ミカヅキモ採集

ここではミカヅキモの採集についてまとめた、以下の論文を紹介します。

Yuki Tsuchikane, Takashi Hamaji, Katsumi Ota, Syou Kato.

"Establishment of a clonal culture of unicellular conjugating algae"

Journal of Visualized Experiments. (137),

e57761, doi:10.3791/57761 (2018).

雑誌について;Journal of Visualized Experiments(JoVE)は実験方法を文章と動画で学ぶことのできる学術誌です。

導入;近年、接合藻類と呼ばれる生物に注目が集まっています。それは陸上植物に最も近縁で、植物の進化を考える上で重要であるからです。今回の論文では、接合藻類の中でも「ミカヅキモ」に注目します。ミカヅキモの研究をする為には、生きた細胞をフィールドから実験室に持ち込まなくてはいけません。その一連の作業をムービーで鑑賞することができます。気軽に藻類学の一端を垣間見ることがでますし、教材としても利用できると考えています。

内容;フィールドから水サンプルを採集し、そこに含まれるミカヅキモを一細胞だけ単離・洗浄し、培養することで、系統保存株を確立する方法を次のようにまとめています。

1. フィールドからの水サンプルの採集;ミカヅキモは流れのない止水淡水域に生息しています。ミカヅキモを含む水サンプルを採集します。

1.1. 湖沼からの採集方法;プランクトンネットという器具を用いて濃縮した水サンプルを採集します。

1.2.水田や湿地からの採集方法;水面に生育するミカヅキモをピペットを用いて採集します。

2.藻類の確認;ルーペ、あるいは携帯顕微鏡を用いて確認します。

3.単離用ガラスピペットの作成方法;ガラス製のパスツールピペットをアルコールランプで熱し。溶け出した瞬間に伸ばします。これにより極細の毛細管を作成します。

4.単離用ガラスピペットを用いた細胞の単離;水サンプルに含まれるミカヅキモを、極細のガラスピペットを用いて、1細胞だけ単離し、綺麗な培地に移します。これを繰り返して洗浄します。1-2週間培養すると、目に見えるほど増殖します。

見所;微細藻類を単離・洗浄する方法は、ピペット洗浄法と呼ばれ、昔から知られる手法です。極細の毛細管を作り、それを使って微細な藻類を1細胞だけ取り出します。この極細の毛細管の作成方法は、文章だけでは分かりにくい部分もあるのですが、ムービーを用いて詳細に解説しています (3:46 から6:29まで)。

ムービーについて;通常JoVEの撮影クルーがムービーを作成してくれるのですが、本手法はフィールドワークなどの様々な場所で撮影する必要もあり、全て我々で作成しました。「AUTHOR PRODUCED」とあるのはその為です。(クレジットは以下 監督・編集・撮影;土金勇樹. ナレーション;濱地貴志. 脚本;土金勇樹,濱地貴志,太田克己,加藤将.)

鑑賞方法;以下のムービーをクリックするか、論文題名のリンク先で観ることが出来ます。