■掲載曲目の選定基準
以下のような曲目を掲載した。
(1)現在、常磐津節の実演家(常磐津節保存会会員、常磐津協会正会員、関西常磐津協会正会員)が常磐津節として伝承していることを確認できた曲。
(2)これまでの調査では、現在の伝承実態を確認できていないが、近現代の伝承事例(公演や放送等の記録)、正本・稽古本の再版状況、文献記事、実演家の証言等により、現在も実演家が伝承している可能性、あるいは実演家が録音や譜を所有している可能性があると推定される曲。
現在では明らかに伝承が廃れていると推定される曲(廃曲)は原則として掲載しない。ただし、廃曲であっても、伝承の衰退や廃絶状況についての見解や証言等の情報が得られた曲目は、それらの情報とともに掲載する場合がある。
■掲載曲目の分類・配列
成立年が明確なものと、明確でないものに分類し、前者は、時代ごとに複数のグループに分けて年月順に配列した。後者は、名題の五十音順に配列した。
■掲載項目とその内容
(1)別掲一覧表の冒頭に示した各項目について、調査に基づく情報を、一覧表形式で適宜掲載した。
(2)文中の括弧は、以下の原則で使用した。
補注:( )、引用・タイトル:「 」、引用中の補注:[ ]、出典:〔 〕、書名:『 』。
(3)文中に参考文献の名称や引用文を掲出する際は、以下のような原則で略記した。
*事典・詞章集・年表等の場合は、書名またはその一部を略記する。例:〔邦楽舞踊辞典〕。
*論文等の場合は、編著者の姓・出版年・ページを記す。例:〔町田 1921:131〕。
*正確な書名および書誌情報は、「主な参考文献」にまとめて掲載する。
(4)「正本」項目には、流派関係者の監修により公刊された詞章本(正本・稽古本)の調査状況を記号で示した。劇場初演時の薄物正本の出版が確認できる場合は「絵」、その他の正本・稽古本が確認できる場合は版元の頭文字を示し、伊賀屋は「伊」(1860年まで)、坂川屋は「坂」(1861年より)、名古屋玉沢屋は「玉」、名古屋菱屋は「菱」、定本常磐津全集(1940-1943年)は「定」で示した。原曲が常磐津以外の場合、富本の正本・稽古本は「富」、清元のそれは「清」で示した。
(5)「解説・資料」項目は、曲の成立事情、伝承の盛衰や経過、内容、影響等について、概説書や通説ではあまり検討されていない事柄、留意すべき重要事項、新しい見解を中心に、適宜、引用や考察を記した。
(6)「文献・詞章集」項目は、とくにその存在に留意しておきたいものに限って記した。
(7)「近年の上演事例・レコード類」項目は、以下のように記した。
*上演事例については、演奏会・歌舞伎公演・舞踊公演・放送等の資料や記録に基づいて、主要な情報を掲載した。上演頻度が高くないとみられる曲目については、なるべく詳細に記した。
*音源資料については、市販された常磐津節のLPレコード・CD等に関して情報を簡潔に示した。LPレコードの音源がCD化された場合は、CDのみを記すことを原則とした。
*事例を確認できない曲目には「-」を記した。廃曲の可能性があるが、調査漏れの場合もあるので、上演事例をご存知の場合は、ご教示をお願いしたい。
*事例を記述しないが、上演頻度が高いとみられる曲目には「○」を、極めて高いとみられる曲目には「◎」を記した。
(8)なお、振付に関しては、町田佳聲・郡司正勝ほか校閲『歌舞伎舞踊現存曲外題一覧』(1967年、NHK総合放送文化研究所放送文化財ライブラリー)に舞踊各流派の調査に基づく一定の情報があり、主にそれを参照して情報を整理しているが、公開準備中である。