ミカヅキモとは

      • 名前: ミカヅキモという名前は細胞の形が三日月形であることからついています。しかし、属全体でいえば、必ずしも三日月形ではなく、属名であるClosterium は紡錘という意味のギリシャ語のKlosterが語源です。

写真に写っている、最も大きな三日月形のミカヅキモはClosterium ehrenbergii (和名:オオミカヅキモ) で、植物学者のEhrenbergから、紡錘状のミカヅキモはClosterium acerosum (和名:ナガミカヅキモ) で、尖った、針の様な、という意味の名前です。

    • 分類学的位置: ミカヅキモの仲間(ミカヅキモ属Closterium)は、陸上植物に最も近縁な藻類であるシャジクモ藻綱に属します(下の図)。このためミカヅキモは植物の進化を考える上で非常に重要な藻類の一つです。
    • 形態:ミカヅキモはその名の通り美しい三日月型をした緑色の単細胞藻類です。前述の通り、中には紡錘状をしたものもあります。サイズは種によって大きく異なりますが、私の研究対象であるヒメミカヅキモ(C. psl. complex)は上の図の中で最も小さなミカヅキモで100μmほどです。肉眼ではほとんど確認できません。
    • 分布:ミカヅキモは世界中の何処にでも生育する藻類です。日本ではもちろんのこと、ネパール、ニュージーランド、フランスなど世界中で存在が報告されています。
    • 種数:ミカヅキモには様々な形態をした仲間が存在し、その形態種は1000種類以上も報告されていますが、シノニム(一種類のミカヅキモについて、複数の学名がある場合)とされたものも多く、実際には500種程度だといわれています(山岸高旺「淡水藻類」2007)。また、一つの形態種の中に生殖隔離が観察される交配群(生物学的種)が存在しています。
    • 生態:ミカヅキモは池、沼、水田などの淡水性の止水域に観察されます。

ミカヅキモは通常、一つの細胞が二つに分裂することで栄養増殖を行います。ミカヅキモには雄と雌にあたる2つの性が存在し、それぞれ+型、−型と呼ばれています。栄養源が欠乏するなど、環境が悪化すると+型の細胞と−型の細胞が融合する有性生殖を行い、最終的に接合子と呼ばれる種子の様な状態になります。環境が安定するとその接合子からミカヅキモが発芽します。

    • 有性生殖:ミカヅキモの有性生殖は実験室内で簡単に誘起する事が可能です。映像はこちら