東北植物研究投稿の手引き
東北植物研究会編集委員会
(2012年1月28日策定,2013年4月18日改訂)
はじめに
この手引きは,会員による論文執筆および編集委員会による編集作業をより早く容易に進めるため,および掲載する論文の体裁や質をよりよいものにするために定めたものである。
『東北植物研究』の裏表紙内側に毎号掲載する投稿規定を良く読んでから,この手引き(改訂時または一定期間ごとにニュースレターに掲載)に従って原稿を作成すること。また,最新号の『東北植物研究』も参照すること。投稿規定や手引きに従わない原稿は受け付けない場合や,論文作成支援室の利用をすすめる場合がある。
投稿規定とこの手引きについての疑問は編集委員長または編集委員に尋ねること。
投稿資格
第一著者以外でも共同著者に1人でも会員が含まれていれば,投稿ができる。また,投稿時に非会員でも,受理時までに会員になることを確約すれば,投稿ができることとする。
受け付ける原稿の種類と内容
広く出版された他の雑誌や文献に未発表の原稿で,かつ同時期に他の雑誌等に投稿されていないもののみ投稿できる。広く出版された原稿には,各県の研究会誌や植物誌,各種調査報告書を含むが,県立図書館等に納められなかった自治体のアセスメントなどの報告書,謄写版の出版物,個人で製本を頼んで知人に配布した書籍などは含まない。判断に迷う場合は,編集委員会に相談のこと。
受け付ける原稿の種類は,論文(総説,原著,短報),解説記事,資料(植物の図,写真およびその解説を含む)などとする。一般的な書評や紀行文,研究会行事(おしば標本展など)の報告はニュースレターに掲載するが,新知見を含んだり,引用文献を伴う解説的なものなどは受け付けることとする。
各県の研究会や全国的な学会の研究の推進の妨げとならないように,あるいはこれらの発行する雑誌と共存共栄するように,原稿は基本的に北本州または東北地方全体ないし複数県の植物に関するものに限ることにする。特定の県の植物に関する原稿の場合でも,次に示すように,他の県の研究者にとって有用な情報を含み,研究を促すような内容である場合は,積極的に受け付ける。
a. 他県の研究を進めるような情報(例:分類が混乱している植物の報告,他県でも出てきそうな新たな帰化植物)。この場合,類似種との区別を図示したり,分類の混乱について解説をするなど,他県での研究を進める上で有用な記述があることが望ましい。
b. 他県にとっても必要な情報(例:ある県の北限植物・南限植物,ある県の植物相や植生に関する総説)
特定の県の植物に関する原稿の場合でも,県の研究会に全く所属していない人の原稿は,(編集委員会としては,所属した上でその雑誌に投稿することを希望していますが)受け付けることとする。また,他県に調査に行った際に発見した植物など,自分の居住する県以外の植物に関する原稿の場合も受け付けることとする。これらの場合は,別刷りを広く配布する等,当該県の研究者に周知されることが望まれる。
編集委員長または編集委員会の判断により,各県の研究会誌や全国的な学会誌への投稿を勧める場合がある。そのような場合(特に後者の場合),編集委員会や論文作成相談窓口が,他誌への掲載まで全面的に支援を行う。
原稿の体裁と構成
原稿はA4判縦置き用紙に横書きとし,上下左右の余白は3 cm程度,1頁あたり20〜25行,文字サイズ12ポイント程度とする。手書き原稿の場合は,A4判縦長の横書きの400字詰め原稿用紙を用いる。ページ番号をつけること。行番号は可能であればつけること(Wordの場合,「ファイル」→「ページ設定」で(Mac版では「書式」→「文書のレイアウト」),「その他」パネルの「行番号」ボタンをクリックする)。
総説および原著論文の場合,摘要を含めるのを推奨するが,つけなくても構わない。英文の表題および著者名,摘要,図表の説明は,著者の判断によりつけることが可能とする。英文の摘要や図表の説明を含める場合,しかるべき研究者や業者の校閲を受けた後に投稿すること。
和文の文体は「だ,である」を基本とする。句読点は全角の「,(コンマ)」と「.(ピリオド)」を使用する。和文は植物和名も含めてすべて全角を使用する。ただし,学名,数字と単位表記(例:mm,g)などは半角とする。慣用句・成句(例:二次林)以外は,アラビア数字を使用する。数字と単位表記の間に半角スペースを入れること(例:12 mm)。引用文献欄は,英語の文献がある場合と統一するため,半角の「,(コンマ)」,「.(ピリオド)」,「:(セミコロン)」「( )(カッコ)」を使用する。
