における地盤に関する模型実験(仮)

書きかけです

最終更新 2012年7月14日

地盤に関する遠心模型実験(仮)

京都大学防災研究所 飛田哲男

1 はじめに

地盤工学における模型実験の方法を記した書籍は,数はそれほど多くはないものの出版されている(地盤工学会など).しかし,模型実験における基本的な相似則の導出や,近年その重要性が増している遠心模型実験に関しては,その知識が一部の専門家の間で共有されるにとどまっていて,地盤工学を専攻する大学生や,一般市民向けの解説書を見つけることは難しい.これは,地盤工学における模型実験の果たす役割が広く社会に知られていないことを意味する.毎年,全国の研究機関で模型実験に投資される国費の総額を考えれば,少なくとも地盤に関する模型実験とはこういうものであるという認識を持っていただき,その意義を認識してもらう必要がある.このことを通じて,地盤工学,地盤防災について広く知っていただくことが,安全・安心な社会を造る基になると思われる.したがって,研究者サイドから積極的に情報発信することは重要であり,大きな責任があると考える.

意外に思われるかもしれないが,市民生活と地盤工学とは密接に関わっている.地盤工学の知識は,将来,マンションにしろ一戸建てにしろ住宅を購入する際には,おおいに役に立つかもしれない.例えば,近年,大地震時に液状化で家が傾くという被害が頻発しているが(例えば,2003年十勝沖地震,2004年新潟県中越地震,2007年新潟県中越沖地震,2011年東北太平洋沖地震),地盤工学の知識があれば,液状化の可能性や液状化対策の有無などと,購入物件の価格をはかりにかけて,購入すべきかどうか判断できる.地震の発生確率は容易には判断できないが,地震発生時の液状化発生の有無はより高い精度で判定可能である.戸建て住宅の液状化の被害では,1件当たりの損害額は,港や道路などの社会基盤(インフラ)関連の被害とは比較にならないほど小さい.しかし,その補修費用は,基本的に個人で賄わねばならず,突然の大きな出費になる.ところが,こうした被害では,土地の造成会社(デベロッパー),住宅の建築会社(ハウスメーカー,工務店),造成の許可者(国や地方公共団体)などが存在し,どこまでが住民の責任なのか確定することが難しく,訴訟問題に発展する事例が増えている.

その他の事例では,宅造盛土上の住宅の不等沈下の問題がある.高度成長期以降,大都市近郊の丘陵地の山林を切り開き,この切り取った材料で周辺の谷を埋めて平坦な土地を造成する(谷埋め盛土).このように造成したした住宅地では,土地を購入する際,地盤を切り取った場所なのか谷を埋めた場所なのか分からなくなっている.地盤変状が深刻なのは,谷を埋めた場所とその周辺の土地(切り盛り境界)である.この場合にも,地盤を含む住宅の瑕疵担保責任をめぐる訴訟が増えているとのことである.瑕疵担保責任は買主が気づいた時から1年間以内に損害賠償請求,あるいは契約の目的が達せられない場合には,契約の解除を請求できると規定されており,購入10年後であっても,瑕疵を知った時から1年以内であれば権利を行使できる.このような訴訟問題を解決する場合にも,素因調査などで地盤工学が果たす役割は大きい.

