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AlgalSex

AlgalSex は「藻類の性」という意味のiPhone、iPod touch用の藻類学アプリです。藻類の有性生殖を観察することができます。

藻類の有性生殖

生物は有性生殖を行なう事で新しい遺伝子の組み合わせを生み出します。生物界に広く共通した重要な現象で、生物が多様性を獲得するうえでの原動力であると考えられています。もちろん藻類も有性生殖を行ないますが、その観察はなかなか難しいのです。なぜなら、藻類の有性生殖はダイナミックに形を変えながら行なわれるうえに、終了まで24時間以上かかることもあるからです。何日もの間、藻体の連続撮影を行なうため、専門の機材と技術が必要となります。「AlgalSex」は「藻類の性」という意味のiOSアプリです。藻類の有性生殖をコマ撮り撮影し、それを繋げたタイムラプスムービーが含まれています。このアプリケーションをインストールすれば何時でも何処でも藻類の有性生殖が観察できるのです。

インストール方法

インストール方法は簡単です。iPhone、iPod touchのApp Store からAlgalSexと検索し(藻類やミカヅキモで検索してもOK!)、「インストール」アイコンをタップするだけ。またはこのURLから専用ページに行けます。( http://itunes.apple.com/jp/app/algalsex/id339965821?mt=8 ) 無料アプリなので気軽に楽しめます。

内容紹介 ミカヅキモと呼ばれる陸上植物に最も近縁な単細胞生物の有性生殖が内容の1つです。ミカヅキモは世界中の湖や湿地、水田などの止水淡水域に生育している身近な藻類です。しかし、ミカヅキモが含まれるホシミドロ目と陸上植物の共通祖先において、植物における基本的な有性生殖システムが獲得された可能性があり、有性生殖の進化を解析する上で重要な生物でもあるのです。AlgalSexでは次の接合が観察できます。

ヘテロタリズム ー雌雄の接合ー ミカヅキモには雌雄にあたる、plus、minusと呼ばれる性を持つ種類が知られています。通常はそれぞれが無性分裂をくり返し増殖しますが、ストレス条件下になると、plusとminus細胞がお互いを認識し合い有性生殖を行い接合子を作ります。この後、休眠してストレスに耐え、環境が元に戻ると子孫が発芽し増殖を始めます。これがヘテロタリズムと呼ばれる接合様式を持つ種類の生活環です。

ホモタリズム ー「自分」との接合ー ミカヅキモにはもう1つ、ホモタリズムと呼ばれる接合様式を持つ種類が知られています。このホモタリズムは多くの部分が謎に包まれていましたが、近年のタイムラプス解析により遂にその詳細が明らかになりました。

ホモタリック株は不思議な有性生殖を行なっていました。なんと1つの細胞が分裂し、分裂後の1細胞由来の姉妹細胞同士が接合子を作るのです(つまり自分が分裂して分裂後の自分同士で接合子を作ったのです!)。どうやって元は自分だった細胞を認識するのでしょう....?そもそもこの接合子から発芽してくるのは子供ではなく「自分」です。一体なぜ、どのようにしてこのような「自殖」が進化してきたのでしょうか...?

ヘテロとホモの長所と短所 このホモタリズムの接合(姉妹接合と呼んでいます)ですが、基本的に「自分」しか発芽せず、長期的なスパンでみれば遺伝子の多様性という点で不利です。しかし短期的にみれば有利な自然条件が存在します。例えば水田です。実際ミカヅキモなどのホモタリック株は水田でよく採集されます。水田は毎年水が枯れる藻類にとっては過酷な環境です。そのため接合子になり乾燥に耐えなくてはいけません。このような環境では、接合子形成に相手を探す必要があるヘテロタリック株よりも、速やかに自ら接合子を形成するホモタリック株の方が適応的なのでしょう。

ミカヅキモのホモタリック株は有性生殖の利点を諦めることで、過酷な環境を生き抜いているのかもしれません。「AlgalSex」があればこの不思議な現象を観察することが出来ます。皆さんも「AlgalSex」をダウンロードしてミカヅキモの謎に思いを馳せてはいかがでしょうか?

*この文章は原生動物園 Vol.2: 21-22. https://sites.google.com/site/protozoolgarden/vol2 に掲載された 「iPhoneアプリ「AlgalSex」で藻類の有性生殖を観察!」 を一部改変したものです。

*資料; AlgalSexの音声付きCM