学名はイタリック(斜体)文字を使用する。手書き原稿の場合は下線を施す。
標本引用
分類学的研究や産地報告を含む場合は,なるべく標本を引用すること。標本引用は採集者とその標本番号,標本室略号(個人の場合は「個人蔵」)が基本で,必要があれば採集日や標本室シート番号を加えること。
例:「鈴木貞次郎 3742, TUS」「S. Suzuki 3742, Aug. 12, 1954, TUS167206」
後の混乱を避けるため,個人所蔵で引用した標本は,公的な標本室に寄贈する(理想的には寄贈した上で引用する)ことを強く推奨する。要望があれば,編集委員会が斡旋を行う。
図表
図表は以下の要領で準備すること。
a. 図(写真も含む)は,基本的に1印刷頁に収まる大きさとする。写真1,写真2などの表記は用いず,すべての図,写真について本文に現れる順に,図1,図2,・・・と表記する。
b. 1つの図はそれぞれA4サイズ1ページで作成すること。すなわち,紙原稿の場合は(図が小さくても)A4の紙1枚に1つの図とし,電子原稿の場合は図ごとに改ページするか,別のファイルとする。
c. 図の余白に著者名,図の番号,もしあれば著者の指示(希望の縮尺,カラーなど)を記すこと。紙原稿で写真の図の場合,写真はしっかりしたA4の白地の台紙に貼り付け,上下の指示を記すこと。
d. 図の説明は,まとめて本文の最後(一般的には引用文献や付記の後)につけること。表の説明は表の上部につける。
e. 表の注釈は,表中の該当部の右肩にアステリスク+上付文字の数字で指示し(例:*1),表の下にアステリスク+数字を付して説明すること。
f. 図表の説明は本文を参照しなくてもわかるようにすること。
(好ましくない例)オオカワヂシャの分布。
(好ましい例)福島県福島市街地周辺における2003年時点のオオカワヂシャの分布。
g. 図の説明中には凡例の記号(例:「…」,「●」,「☆」)は含めず,言葉(例:破線,黒丸,星印)を含めるか,図中に凡例の記号を組み込むこと。
h. 図表は刷り上がりで幅17 cm,長さ23 cmが最大である。原図(写真を含む)のサイズは刷り上がりと同一サイズかそれよりも大きくすること。ただし,A4サイズを超える原図はなるべく避けること。
i. カラーの図(写真も含む)は歓迎するが,予算の都合で当面著者の負担とする。
j. 図表の挿入位置を,原稿の右余白に指示すること。
引用と引用文献
引用は,図書館に保管されている,あるいは書店で販売されているなど,なるべく広く参照が可能な本や雑誌に限ること。新聞記事,卒業論文,研究会等での配付資料,図書館等に寄贈していない自費出版の著書,インターネット上の情報などはなるべく引用しないこと。
本文や図表中の文献の引用は「大橋(1987),Takahashi et al.(1994),大橋(1996),宮城県環境生活部自然保護課(2001),五十嵐他(2010, 2011)」のようにすること。複数の論文を引用する場合は出版年順に並べること。カッコは全角で,「et al.」はイタリックとしない。論文が受理されているが出版されていない場合は「上野 印刷中」「Ueno in press」とすること。受理される以前の論文の場合は「上野雄規 未発表」「Yuki Ueno unpublished」とし,私信の形で引用する場合は「上野雄規 私信」とし,氏名を表記すること。印刷中,未発表,私信の場合は,必ず許可を得てから引用すること。
引用文献は,参考にしただけの場合は取り上げず,本文中で引用したもの(印刷中も含む)のみを著者の五十音順またはABC順に記す。特に英語の論文がないときは,五十音順を推奨する。著者氏名などの後のピリオド(.)は半角でそのあとに半角スペースを付すこと。雑誌名は省略しない。巻volumeを示す数字は太字とし,号numberを示す数字は半角カッコの中に入れ,半角コロン(:)と半角スペースの後に頁を記すこと。
<論文の場合>著者氏名. 発行年. 論文表題. 雑誌名 巻(号): ページ. 英文の場合,論文表題の最初の単語および固有名詞の最初の文字のみ大文字
大橋広好. 1987. 東北地方の植物区系について. 植物研究雑誌62: 23-30.