傾斜地崩壊の問題もある.つづく

また,さらに深刻な事例は,海抜ゼロメートル地帯の浸水被害である.日本ではまだ大きな被害は発生していないが,2005年8月に発生したハリケーンカトリーナでは,ルイジアナ州ニューオーリンズでミシシッピー川の河口部の堤防50カ所が決壊し,市の8割が浸水,1,800名を超える方が亡くなった.当地は典型的なゼロメートル地帯であり,大きなタンカーが街の地盤面よりもはるか上方を航行している.ちなみに,著名な投資家のウォーレンバフェット氏は,このハリケーン被害の前に,将来このような被害が発生すれば,周辺に大きな住宅需要が見込まれるとして,材木会社の株を買っていたとのうわさもあった.それはともかく,東京や大阪湾岸のゼロメートル地帯の浸水被害は,多くの自治体の防災担当者や研究者が警鐘を鳴らしているが,土地の所有権の問題などがあり集団移転するという選択肢はとりようがない.このため堤防を強固に造る方向で対策が取られている.この堤防構築の技術は地盤工学に関するものである.地盤工学では,市民の命を守る安全な構造物を,より安価に建設するための方法を研究している.このように,普段は意識することはなくても,地盤工学(広い意味では土木工学)と市民生活とは密接に,しかも他の工学分野以上に,市民生活の深いところで関わっている.

話を模型実験に戻すと,それは地盤工学の発展に欠かすことのできないものであり,地盤の性質を理解するためにはどうしても避けて通ることはできないものであるといえる.

地盤工学には,

1.実物の挙動

2.数値解析(/室内要素試験)

3.模型実験(/室内要素試験)

の3本の柱があり,互いに影響を及ぼしつつ発展している.2.と3.の後ろにある(/室内要素試験)は,数値解析,模型実験の基礎となる重要なものである(言い回し?).

1.実物の挙動とは,たとえば地盤沈下,地すべり,あるいは液状化地盤等,現実に観察される地盤挙動である.特に大地震時には,津波による被害を除けば,被害の多くが地盤にかかわるものである.そのような被害の形態を詳細に調べ,弱点を洗い出すことは,新しい構造物を安価に安全に造りだすという地盤工学の目的を達成するために極めて重要である.このため,ひとたび大地震が発生すると地盤工学研究者は,被災現場に急行し,被災の状況を詳細に記録し,被災原因について徹底的に調べる.このようにして技術の進歩が成される.物は違うが,高圧タンクの取り扱いについても同様である.18世紀の産業革命以降,高圧タンクの爆発事故が頻発し,多くの技術者や一般市民が犠牲となった.しかし,そのたびに事故原因が徹底的に究明され,それを踏まえた技術開発がなされた結果,今日では高圧タンクに関する技術は安全とみなされるようになった.社会インフラに関する技術の発展には,このように犠牲を伴う事故と,その後の技術開発,改善が欠かせない.

2.の数値解析については,1960年代から始まるコンピュータ技術の進歩を待たねばならなかった.地盤工学においては,それ以前にも基礎方程式の解析解による安定解析やモード解析が行われており,設計にも供されてきたが,,,,に限界があった.近年,コンピュータに関する技術の爆発的な進歩により,以前は大型計算機を必要とした計算が,パソコンでできるようになってきた.このような進歩と合わせ,地盤工学における数値解析手法も急速に発展してきた.例えば,港湾関連の設計で用いられることの多いFLIPは,有効応力に基づいた構成則の定式化を有限要素法でコード化したものであり,液状化地盤における構造物の動的挙動をシミューレートすることができる.

(計算機,数値計算手法の歴史の記述は必要?)

3.模型実験については古くから行われている.論文に現れるもっとも古いものは,****年**らによるものである.

2 地盤に関する模型実験の目的

3 遠心力載荷装置

3-1 なぜ遠心場が必要なのか

土をよく見ると,いろいろな大きさの粒子が集まっていることがわかる.形も色も様々である.地盤工学に関わる人たちは,土を見たとき「砂」「粘土」「シルト」などと呼ぶ.理学系の地質専門の人たちに言わせると,このような分け方は非常におおざっぱである.彼らが土を見た時には「花崗岩由来の砂」,「風化した泥岩」,「第三紀の粘土」などと呼ぶ.このように同じ土でも呼び方が異なるのは,普段どのように土を分類しているかに依存している.例えば,欧米では「米」はどのような状態でも"rice"だが,日本では「もみ」「稲」「米」「ご飯」などと,状態によって呼び方変わる.また,日本語で「牛」は,「うし」あるいは「ぎゅうにく」だが,英語では"cow","calf","bull","ox","heifer","beef"などと呼ばれる.一般に,日常生活でよく使われるものほど多くの呼び方があるそうだ.話しを元に戻すと,土は構成材料は様々だが,結局のところ粒子からなる物質(粒状体)である.幼稚園や小学校で扱う粘土は一見チューインガムのようにも見えるが,よく観察すると綿毛構造があり粒径の非常に小さな鉱物が集まっていることがわかる.

