Pycnogonida (ウミグモ類)
ウミグモ類はその名の通り海に住んでいる8本脚(一部もう少し脚が多い種もいますが)のクモのような形をした動物です.私は細田悠史さん,関口翔悟さんと以下の研究を行いました.
ウミグモ類はその名の通り海に住んでいる8本脚(一部もう少し脚が多い種もいますが)のクモのような形をした動物です.私は細田悠史さん,関口翔悟さんと以下の研究を行いました.
First record of Hemichela nanhaiensis (Pycnogonida: Ammotheidae) from Japanese waters, with the first description of females.
【論文PDF】
私の指導学生の細田悠史君による初論文です.長崎大学付属練習船「長崎丸」の調査航海中に,奄美大島沖の水深405–635メートルから採集した標本に基づき,Hemichela nanhaiensis Wang et al., 2015を日本から初めて報告した論文です.同種は台湾沖の水深約1320メートルから採集されたオス1個体に基づき記載されていたのですが,メス個体が得られたので,オスの再記載とともに,メスの記載を行い,本種の性的二型について報告しました.(2019年頃記)
A new species of Pantopipetta (Pycnogonida: Austrodecidae) from the North Pacific, with a note on the palp articulation.
【論文へのリンク】
私の指導学生の細田悠史君による2報目の論文です.研究船「淡青丸」航海中に,小笠原諸島父島西方の水深約150メートルで実施されたドレッジ調査により採集された標本に基づき,Pantopipetta属の新種Pantopipetta lenis(和名トフシスイクチウミグモ)を記載しました.和名は卵を保持する肢である担卵肢が10節であるスイクチウミグモ科であることに因みます.用いた標本は2009年に大学院生だった私が採集したもので,採集から11年後に成果として公表できたことはなんとも感慨深いです.Pantopipetta属はかなり小型のウミグモで,全16種のうち本種を含む9種が,新種記載されて以降採集されていないという珍しいグループになります.特に日本が含まれる北太平洋は,これまでに1種が千島列島沖の水深4850メートル以深から3回報告されただけという,Pantopipetta属の報告が特に少ない海域でした.今回の発見により,北太平洋におけるPantopipetta属の分布は地理的にも水深に関しても大きく更新され,北太平洋の浅海域にも本属が生息していることが明らかに なりました.
加えて本研究では,これまで頭部の一部が突出したものだと考えられていた「palp base」と呼ばれる構造の根元に関節を発見し,同構造が触肢という肢の一部である可能性を示しま した.付属肢を構成すると考えられる節状構造が何に由来するのかというのは難しい問題で,今回提示した仮説については,今後,同属他種も対象にした個体発生やより詳細な形態観察によるさらなる検証が必要です.(2020年頃記)
New sea spider species (Pycnogonida: Austrodecidae) from a submarine cave in Japan.
【論文へのリンク】
私が自力で取り組んだ初のウミグモ類の記載論文です.琉球列島宮古群島の下地島にある海底洞窟「悪魔の館」から採集された標本に基づき,Pantopipetta hosodai(和名ドウクツスイクチウミグモ)の新種記載を行いました.種小名は,私の指導学生で在学中にウミグモ類の分類学的研究を精力的に行ってくださった細田悠史君に献名しました.海底洞窟からのウミグモ類の報告は非常に限られ,種レベルまで同定されたものは本研究で3例目,日本からは初めての例になります.
藤田喜久さんが主導されている琉球列島周辺の海底洞窟動物相解明プロジェクトの一環で採集された標本を活用させていただきました.1個体だけ,それも幼体と判断されたため,なかなか査読対応が大変でしたが,スイクチウミグモ科を構成する2属,PantopipettaとAustrodecusの違いに関してと,ウミグモ類の生殖関係機関に関して知識を深めるよい機会となりました.
2020年に細田君と報告したPantopipetta lenisにおいては,「palp base」と呼ばれていた構造の根元に関節を発見し,palp baseを同種の触肢の一部だとみなしましたが,今回の種ではpalp baseの根元には関節がないという(個人的に驚きの)結果で,本種のpalp baseが頭部の一部に相当すると判断しました.文献調査の結果,関節がありそうな種と関節がなさそうな種というのがおり,さらに前者は触肢の末端短節(short distal articles)の節数が4で後者は3,つまり前者は触肢節数が8なのに対し後者は6となっているようであることがわかりました.この結果をもとに,Pantopipetta内には触肢節数で区別可能な2群が存在するかもね,ということを述べました.
細田君が弊研究室に来てくださり一緒に論文を書かせていただいたことで,今のところスイクチウミグモ科だけではありますが,私も一人でウミグモ類の記載論文が書けるようになりました.大変ありがたいことです.(20230630記)
First record of the deep-sea sea spider Bathypallenopsis californica (Arthropoda: Pycnogonida) from the northwestern Pacific, with a note on an attached crinoid.
【論文へのリンク】
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【論文へのリンク】
ウミグモの一種(固定前)