五十嵐彰・佐藤光雄・須賀紀一・鈴木浩一・野中俊夫・樋口利雄・渡部秀哉. 2010. 霊山の植物6 霊山のフロラ(維管束植物)について その2 種子植物. フロラ福島 (27): 59-81.
Takahashi, K., T. Watano and T. Shimidzu. 1994. Allozyme evidence for intersectional and intergeneric hybridization in the genus Sasa and its related genera (Poaceae: Bambusoideae). Journal of Phytogeography & Taxonomy 42: 49-60.
<著書の場合>著者氏名(編集者の場合は後ろに「(編)」). 発行年. 書籍名. 発行者名(「(財)」「(株)」「株式会社」「Company」「Co. Ltd.」は含めない), 発行者住所市町村名(東京都区部の場合は「東京」). 英文の場合,書籍名の最初の単語および名詞と形容詞の最初の文字は大文字。総ページ数は不要。
宮城県環境生活部自然保護課(編). 2001. 宮城県の希少な野生動植物 宮城県レッドデータブック. 宮城県環境生活部自然保護課, 仙台.
Kadota, Y. 1987. A Revision of Aconitum Subgenus Aconitum (Ranunculaceae) of East Asia. Sanwa Shoyaku, Utsunomiya.
<分担執筆の場合>著者氏名. 発行年. 分担執筆部分表題. In 編集者氏名(編)(英文の場合は「ed.」,編集者が複数の場合「eds.」): 書籍名, p.(複数ページの場合は「pp.」)分担執筆ページ. 発行者名, 発行者住所市町村名.
籾山泰一. 1982. クワ科. In 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・亘理俊次・冨成忠夫(編): 日本の野生植物 草本II 離弁花類, pp. 1-2. 平凡社, 東京.
Yonekura, K. 2006. Polygonaceae. In Iwatsuki, K., D. E. Boufford and H. Ohba. (eds.): Flora of Japan, IIa, pp. 122-174. Kodansha, Tokyo.
インターネットからの引用
本や雑誌として発行されたものを引用することを優先し,なるべくインターネットからは引用しないこと。インターネットからの引用は,本や雑誌として発行されたものがなく,かつ重要でそこにしかない情報が含まれており,かつ正確であることが担保されているときに限ること。
インターネットから引用する際は,「気象庁平成23年報道発表資料(
http://www.jma.go.jp/jma/press/1104/05a/20110405.html,2013年1月23日参照)」など,本文中にページのタイトルまたは作成者名にURLおよび参照日を組み合わせたものを明記することによって行い,引用文献欄には記さない。
ただし,執筆者や執筆年が明記されているなど,文献としての体裁が整っている場合は引用文献と同様に扱ってもよい。その場合,引用文献欄には,以下のように引用する。
<ホームページの場合>発行者名, 発行者住所市町村名の代わりにURLと参照日を付け加える
環境省. 2012. 第4次レッドリスト(2012)植物I(維管束植物). http://www.biodic.go.jp/rdb/rl2012/redList2012_ikansoku.csv(2013年1月23日参照)
<ダウンロードした書類の場合>発行者名, 発行者住所市町村名の代わりにURLと参照日を付け加える
気象庁. 2011. 現地調査による津波観測点付近の津波の高さについて. http://www.jma.go.jp/jma/press/1104/05a/20110405.html(2013年1月23日参照)
投稿の仕方
原稿を送付する際は,原稿とは別紙あるいは別のファイルの送り状を添えること。送り状には,次の事柄を明記する。
a. 著者名
b. 原稿に関する連絡先:責任著者氏名,住所,電話番号,もしあれば所属先とe-mailアドレス
c. 原稿の種別(総説,原著論文,短報,解説記事,資料のいずれか)
d. 表題
e. 原稿の枚数:本文,図の説明文,図,表のそれぞれについて枚数を記入
f. 見出し表題(ランニングタイトル):著者(姓のみ)と「:」を合わせて25字以内
g. その他:カラーにする図の指示など