粒子の集合体(粒子群)から成る構造物の強度は,その粒子群をその場にとどめておく(拘束する)ための圧力,すなわち拘束圧に依存することが知られている.例えば,スーパーで売っている袋入りのでんぷんを思い浮かべていただきたい.でんぷんを袋から出して使うときにはさらさらと粉末状である.しかし,袋に満杯の状態で入っているときには,袋を指で押すと,きゅっ,きゅっという小さな音とともに抵抗を感じる.これは,粒状体であるでんぷんが袋から拘束圧を受けているためである.乾燥した土粒子の挙動は,でんぷんとほぼ同じであると言ってよい.しかし,なぜ拘束圧を受けると粒状体は固くなるのだろうか?例えば,液体である水をペットボトルに入れ,その口から空気圧を加えてみる.水の入ったペットボトルに空気圧をかけるということは,水の表面に拘束圧を与えるということである.側面にはペットボトルの壁があり,この壁は空気圧ではほとんど伸び縮みしないとする.この時,水は先ほどのでんぷんのように固くなるだろうか.実際にやってみると,液体の状態を保っていれば,水は水のままである.(写真挿入)では,固体の代表として,鉄の場合はどうか?日本海溝の海底に1辺1mの立方体の鉄の塊があるのを想像してもよい.日本海溝の最深部は約8,000mなので,水の密度1t/m3 x 8,000m=8,000t/m2,1平米あたり8000トンもの拘束圧がかかっている.この時,何らかの方法で鉄の塊を固定して,一つの面に荷重をかけていく.この時鉄の塊を1mm縮めるのに必要な力は,地上で同じことをするのに必要な力と比べてどうだろうか.答えは,同じである.深さ8000mの海底では,水圧は鉄の塊全体に等方的(すべての面に対して同じように)に働いているので,鉄そのものの強度は拘束圧の影響を受けない.では,気体はどうか.この場合も答えは同じ,拘束圧の影響は受けない.しかし,風船を膨らますと,次第にぱんぱんになってくるから気体は拘束圧の影響を受けるのではないかと思われるかもしれない.これは,中の空気によって引き伸ばされた風船のゴムの弾性が変化することによって風船の表面が固くなっているに過ぎない.したがって,風船内の空気の強度は,外の空気と同じである.

次に,同様に乾燥した砂をビニール袋に入れて8000mの深海に持って行ったとしよう.この時,地上ではサラサラの乾燥した砂が,8000mの深海では,大きな水圧(拘束圧)を受けてかちんかちんになっていることは想像できるだろう.すなわち,粒状体の強度は「拘束圧依存性」を示す.このため,土を用いた用いた実験を行い,実物の挙動を正確に再現しようとすると,拘束圧を実物に合わせてやる必要が出てくる.つづく

3-2 遠心模型実験の歴史

3-3 世界の遠心力載荷装置

4 相似則

地盤工学で使われる相似則の要諦は,土の応力-ひずみ関係が満足されるものであるという制約が課されることである.そんなことは当たり前だと思われるかもしれないが,土の場合,実際にその制約を満足する状況を作ることは難しい.ほとんど不可能といっても良いだろう.なぜなら,粒状体である土には上で述べた「拘束圧依存性」があるからである.拘束圧が異なれば応力-ひずみ関係が変わるので,模型実験を行う際には,原則として拘束圧を実物に等しくしなければならない.これをするには実物と同じスケールで実験を行えばよいのだが,そんなことは不可能である.ではどうするか,ということで考えられたのが次に述べる相似則である.