投稿するのは手書き原稿(パソコン以外のワープロ原稿なども含む)または電子媒体の原稿のいずれでも良い(両方送る必要はない)。投稿に際しては,手書き原稿の場合は原稿(図表,写真を含む)の正本1部とともに,複本(コピー)2部を郵送すること。電子媒体の原稿の場合は,原則として本文はワード形式(*.docまたは*.docx),表はエクセル形式(*.xlsまたは*.xlsx)またはワード形式,図はパワーポイント形式(*.pptまたは*.pptx),JPEG形式(*.jpg),PDF形式(*.pdf)またはワード形式で作成すること。なお,図の説明は図のファイルではなく,本文のファイルに入れること。電子媒体の原稿は電子メールの添付書類として送るか,CD-R等を郵送すること。写真が含まれる図の場合,入稿時に,図の作成に用いたJPEG形式の画像や,印画紙の写真を提出すること。
投稿後の手続き
原稿を受け付けた場合,編集委員会は著者に電子メールあるいは郵便で受け付けた旨の連絡をする。連絡がないときは,原稿送付先に確認をすること。
審査員による審査の後に受理の可否(掲載の可否)を著者に通知する。受理されなかった場合,紙原稿は著者に返却する。論文の不受理に納得できない場合は,著者は不受理決定の通知発送日より1ヶ月以内に文書による反論を付して再査読を1度だけ求めることができる。
審査員が論文内容や図表,字句の修正を要求した場合は,審査員のコメントを付して著者に原稿を返却する。著者は審査員のコメントを参照して,改訂稿を作成し,編集委員や審査員宛の改訂内容(あるいはコメントへの反論)を記した文書(別に例示)を付して,原稿送付先に1ヶ月以内に郵送すること。修正を要求しなかった部分については,投稿後に書き換えを行うことは,原則として認めない。やむを得ず書き換えを行う場合は,改訂内容を記した文書に明記すること。
受理後の手続き
掲載にあたって,著者は著作権を移譲する旨の書類を東北植物研究会に提出すること。初校の際に書類を送付するので,その際手続きをすること。著作権は本会に帰属することになるが,著者が自分の論文の一部を転載する場合は,本会に許諾を得る必要はないこととする。論文の大部分または全文の転載の場合は許諾が必要である。
原稿の掲載順序は編集委員会が決定する。著者による図表の位置,縮尺の指定および活字の指定は同委員会によって変更されることがある。
校正は原則として,初校には著者が行い,再校以降には編集委員会が行う。校正時には,なるべくページを越えて変更が生じないようにすること。特にページ数が増減するような改訂は可能な限り避けること。
著者は原則的に別刷り50部とPDFファイルを無料で受け取ることができる。50部を超える部数については有料になる。カラーの図(写真も含む)は,当面著者の負担とする。初稿とともに申込用紙・料金表を送付するので,その際手続きをすること。
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付記1. 審査員のコメントの例
この論文は北東北3県のナツトウダイに3型が区別できることを明らかにし,それぞれの特徴や分布を示したもので,本誌に掲載するに値すると考えられる。しかし,以下のような問題点がある。
1. 『岩手県植物誌』はイワテナツトウダイを区別するなどナツトウダイ類の分類を扱っており,重要な先行文献であるが,全く触れられていない。はじめにのところで同書について触れるとともに,考察でイワテナツトウダイなどがいずれの型に当たるかを明らかにする必要がある。
2. ナツトウダイA型とした植物は,総苞裂片に総状の毛を欠き,腺体の突起が小さいことなどから,ナツトウダイの一型ではなく,ヒメナツトウダイそのものではないか。
3. 区別点が文章に記されているので,熟読しないとイメージしにくい。近縁種も含めた検索表や比較の表があると良いと思われる。
4. ・・・・・・・・・・・・・
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その他,細かい点については原稿に記した。
付記2. 審査員宛の改訂内容を記した文書の例
審査員1 殿
原稿を詳細に検討いただき,有用な改善の提案をしていただき,ありがとうございました。以下のように改訂しました。
1. 『岩手県植物誌』は見落としておりました。はじめにで触れるとともに,考察でイワテナツトウダイがナツトウダイA型に当たることを明記しました。
2. ナツトウダイA型は総苞裂片に総状の毛があります(3頁11行目)ので,毛を欠くというのは審査員の誤解と思います。ヒメナツトウダイは総苞裂片に総状の毛を欠き,杯状花序のサイズが小さい点でナツトウダイとは異なる別種と考えられます。
3. ヒメナツトウダイも含めた検索表と区別点を整理した表を加えました。
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原稿に記された訂正点に従って改訂しました。ただし,2頁4行の杯状花序に関する記述は,考察に必要ですので,削除せずに残しました。
ご指摘にはありませんでしたが,図1に雌しべの図が抜けていましたので加えました。