1.幾何学的相似

2.物理的相似

4-1 ローシャの仮定

ここでは,土を用いた模型実験に対する相似則の開発を行ったRocha1)の研究を,柴田・太田2)を参照して簡単に紹介する.一例として図4-1に示す地盤上のフーチングを考える.

図4-1 荷重Qpが作用する実物のフーチング(左)と荷重Qmが作用する模型のフーチング(縮尺1/λ)(右)

  実物を用いて実験するのはコストや時間がかかるので現実的ではない.そこで,幾何学的な縮尺(要は長さの縮尺が)1/λ(ラムダぶんのいち)の模型の挙動から,実物の挙動を推定することにする.ここでいう実物の挙動とは,具体的には,実物のフーチングに荷重Qpを与えた時の,実物のフーチングの沈下量δpである.この時,考えるべきことは,縮尺1/λのフーチング模型に対し,

1)実物のフーチングに荷重Qpが作用するとき,どれだけの荷重Qmを模型に与えたらよいか

2)模型の沈下量δmから,いかにしてδpを求めるか

の2点である.ここで,添え字のpは実物(Prototype)をmは模型(Model)を表す.これらの点に答えるのがRochaが研究した方法により導かれる相似側である.次にRochaの方法に則ってQpとQm,およびδpとδmとの関係(すなわち,力と変位に関する相似則)を導くが,最終的に両者の関係はλを介したものであることがわかる.

Rochaの仮定

模型地盤と実地盤の間の応力σとひずみεに,次のような比例関係が成り立つと仮定する.これがここでいうRochaの仮定である.

       (4.1)

        (4.2)

式(4.1)と式(4.2)の意味は,図4-2の応力-ひずみ関係を見ればわかるように,実地盤の応力-ひずみ関係に対し,模型の応力-ひずみ関係は,応力を1/ζ,ひずみを1/ξに縮小したものになっている.

図4-2 Rochaの仮定

ここで,実物と模型の面積比は,縮尺λを用いて,

(面積)m=(1/λ2)(面積)p    (4.3)

のように書けるので,式(4.1)の応力と式(4.2)のひずみを,以下のように力Pと変位δに変換することができる.

       (4.4)

        (4.5)

  つづく

1) Rocha, M., The possibility of solving soil mechanics problems by the use of models, Proc. 4th I.C.S.M.F.E., Vol. 1, pp. 183-188.

2) 柴田徹,太田秀樹,1980,土質模型実験における相似則,土と基礎,Vol. 28, No. 5,pp. 9-14.

4-2 物理現象の観察から得られる相似則

圧密試験

(図面準備)

図*に示す圧密容器を用いて粘土の標準圧密試験を行う.この時,圧密によって粘土の中に存在していた間隙水が外に出てくる.その間隙水の排水量は,以下のとおりである.

    (1)

(文字の定義)

また,このときの体積変化は以下のように書ける.

    (2)

(文字の定義)

ここで,式(1)と式(2)を用いて,以下のように無次元量πを定義する.


これを整理して,

        (3)

を得る.ここで,面積A、体積V、距離zとの間には、長さの次元lについて、次のような関係があることを用いている。

    

また、圧密係数を


とおいた.

次に、下付添え字pとmを,それぞれ,実物(prototype),模型(model)を意味するものとすれば,無次元量πは,実物,模型のいずれに対しても成り立たなければならない(なぜ?)から,


と書くことができる.先に求めたように, 無次元量πは,載荷(圧密)による体積収縮量とそれに伴う排水量の比である.単純に考えれば,体積が収縮した分だけ排水されるので,直感的にはπは1だと思うかもしれない.(説明不足)

つづく


例えば,今2㎏の粘土があったとしよう.つづく


4-3 支配方程式を利用した相似則の導出

5 模型実験の手順

6 事例紹介

メモ

数式の出し方

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